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15.山をも砕くパワー?
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「今度は逃がしませんよ、センパイ」
そう言って立ちはだかったのは、小柄な体。
「あん?誰か探してるのか?」
「神谷ソラセンパイ、ですよね?」
「人違いだな。俺の名前は山田太郎だ」
「センパイは大柄な野球少年というよりは田中太郎って感じだと思いますケド」
「誰がうちゅ○人だ」
というかどっちも女子高生が知ってるネタではないだろ。
「あ、神谷君、その子だよお昼に来てたの。やっぱり知り合いだったんだね!」
後ろから如月が駈け寄ってくる。
「おい、言葉に気をつけろ。こいつは俺のことを知ってるかもしれんが、俺はこんなやつ知らん。よって知り合いではない」
知り合いというのは字の如く、お互いが相手のことを知っていて成り立つ関係だ。
「やっぱりセンパイで合ってるんじゃないですかー!私のこと覚えてません!?」
「あ?」
彼女に目を向ける。
背はあかりより若干小さいだろうか。サイドアップと呼ばれる片側で縛った明るめの茶髪に化粧をした整った顔。そしてこのハイテンション。
「俺はお前みたいなストーカーは知らん」
「ストーカー!?……でも、センパイのストーカーなら……えへへ」
「え、なにこいつ、キモッ……」
「キ、キモッ!?」
やべ、つい口に出てしまった。でも事実なのだから仕方ない。なんでストーカー扱いされて喜んでんだよ。
「あ、俺玉ねぎ買いに行くから、帰るわ」
こんなのに付き合っていたら日が暮れてしまう。俺は逃げるようにその場を後にする。
背後では、「はうっ!玉ねぎに負けた!?」と叫び声が聞こえた。
買い物を終えて帰宅すると、あかりもすでに帰宅していたようだった。俺の帰宅に気付いたあかりが自室から出てくる。
「あ、あの……昨日のこと、聞いたんだけど」
あー、今朝一緒にいたあいつらから聞いたのか。まあ黙ってるわけないよな。
「本当、ですか……?」
「ハァ……。ああ、本当だ。だからあいつらが何かしてくることはねえよ」
あの3人だけじゃない。あかりの後ろにいる俺が、どこにボイスレコーダーをしかけてるか分からない今、変なことをする奴はいないだろう。
「……なん、で……」
「あ?」
「なんで、こんなこと……してくれるん、ですか……?」
「別にお前のためじゃねえよ。俺がしたかったからしただけだ」
嘘じゃない。俺はあかりや如月のためだなんて考えてなかった。ただ、過去の何もできなかった臆病な自分にできなかったことを今やっただけだ。
「ああ、そうだ、いい機会だから言っておくけどな、その敬語、やめろよ」
「……え?」
「お前は変わるんだろ?いつまでも自分からそんな壁作ってんじゃねえよ」
「……っ。わかりま…わかっ、た。やっぱり、ソ、ソラ君は、優しくて強い、ね」
「お前は義理でも俺の妹なんだろ?だったらもっと胸を張れ。下ばかり向いてちゃ前へは進めねえぞ?」
「うん……うんっ…」
平穏な土日を挟んで迎えた月曜日。
「あ、センパイ!おはようご」
スタスタ。
「デジャビュ!?……あ、ねえセンパイ待って!待ってったら!」
腕をつかまれて強制的に停止させられる。こいつ力強くね?俺が貧弱なだけか?
