君にすくわれた僕は。

海棠 楓

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受験

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 悶々としながら3年生になり、クラスは離れた。しかも、A組とJ組。端と端である。誰かの陰謀としか思えない。
 3年生になる、ということは、進路を本格的に決定しなければいけない、ということである。
 超名門校の中でも常にトップの成績を誇る静流は、やはり日本有数の超難関大を志望している。一方、紫苑の方はと言うと、常にビリ一割の中に入っている。
 二人は、互いに歩み寄って志望校を決めることにした。静流はAランクの大学を中心にBランクも数校、逆に紫苑はBランクを中心にAランクも数校、といった具合に、できるだけ同じ大学を受験することにした。
「お金使わずアタマ使ってくださいよ」
抱き合いながらそんなことを決めていた、そんな時に、この静流の暴言。
ただでさえ、何かと言えば裏口入学説がささやかれる紫苑にとって、それはシャレにならない発言だった。
「しずのあほっ!!もう大学なんかいかねー!!」
静流の顔にプレゼントを投げつけ、紫苑は静流の部屋から凄まじい勢いで出ていった。
そう、この日は静流の誕生日。

 しずのあほしずのあほしずのあほしずのあほ~~~~っっ!!!
部屋のベッドで足をばたつかせながら苛つく紫苑。
「やっぱしず、俺のこと別になんとも思ってなかったりして。俺のゴーインさに負けてるだけだったりして」
ぶつぶつ言っていると、どこから現れたか紫龍が強く頷く。
「うーん、そうよねぇ、静流クンて頼まれると断れないっぽいもんね!」
―――紫苑、撃沈。

 「あ、紫苑昨日は…」
翌日。静流の声を紫苑は無視した。
「―――」
さすがの静流もうろたえた。
 だいたいなんでいつも俺から誘いに行って、話しかけて、教室通って、してやってんだ――
紫苑も紫苑で、ばつの悪い表情のまま、自分の教室へと消えた。
 半泣きの静流にクラスメートが声をかける。
「久々だね…でも、蒼城のイライラもわかる気がするよ」
「え?」
始業を告げる鐘が鳴った。
「静流ってさ、大人びてて取り乱したりしないじゃん。はたから見りゃ蒼城の独り相撲みたいに見えるわけよ。あいつは結構涙ぐましい努力をしてるけど静流はそれをのらりくらりかわしてる感じ?ま、実際どうだかはわかんないけど」
「――いや、ありがとう」
 そうだ。紫苑は以前から言っていた。解放してやる、俺を頼れ、思ったことをそのままぶつけろ、と。
気づいたときには走り出していた。
「1時間目欠席ね」
苦笑いのクラスメートを残し、静流が走った先は。
「紫苑!!」
すでに授業が始まっている紫苑の教室の窓から静流が呼ぶ。
教室の中は騒然とし、教師は怒り、紫苑は赤面する。
教師の制止も聞かず、静流は窓越しに紫苑に訴える。
「紫苑、ごめんな!僕だってちゃんと紫苑のこと好きだからね、大好きだよ!」
「いいかげんにしろ速水ーっ!」
怒り狂う教師を尻目に教室中が二人を冷やかす。
「すみません…」
少し我に返って赤面する静流に
「俺も」
と、満足そうな満面の笑みで見つめる紫苑。
「蒼城、退室しなさいッ」
教師の粋な計らい(?)により、二人は廊下で堂々と抱き合った。
「そこでするなー!!」
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