上 下
178 / 178
本編

177:バラムの現在のステータス

しおりを挟む
 そうしてしばし、軽く触れ合いを続けてじんわり広がるような温かさに心地よくなっていたが、そういえば、今もまだ普通にイベント中なのを思い出す。

 黒曜天母がオセロットを説教するとか何とかというのと、シルヴァに他の皆への状況共有を任せてしまっているんだったな……。

 と、思い返していて、ふとバラムのことについて気になることが思い浮かぶ。

「そういえば、最後のあの大技はなんだったんだ?」

 今まではギリギリ、ファンタジー世界の剣士ならまだ出来る、か? と、納得出来るラインの技だったような気がするが、先ほどの大技はオーラが明らかに犬の形をして自走までしていた。
 魔法ならまだ納得出来るが、あれは魔法では無かった。

 それに、気のせいでなければ直前に聞こえた言葉は……。

「……ああ、あれか。お前が使ってる……言葉?を俺も一応習得出来たんだ」
「《古ルートムンド語》か?」
「それだ」
「そうなのか」

 イベント前に聞いた時は、あと少しで習得出来そうと聞いていたが、既に習得出来ていたらしい。

「ふぅむ……〈底無し穴の走狗〉は秘技なんだろうか?」
「いや、詳しくは…………お前が調べた方が色々分かるんじゃねぇか……?」
「うん? ……それはまぁ、確かに。それじゃあ……」

 何となく言葉を濁すバラムに首を捻るが、僕が《慧眼》で見ればいいのはその通りだと思うので、バラムの情報に意識を向ける。

 ……そういえば、バラムの情報を見るのはバラムを《編纂》してしまった時以来だな、と思いながら見てみると────。


名前:バラム
年齢:24
性別:男
種族:夜狗族 (属:底根族)
職業:大剣使い 傭兵ギルドランク特A
称号:【鉄銹凶狗】【底根の番犬】 控え 【夜狗よくの血族】【底根の猟犬】
技能:《大剣術》《渾身》《夜狗の直観》《健啖》《不撓》《夜狗の視覚》《夜狗の威圧》《夜狗の嗅覚》《状態異常耐性》《免疫》《騎乗戦》《魔物知識》《格闘術》《動物知識》《植物知識》《投擲》《変化》《歴史学》《古ルートムンド語》《鉄銹凶狗の大剣使いバラムの奥義》
装備:鋼の大剣、傭兵の鎧シリーズ、ダガーナイフ、投げナイフ、盟友の証《トウノ》、除災の守りナイフ
状態:正常
特殊効果:《縁覚編纂士トウノの編纂》《底根の精》


 …………うぅん。

 ………………まぁ、バラムが確認しろと言ったのは多分《鉄銹凶狗の大剣使いバラムの奥義》のことで、自分でこれを口にするのは抵抗があったからだと思うんだが…………まぁ、僕の演奏の技能みたいなニュアンスだと思うので気持ちは分かるが…………いや。


「色々変わりすぎててどこからツッコめばいいのか……」
「……まぁ、あれから色々あったからな」

 僕の反応に察するものがあったのか、一応共感は示してくれたが、反応が妙に薄くないだろうか?

 多分、種族、称号、特殊効果あたりが相互作用しつつおかしくなっている気がする。というか、こう言ってはなんだが、ほぼ僕関連だ。

「この種族の『属』というのは……?」
「転生する時に『付き従う者はあるか』とか問われたからお前を思い浮かべたらそうなってたな」
「聞いてない……」
「……聞かれなかったからな」
「うぅん……」

 確かに、自分の転生後ステータスの把握に手一杯で聞けてはいなかったかもしれないが……。

「じゃあ、僕の種族名関連はほとんど転生した時に変化なり、追加なりされたのか?」
「ああ」

 ということらしい。

「さりげなく【鉄銹】の称号も少し変わってしまっているが……」

 この称号はバラムの通り名に使われているので、どういう扱いになるのだろう?

「別に、元のが変わったわけじゃねぇし、どうもしねぇよ」
「そういうものか?」
「そういうもんだ」

 まぁ、呼び方に困らなければ何でもいいのかもしれないが。というか『凶狗』とかあまり穏やかではない文字が追加されてるのは一体……。

 確認したいことはこれではないので、称号の『番犬』や『猟犬』というのは一旦スルーしよう。【夜狗の血族】の説明を思い起こせば、理解出来る気もするし。

 では、技能へ……と思ったが、一つどうしても気になってしまうものが……。


《底根の精》
底根族の特別な源の力。
一時、賜った力の分だけ己の力と成す。
また、癒しと浄めの効果もある。

しかし新たに作られた種族の特殊効果の為、本当のところはよく分からない。

特殊効果:一定時間任意のステータス値上昇、全ステータス回復、特殊状態異常解除、特殊状態異常耐性(中)


「精……一定時間…………」

 そこで、僕達が……というか、バラムが先ほどまで何をしていたかが思い出される。

「まさかと思うが……《底根の精》って……」
「……お前の精か?」
「やっぱり……そうなんだろうか……」

 僕の精を取り込む為にしていた行為の感触まで蘇り、背中に甘い痺れが走って身じろぎしてしまう。

 ソワソワしている僕とは対照的にバラムはかなり険しい表情になっていた。

「……これ、絶対誰にも知られるわけにいかねぇな」
「えっ…………ああ、まぁ、そうか」

 《底根の精》がどんなものか、効果付与の方法はともかく性能だけでみると、僕でも分かるくらいかなり破格だ。
 ……あまり考えたくないが、形振り構わず欲しいとか思う存在もいるのかもしれない。
 深く考えたくないので、思考を中断するが、どうしたって不快な気配がして流石にゾッとする。

