頼りないセンセイと素直じゃない僕

海棠 楓

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第一章

第4話

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「つまり、刈谷の全てを知りたいってことだよ」
 きょとんとしている俺に、もう一度ご丁寧に解説してくれた。
 ふふふといやらしく笑っている長谷部。馬鹿にされた気分だ。
 「いいよ。そんなに知りたいんなら調べれば。お好きにどうぞ」
 これ以上付き合っていられない。それじゃ、と立ち上がろうとする俺はまたも長谷部に腕を掴まれ、
しかもなんと……
 抱きしめられてしまった。
 何をするんだと拳を作ろうとしたとき、長谷部がとろけそうな笑顔で言った。
 「胸板は、思ったよりも薄っぺらかったな。さて次はどこを調べようかな?」

『全てを知りたい』って……つまりそういうことだったのか?!
 俺……お好きにどうぞとか言っちゃったけど。
 やばかったかな……。

 「あっ、そろそろ集合時間だ。行かなきゃ」
  長谷部が腕時計を見てハッと立ち上がる。俺は何となくホッとしたような、ちょっと心残りなような、複雑な感じだった。
 「先生……なんで俺のこと知りたいなんて思うわけ?なんで俺なの」
  素朴な疑問をぶつけると、長谷部はいやだなぁ、とでも言いたげにふっと笑った。
 「何言ってんの。そんなの好きだからに決まってるでしょうが。他の誰でもなく、俺、長谷部貴之は刈谷悠一を愛してしまったのでした!」

 ──本気で言ってるのか??
 言う相手間違ってるんじゃないだろうか……。
 生徒であって自分の教え子で、しかも自分と同じ男だって、理解した上での発言なんだろうか。言い方が変に冗談めかしているのも気になる。もしからかわれているのなら、セクハラ諸々で訴えてやるからな。

 「それにしても嬉しかった。刈谷がこうもすんなり俺の気持ち受け入れてくれるなんてなあ~」
……えっ?
 「『好きにして』なんて言われたら、もう理性飛んじゃうよ。これからは時と場合を考えて挑発するようにな」

 こら!なんでこいつはこうも事実を歪めて解釈してるんだ?
 「待って、俺はそういうつもりで言ったんじゃ……」
 「俺のこと、嫌い?」
 「嫌いって……」
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