君にすくわれた僕は。

海棠 楓

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冬を迎えて

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 時は流れ、二人は新しい年を迎え、そして3学期に入った。
冬休み中は、年末特有のあわただしさで、なかなか会えなかった。
そのことに関して言えば、学校が始まったのは喜ばしいことであった。

 しかし、その朝紫苑の機嫌は悪かった。 
「だーっ!も冬ってなんでこんなさみーんだァっ!」
 制服の上からコートは勿論、長くて大判のマフラーを首に何重にも巻き、鼻から下はマフラーの中に収めている。そしてご丁寧に耳当てまでして、コートのポケットに両手を突っ込んで背中を丸めて歩く紫苑は、どこから見ても怪しかった。
 呆れるように、でも愛しげにそんな紫苑を眺めていた静流であったが、ふとあることに気づいた。
「あれ…?紫苑、ちゃんと立ってみて」
 それまで丸めていた背筋を伸ばすと、なんと紫苑が静流の身長と同じぐらいになっていた。
「わっはっは!このオレ様があの程度で終わると思うか!!」
 大得意になって高笑いする紫苑であったが、実は静流に言われるまで全く気づいていなかった。
「まだまだ伸び盛りのお子ちゃまは良いね。僕なんかとっくの昔に成長期は終わりましたから…」
茶化す静流には、勿論紫苑からゲンコツのプレゼント。

 「静流!蒼城!ちょっとええ?」
どちだとも同じクラスではない、あまり親しくない富田が声をかけてきた。
「実は僕、ゲイサークルを作っててな、そこで会報作ってんねんけど、会員の奴らにキミらのこと話したらえらい関心持ってな。ちょっと会報用にインタビューを…」
そこまで言うと、当の二人よりも周りがやんやと騒ぎ出した。
静流が、この興味本位丸出しの富田からまともにインタビューを受けていいものかと思案していた。どうする?と視線を紫苑に向けると――
「やるやる!よろちくでちゅー」
静流に後ろから巻き付いて頬擦りしまくっている。
 紫苑は、やたらと二人の仲をみんなに知らしめるのが好きだった。今回も当然な結果と言えよう。 

 「――初めに、二人はお互いを何と呼び合っていますか?」
待ってましたとばかりに紫苑の目が光る。
「ナイス質問!いーかてめーら、静流静流って気安く呼びやがってなぁっ、これから俺はしずって呼ぶけど俺以外はしずって呼ぶなよ!!」
オーディエンスに向かって叫ぶ紫苑をよそに、「僕は『紫苑』と」とボソボソ答える静流。
 「ほんなら今度は、まず蒼城に訊こうかな。静流のどこが好き?」
それまであんなにやかましく騒ぎ立てていた紫苑が、急に黙り込んだ。
横からは「僕も聞きたいなー」という顔でじっと静流が見ている。
「人好きになんのに『どこが』とか『なんで』とかそんなんカンケーねーよ」
何という逃げだ、静流は感心しながら呆れた。
「静流は?」
「根負けです」
にっこり笑う静流の顔にパンチ。

 「いや~、仲睦まじいとこを見せ付けられちゃってこっちが照れますわ。…ズバリ、円満の秘訣は?」
 殴られて何が仲睦まじいもんか、と内心思っていた静流であったが、この質問には少々困った。秘訣も何も…

「熱いせっくす!これしかねーな」
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