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僕は羽田智之の恋人です
第2話
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「……なんて顔してるの」
「え……?」
右頬に、そのあと左頬に、つーっと涙が伝った。泣いてるのか、俺。しかも羽田さんいつの間に起きてたの。泣いてるとこ見られてるし。またみっともないところを……。
「何かあったの?」
「っ、いいえ」
優しく声をかけられたら、余計に涙の量が増えてきた。慌てて目をこすった。
「手塚くんて、意外と泣き虫だね。もう二回も見たよ」
そういうこと、口にしちゃうのが羽田さん。
「僕といるのが辛くなったら、言ってね」
どきっとした。辛いわけなんてない、身に余る光栄だと思ってます、でももし、辛いって言ったら、どうなるの……?
「つっ、辛いって言ったら、どうするんですか……」
こんな一人寝顔を前にして涙してるようなヤツ、めんどくさいですよね、泣きながら「一緒にいるの辛い」なんて言われたら……
「辛いこと全部なくすために、全力で何でもやる」
びっくりして、涙も止まった。いつものふんわりした羽田さんらしくない、強めの口調に、どきどきした。意外性にびっくりしたのや、きつめに言われてビビったのもあるけど、一番はきっと、惚れ直したんだ。
もうちょっと、ちょっとだけ、自信持ってもいいのかな。
愛されてるって、ちょっとだけうぬぼれても、いいのかな。
「大丈夫です、辛いことなんかなんにもありませんから」
精一杯の笑顔を作った。
こんな素敵な人からこんな風に言ってもらって、何が辛いもんか。逆にどんな辛いことだって乗り越えられそうだ。
「そう?ならいいんだけど。手塚くん、勝手に辛くなって勝手にどっか行っちゃいそうで心配」
身に覚えがあるというか、見透かされてるというか、何も言い返せなかった。
「そういうの、やめてね」
「……大丈夫、です」
「ある日急に手塚くんいなくなったりしたら、って、今想像しただけでも」
急に起き上がってきたと思ったら、抱きついてきた。いい匂いがふわっと俺を取り巻く。
「気が狂いそう」
耳元で囁かれて、全身鳥肌が立った。いや、気味悪い意味ではなくて。なんていうんだろ、ぞっとした……いや違うな。感動した方のやつ。
いや、愛されてるだろ。
俺ごときが、充分に。
きっと足りないのは自信なんだ。もうちょっと胸を張っていいんだ。
『僕は羽田智之の恋人です』って。
「え……?」
右頬に、そのあと左頬に、つーっと涙が伝った。泣いてるのか、俺。しかも羽田さんいつの間に起きてたの。泣いてるとこ見られてるし。またみっともないところを……。
「何かあったの?」
「っ、いいえ」
優しく声をかけられたら、余計に涙の量が増えてきた。慌てて目をこすった。
「手塚くんて、意外と泣き虫だね。もう二回も見たよ」
そういうこと、口にしちゃうのが羽田さん。
「僕といるのが辛くなったら、言ってね」
どきっとした。辛いわけなんてない、身に余る光栄だと思ってます、でももし、辛いって言ったら、どうなるの……?
「つっ、辛いって言ったら、どうするんですか……」
こんな一人寝顔を前にして涙してるようなヤツ、めんどくさいですよね、泣きながら「一緒にいるの辛い」なんて言われたら……
「辛いこと全部なくすために、全力で何でもやる」
びっくりして、涙も止まった。いつものふんわりした羽田さんらしくない、強めの口調に、どきどきした。意外性にびっくりしたのや、きつめに言われてビビったのもあるけど、一番はきっと、惚れ直したんだ。
もうちょっと、ちょっとだけ、自信持ってもいいのかな。
愛されてるって、ちょっとだけうぬぼれても、いいのかな。
「大丈夫です、辛いことなんかなんにもありませんから」
精一杯の笑顔を作った。
こんな素敵な人からこんな風に言ってもらって、何が辛いもんか。逆にどんな辛いことだって乗り越えられそうだ。
「そう?ならいいんだけど。手塚くん、勝手に辛くなって勝手にどっか行っちゃいそうで心配」
身に覚えがあるというか、見透かされてるというか、何も言い返せなかった。
「そういうの、やめてね」
「……大丈夫、です」
「ある日急に手塚くんいなくなったりしたら、って、今想像しただけでも」
急に起き上がってきたと思ったら、抱きついてきた。いい匂いがふわっと俺を取り巻く。
「気が狂いそう」
耳元で囁かれて、全身鳥肌が立った。いや、気味悪い意味ではなくて。なんていうんだろ、ぞっとした……いや違うな。感動した方のやつ。
いや、愛されてるだろ。
俺ごときが、充分に。
きっと足りないのは自信なんだ。もうちょっと胸を張っていいんだ。
『僕は羽田智之の恋人です』って。
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