「そうだな……お互いに気をつけよう」
「……ああ」

 ……それにしても、根といい、精といい、何となく“素材感”が強いような……。

 ……気づきたくないことに気づいてしまったな……。


 努力してそれは置いておくとして。


「えぇと、それでこの鉄銹凶狗の大剣使い……もがっ」

 オセロットを瀕死にさせた大技に関連すると思われる技能名を口にしようとしたら、手で口を塞がれてしまった。

 …………目を逸らしている顔は無表情だが、絆を通して流れ込んでくる感情的には相当恥ずかしいようだ。……まぁ、気持ちは分かる。

「じゃ、じゃあ〈底無し穴の走狗〉はこの技能の奥義の一つ、ということなのだろうか?」
「そうらしい」
「技能名からしても奥義名からしてもバラム専用技っぽいな」
「かもな」

 それからもう少し詳しく奥義習得の経緯を聞くと、僕が翻訳したユヌの旧倉庫にあった武術本の内容を読んだら《古ルートムンド語》の『剣技』を覚えることが出来、そこからさらに《鉄銹凶狗の大剣使いバラムの奥義》を獲得したとのことだった。

 そこまで説明を聞いて疑問が湧く。

「ふぅむ……僕はそれらの本を全て原文で読めているが『剣技』はさておき、何か一つくらいはそういうものが獲得出来ていそうだが、これはどういう……?」

 『剣技』については、剣を振ったこともなければ、戦闘職でも無いので親和性や経験の面で習得出来ないのは納得出来るが、非戦闘職系の技も一つも使えるようになっていないのはどうしたことだろう?

「さあな。……覚えた感覚としては、俺はお前の秘技……っていうか次から次へと思うまま技を作ってんのが信じられねぇ感じだが」
「うぅん? そうか……。この感じだと『秘技』は《古ルートムンド語》を覚えたからと言って誰でも獲得出来るものではないのだろうか……」

 そういえば、シルヴァも《古ルートムンド語》を獲得しているのに秘技を扱える様子は無かったな。使えたらテンション高く色々試していそうだし……。


 そんなわけで。


 バラムが《古ルートムンド語》を獲得したおかげでこの言語に関する新発見があったところで、バラムのステータスチェックを終えた。
しおりを挟む
感想 147

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(147件)

柴犬まっしぐら

いけーーーーー!!!!!させーーーー!!!!!!!!!!(競馬的な意味です)
この時を待ってました。HelloWorld

鵩 ジェフロイ
2024.12.21 鵩 ジェフロイ

お読みいただきありがとうございます!楽しんでいただけたなら嬉しいです(*´︶`*)

解除
ちゃんこ
2024.12.20 ちゃんこ

お仕置きタイム…グデグデのデロデロにされるやつだ…

鵩 ジェフロイ
2024.12.20 鵩 ジェフロイ

お読みいただきありがとうございます!どうなるでしょうか……(*´︶`*)

解除
朝比奈 忍
2024.12.18 朝比奈 忍

くぅううう!!(≧∀≦)

鍋の蓋さんが!(惚れるわ)
あぬ丸たんが!(すんばらしぃ)
検証野郎Z様が!(その姿勢が好きです)
シャケ茶漬け君が!(カッコいいんだよ)

そして、我等が兄貴、バラム様が!
(兄貴、いけない子にお仕置きしないとね?)

ドキドキワクワク。
みんなカッケーんでやんす!!
(*゚∀゚*)✴︎キラリン✴︎

チームって良いっすね!ヾ(๑╹◡╹)ノ"

トウノ君、お仕置き(?)頑張ってね♪
ε-(´∀`; )期待してます!!

鵩 ジェフロイ
2024.12.18 鵩 ジェフロイ

お読みいただきありがとうございます!楽しんでいただけたなら嬉しいです٩( 'ω' )و
お仕置きは……どうなるでしょうか……(*´︶`*)

解除

あなたにおすすめの小説

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

もふもふ相棒と異世界で新生活!! 神の愛し子? そんなことは知りません!!

ありぽん
ファンタジー
[第3回次世代ファンタジーカップエントリー] 特別賞受賞 書籍化決定!! 応援くださった皆様、ありがとうございます!! 望月奏(中学1年生)は、ある日車に撥ねられそうになっていた子犬を庇い、命を落としてしまう。 そして気づけば奏の前には白く輝く玉がふわふわと浮いていて。光り輝く玉は何と神様。 神様によれば、今回奏が死んだのは、神様のせいだったらしく。 そこで奏は神様のお詫びとして、新しい世界で生きることに。 これは自分では規格外ではないと思っている奏が、規格外の力でもふもふ相棒と、 たくさんのもふもふ達と楽しく幸せに暮らす物語。

【本編完結】断罪される度に強くなる男は、いい加減転生を仕舞いたい

雷尾
BL
目の前には金髪碧眼の美形王太子と、隣には桃色の髪に水色の目を持つ美少年が生まれたてのバンビのように震えている。 延々と繰り返される婚約破棄。主人公は何回ループさせられたら気が済むのだろうか。一応完結ですが気が向いたら番外編追加予定です。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。