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幼なじみ
第7話
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眩しいほどの新緑の中、二人の心にはどこからともなく隙間風が吹いているかのようだった。
困ったのは晃司だ。何しろ自身の性格上、真司以外に友人らしき存在は彼には存在しなかったのだ。 物心ついたときから当然のようにいつもそばにいた、今となっては体の一部となってしまったかのような真司を、晃司は失ったのだった。
すっかり心に穴が空いてしまった晃司は、いつにも増して無気力に時間を過ごしていた。授業中、いつものように窓の外を眺めていた時のこと。
(あ、真司のクラス、体育やってる……)
無意識にも視線はいつも視界に入っていた、しかしもう今は入って来ない親友を追っていた。
「?!」
気づいた時には晃司は走り出していた。周囲の人を掻き分け、うずくまって震えている真司に触れる。周りにいるクラスメートたちは、どうしていいかわからずにただその光景を見守っていた。 晃司は真司を抱きかかえると、黙ったまま保健室に運んだ。
幼い頃から真司は心臓を患っていた。真司はそれを周りの人間に知られるのをひどく嫌っていたのだった。
「……」
真司が意識を取り戻すと、ベッドの脇には晃司が心配そうに見守っていた。
「晃司? あれ僕なんで……」
「体育の授業中に倒れたんだよ」
「……」
真司は内心困惑していた。正当な理由もなく突如晃司に冷たい態度をとり続けた自分を、 晃司は今までと変わりなく思っていてくれたのかー? 血液が逆流するような、激しい感情がこみ上げた。 そんなとき、晃司が口を開いた。
「……なあ、俺ら何が原因でこんな風になったのか忘れちまったけど、 俺、おまえしか友達いねえんだ。……だから、その……仲直りしようぜ」
いつも尊大で高飛車で、誰をも恐れないような晃司が、やけに小さく見えて、真司は胸が苦しくなった。
「晃司! ごめん! 晃司は悪くないんだ、俺が悪いんだよ……俺、晃司のことが好きで、でもそんなこと言ったら 晃司に嫌われるんじゃないかって……」
そこまで言ってしまってから真司は我に返った。 とうとう言ってしまった、これまでの辛い思いは何のためだったのかー
困ったのは晃司だ。何しろ自身の性格上、真司以外に友人らしき存在は彼には存在しなかったのだ。 物心ついたときから当然のようにいつもそばにいた、今となっては体の一部となってしまったかのような真司を、晃司は失ったのだった。
すっかり心に穴が空いてしまった晃司は、いつにも増して無気力に時間を過ごしていた。授業中、いつものように窓の外を眺めていた時のこと。
(あ、真司のクラス、体育やってる……)
無意識にも視線はいつも視界に入っていた、しかしもう今は入って来ない親友を追っていた。
「?!」
気づいた時には晃司は走り出していた。周囲の人を掻き分け、うずくまって震えている真司に触れる。周りにいるクラスメートたちは、どうしていいかわからずにただその光景を見守っていた。 晃司は真司を抱きかかえると、黙ったまま保健室に運んだ。
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「……」
真司が意識を取り戻すと、ベッドの脇には晃司が心配そうに見守っていた。
「晃司? あれ僕なんで……」
「体育の授業中に倒れたんだよ」
「……」
真司は内心困惑していた。正当な理由もなく突如晃司に冷たい態度をとり続けた自分を、 晃司は今までと変わりなく思っていてくれたのかー? 血液が逆流するような、激しい感情がこみ上げた。 そんなとき、晃司が口を開いた。
「……なあ、俺ら何が原因でこんな風になったのか忘れちまったけど、 俺、おまえしか友達いねえんだ。……だから、その……仲直りしようぜ」
いつも尊大で高飛車で、誰をも恐れないような晃司が、やけに小さく見えて、真司は胸が苦しくなった。
「晃司! ごめん! 晃司は悪くないんだ、俺が悪いんだよ……俺、晃司のことが好きで、でもそんなこと言ったら 晃司に嫌われるんじゃないかって……」
そこまで言ってしまってから真司は我に返った。 とうとう言ってしまった、これまでの辛い思いは何のためだったのかー
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