「……どちらさまで?」
「ひ、ひどい!?先週も会ったじゃないですかあ!」
「いや、俺、お前の名前も知らんし」
「あ、そういえばそうだっけ」
彼女は背を伸ばして、ビシッと敬礼をして名乗った。
「あらためまして、竹田千豊です!」
「お前など変態ストーカーで十分だ」
「はうっ!?」
両手で頭を抱える変態。
「あれ、なんでだろう……。貶されてるのに嫌じゃない……?」
あ、こいつ手遅れだ。
腕から手が離れたのをいいことに、さっさと先へ行く。
ハァ……。なんで週の頭の、それも朝からこんな疲れなきゃならんのだ……。
そう言って立ちはだかったのは、小柄な体。
「あん?誰か探してるのか?」
「神谷ソラセンパイ、ですよね?」
「人違いだな。俺の名前は山田太郎だ」
「センパイは大柄な野球少年というよりは田中太郎って感じだと思いますケド」
「誰がうちゅ○人だ」
というかどっちも女子高生が知ってるネタではないだろ。
「あ、神谷君、その子だよお昼に来てたの。やっぱり知り合いだったんだね!」
後ろから如月が駈け寄ってくる。
「おい、言葉に気をつけろ。こいつは俺のことを知ってるかもしれんが、俺はこんなやつ知らん。よって知り合いではない」
知り合いというのは字の如く、お互いが相手のことを知っていて成り立つ関係だ。
「やっぱりセンパイで合ってるんじゃないですかー!私のこと覚えてません!?」
「あ?」
彼女に目を向ける。
背はあかりより若干小さいだろうか。サイドアップと呼ばれる片側で縛った明るめの茶髪に化粧をした整った顔。そしてこのハイテンション。
「俺はお前みたいなストーカーは知らん」
「ストーカー!?……でも、センパイのストーカーなら……えへへ」
「え、なにこいつ、キモッ……」
「キ、キモッ!?」
やべ、つい口に出てしまった。でも事実なのだから仕方ない。なんでストーカー扱いされて喜んでんだよ。
「あ、俺玉ねぎ買いに行くから、帰るわ」
こんなのに付き合っていたら日が暮れてしまう。俺は逃げるようにその場を後にする。
背後では、「はうっ!玉ねぎに負けた!?」と叫び声が聞こえた。
買い物を終えて帰宅すると、あかりもすでに帰宅していたようだった。俺の帰宅に気付いたあかりが自室から出てくる。
「あ、あの……昨日のこと、聞いたんだけど」
あー、今朝一緒にいたあいつらから聞いたのか。まあ黙ってるわけないよな。
「本当、ですか……?」
「ハァ……。ああ、本当だ。だからあいつらが何かしてくることはねえよ」
あの3人だけじゃない。あかりの後ろにいる俺が、どこにボイスレコーダーをしかけてるか分からない今、変なことをする奴はいないだろう。
「……なん、で……」
「あ?」
「なんで、こんなこと……してくれるん、ですか……?」
「別にお前のためじゃねえよ。俺がしたかったからしただけだ」
嘘じゃない。俺はあかりや如月のためだなんて考えてなかった。ただ、過去の何もできなかった臆病な自分にできなかったことを今やっただけだ。
「ああ、そうだ、いい機会だから言っておくけどな、その敬語、やめろよ」
「……え?」
「お前は変わるんだろ?いつまでも自分からそんな壁作ってんじゃねえよ」
「……っ。わかりま…わかっ、た。やっぱり、ソ、ソラ君は、優しくて強い、ね」
「お前は義理でも俺の妹なんだろ?だったらもっと胸を張れ。下ばかり向いてちゃ前へは進めねえぞ?」
「うん……うんっ…」
平穏な土日を挟んで迎えた月曜日。
「あ、センパイ!おはようご」
スタスタ。
「デジャビュ!?……あ、ねえセンパイ待って!待ってったら!」
腕をつかまれて強制的に停止させられる。こいつ力強くね?俺が貧弱なだけか?
「……どちらさまで?」
「ひ、ひどい!?先週も会ったじゃないですかあ!」
「いや、俺、お前の名前も知らんし」
「あ、そういえばそうだっけ」
彼女は背を伸ばして、ビシッと敬礼をして名乗った。
「あらためまして、竹田千豊です!」
「お前など変態ストーカーで十分だ」
「はうっ!?」
両手で頭を抱える変態。
「あれ、なんでだろう……。貶されてるのに嫌じゃない……?」
あ、こいつ手遅れだ。
腕から手が離れたのをいいことに、さっさと先へ行く。
ハァ……。なんで週の頭の、それも朝からこんな疲れなきゃならんのだ……。
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