君にすくわれた僕は。

海棠 楓

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悪い夢だと思いたい

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「……」
 静流は一瞬放心状態で、身動きできなかった。紫苑のその発言が、あまりにも突拍子のないことだったから。
身動きしない静流を、紫苑は承知したものと思い、早速コトに取りかかり始める。
静流は突然、勢いよく起きあがり、紫苑に頭突きをかました。
「馬鹿にすんなっ!何でも自分の思い通りになると思ってるんだろ!!そういうヤツ、大きら」
「うっせえ!」
紫苑の拳が静流の頬を打った。
「何すんだよ!」
紫苑の顎に静流の蹴りが入る。しかし打たれ強さは紫苑のほうが上らしく、大したダメージも受けずに再び静流の上にのっかった。
「離せ!絶対お前なんかの言いなりにはならないぞ!」
そうもがきながら紫苑の顔を手で押しのけようとすると、指を思いきり噛まれた。
すかさず、静流が紫苑に腹蹴りをお見舞いする。
 いいかげんキレた紫苑は、静流をうつ伏せにして、両の手を一つにして抑えつけた。静流はとうとう身動きができなくなった。
「やめろ…なんでこんなこと…」
 
 静流は半ば観念したような口調だった。紫苑は静流の顔を覗きこんで言った。
「好きなんだよ」
静流はドキッとした。まさか――。
「蒼城…知ってるの?僕が男しか愛せないこと…」
決死の覚悟で訊いてみたが、紫苑はそんなつまらない質問を、とばかりに跳ね除けた。
「知らねーよ。んなことどーでもいい。男とか女とか関係――!!」
自分の唇に重ねられた紫苑のそれを、静流は噛んだ。
「だからって…男なら誰でもいいってわけじゃない!!」
しばらく紫苑は荒い息をしてじっとしていたが、やがて戦闘再開の合図のように、噛まれて出た血を静流に吹きかけた。静流がひるんだ拍子にまたも強引に押し倒し、今度は容赦しなかった。静流が何を言っても言葉は返ってこなかった。静流の意思、心、何もかも無視して、ただ行為にのみ没頭する。
「いやだ…お前なんかに、こんな…」
「『こんな』?」
「――殺してやりたい。一生恨むからな…っ」
目に涙を浮かべて、精一杯の言葉での抵抗。しかしそれも紫苑にはダメージを与えることにはならなかった。
「一生――?嬉しいよ」
睨みつける静流にかまうことなく、紫苑は心なしか優しく笑ったように見えた。
「一生、お前の頭ん中に住みついてやる」 
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