そらに光る星

もやしのひげ根

文字の大きさ
上 下
15 / 19

15.山をも砕くパワー?

しおりを挟む
「今度は逃がしませんよ、センパイ」

 そう言って立ちはだかったのは、小柄な体。

「あん?誰か探してるのか?」

「神谷ソラセンパイ、ですよね?」

「人違いだな。俺の名前は山田太郎だ」

「センパイは大柄な野球少年というよりは田中太郎って感じだと思いますケド」

「誰がうちゅ○人だ」

 というかどっちも女子高生が知ってるネタではないだろ。



「あ、神谷君、その子だよお昼に来てたの。やっぱり知り合いだったんだね!」

 後ろから如月が駈け寄ってくる。

「おい、言葉に気をつけろ。こいつは俺のことを知ってるかもしれんが、俺はこんなやつ知らん。よって知り合いではない」

 知り合いというのは字の如く、お互いが相手のことを知っていて成り立つ関係だ。

「やっぱりセンパイで合ってるんじゃないですかー!私のこと覚えてません!?」

「あ?」

 彼女に目を向ける。



 背はあかりより若干小さいだろうか。サイドアップと呼ばれる片側で縛った明るめの茶髪に化粧をした整った顔。そしてこのハイテンション。


「俺はお前みたいなストーカーは知らん」

「ストーカー!?……でも、センパイのストーカーなら……えへへ」

「え、なにこいつ、キモッ……」

「キ、キモッ!?」

 やべ、つい口に出てしまった。でも事実なのだから仕方ない。なんでストーカー扱いされて喜んでんだよ。


「あ、俺玉ねぎ買いに行くから、帰るわ」


 こんなのに付き合っていたら日が暮れてしまう。俺は逃げるようにその場を後にする。

 背後では、「はうっ!玉ねぎに負けた!?」と叫び声が聞こえた。





 買い物を終えて帰宅すると、あかりもすでに帰宅していたようだった。俺の帰宅に気付いたあかりが自室から出てくる。


「あ、あの……昨日のこと、聞いたんだけど」

 あー、今朝一緒にいたあいつらから聞いたのか。まあ黙ってるわけないよな。

「本当、ですか……?」

「ハァ……。ああ、本当だ。だからあいつらが何かしてくることはねえよ」

 あの3人だけじゃない。あかりの後ろにいる俺が、どこにボイスレコーダーをしかけてるか分からない今、変なことをする奴はいないだろう。

「……なん、で……」

「あ?」

「なんで、こんなこと……してくれるん、ですか……?」

「別にお前のためじゃねえよ。俺がしたかったからしただけだ」

 嘘じゃない。俺はあかりや如月のためだなんて考えてなかった。ただ、過去の何もできなかった臆病な自分にできなかったことを今やっただけだ。


「ああ、そうだ、いい機会だから言っておくけどな、その敬語、やめろよ」

「……え?」

「お前は変わるんだろ?いつまでも自分からそんな作ってんじゃねえよ」

「……っ。わかりま…わかっ、た。やっぱり、ソ、ソラ君は、優しくて強い、ね」

「お前は義理でも俺の妹なんだろ?だったらもっと胸を張れ。下ばかり向いてちゃ前へは進めねえぞ?」

「うん……うんっ…」









 平穏な土日を挟んで迎えた月曜日。

「あ、センパイ!おはようご」

 スタスタ。

「デジャビュ!?……あ、ねえセンパイ待って!待ってったら!」

 腕をつかまれて強制的に停止させられる。こいつ力強くね?俺が貧弱なだけか?

「……どちらさまで?」

「ひ、ひどい!?先週も会ったじゃないですかあ!」

「いや、俺、お前の名前も知らんし」

「あ、そういえばそうだっけ」

 彼女は背を伸ばして、ビシッと敬礼をして名乗った。

「あらためまして、竹田千豊たけだちほです!」

「お前など変態ストーカーで十分だ」

「はうっ!?」

 両手で頭を抱える変態。

「あれ、なんでだろう……。けなされてるのに嫌じゃない……?」

 あ、こいつ手遅れだ。



 腕から手が離れたのをいいことに、さっさと先へ行く。

 ハァ……。なんで週の頭の、それも朝からこんな疲れなきゃならんのだ……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

彼女の浮気現場を目撃した日に学園一の美少女にお持ち帰りされたら修羅場と化しました

マキダ・ノリヤ
恋愛
主人公・旭岡新世は、部活帰りに彼女の椎名莉愛が浮気している現場を目撃してしまう。 莉愛に別れを告げた新世は、その足で数合わせの為に急遽合コンに参加する。 合コン会場には、学園一の美少女と名高い、双葉怜奈がいて──?

エロ・ファンタジー

フルーツパフェ
大衆娯楽
 物事は上手くいかない。  それは異世界でも同じこと。  夢と好奇心に溢れる異世界の少女達は、恥辱に塗れた現実を味わうことになる。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

3年振りに帰ってきた地元で幼馴染が女の子とエッチしていた

ねんごろ
恋愛
3年ぶりに帰ってきた地元は、何かが違っていた。 俺が変わったのか…… 地元が変わったのか…… 主人公は倒錯した日常を過ごすことになる。 ※他Web小説サイトで連載していた作品です

処理中です...