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見知らぬ土地で
第41話
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「真司?! どこ行ってたの……!」
母親が予想通りの言葉で迎える。そして我が子の傍らに立つ、およそこの場に不釣合いなほどの美青年に気づき、年甲斐もなく頬を赤らめた。
「そ、その方は?」
「初めまして、東京で画廊の手伝いをしております、速水静流と申します」
好感度アップ間違いなしの輝く笑顔で、静流は礼儀正しく簡潔に自己紹介をした。
「はあ……その、息子がお世話に……」
「今日は息子さんをいただきに参りました」
母、そして騒ぎを聞きつけてやってきた父と妹も、固まった。
「今までのこと、全部話すよ」
真司は家族にすべて話した。晃司が好きだったこと、晃司に捨てられて自殺を図ったこと、高校に入っても男を好きになって、挙げ句強く拒否されたこと。
「――で、今の相手がその人だって言うの? あんた間違ってるわよ」
母の静流に向けられた視線は、最早先刻までのそれとはまるで別のものだった。
「じゃーお兄ちゃんホモってこと? 気持ち悪ぅい。友達にばれたら超カッコ悪いよ」
妹も冷ややかに真司を見ていた。
「考え直せ、真司。そんなものは一時の気の迷いだ」
父ははなからまともに取り合おうとはしない。
「わかってくれてもくれなくても、僕はこの人と暮らす。子供の幸せを少しでも考えてくれるのなら、黙って行かせてください」
きっぱりと言いきる真司に、家族は返す言葉がなかった。
「……本当に良かったの?」
もう来ることはないであろう自宅を後にして、静流は徐に真司に尋ねた。
「どうしてそんなこと訊くの……」
「――とても悲しそうだから」
声を殺してしきりにしゃくりあげている真司を横目で見ながら、静流は答えた。
母親が予想通りの言葉で迎える。そして我が子の傍らに立つ、およそこの場に不釣合いなほどの美青年に気づき、年甲斐もなく頬を赤らめた。
「そ、その方は?」
「初めまして、東京で画廊の手伝いをしております、速水静流と申します」
好感度アップ間違いなしの輝く笑顔で、静流は礼儀正しく簡潔に自己紹介をした。
「はあ……その、息子がお世話に……」
「今日は息子さんをいただきに参りました」
母、そして騒ぎを聞きつけてやってきた父と妹も、固まった。
「今までのこと、全部話すよ」
真司は家族にすべて話した。晃司が好きだったこと、晃司に捨てられて自殺を図ったこと、高校に入っても男を好きになって、挙げ句強く拒否されたこと。
「――で、今の相手がその人だって言うの? あんた間違ってるわよ」
母の静流に向けられた視線は、最早先刻までのそれとはまるで別のものだった。
「じゃーお兄ちゃんホモってこと? 気持ち悪ぅい。友達にばれたら超カッコ悪いよ」
妹も冷ややかに真司を見ていた。
「考え直せ、真司。そんなものは一時の気の迷いだ」
父ははなからまともに取り合おうとはしない。
「わかってくれてもくれなくても、僕はこの人と暮らす。子供の幸せを少しでも考えてくれるのなら、黙って行かせてください」
きっぱりと言いきる真司に、家族は返す言葉がなかった。
「……本当に良かったの?」
もう来ることはないであろう自宅を後にして、静流は徐に真司に尋ねた。
「どうしてそんなこと訊くの……」
「――とても悲しそうだから」
声を殺してしきりにしゃくりあげている真司を横目で見ながら、静流は答えた。
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