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本編

102:中間リザルト?チェック

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「ん……」

 意識がふわりと浮上し、ゆっくりと目を開く。この感覚は……〈睡眠〉コマンドを使わずに脳波判定で寝て起きた時にしか無い……と思う。ということは、あの後普通に寝てしまったのか。

 ………………あの後。

「っ」

 覚醒してきた頭で昨日の出来事を思い出し、じわじわと頬が熱くなる。慌てて自分の状態を確認しようとして、バラムに抱えられて寝ている体勢なことに気づいた。……これは、まぁそこそこあることか。

 何とか身を捩って自分の状態を確認すると、服はいつものようにきっちり着ていて、脱がされたはずの下着やパンツも穿いている状態だった。自分で整えた記憶は無いので、バラムがしてくれたのだろうか。

「起きたか」
「ああ……服、整えてくれたのか」
「まぁ、そもそも俺が脱がしたしな」
「そ……れもそうか…………んんっ??」

 既に起きていたらしいバラムと言葉を交わしていると、僕を抱えている手がモゾモゾと怪しい動きを見せる。……多分、服のスリットの中に手を入れられて、太腿の付け根辺りを撫でられたり、も……揉まれたりしている。

「う、うぅん…………あ、そうだ。昨日演奏で一斉に昇華してから起こったことがよく分からないんだが……」
「あん?」

 体が少し熱を持ったことで思い出したが、昨日新しく獲得した技能で演奏して彷徨う霊魂を大量に昇華させた後、どういうわけか「寂しい」や「悲しい」といった感情で塗り潰されて、心身共にどうしようもなく凍えてバラムに縋りついたら何故か服は脱げるわ、た……勃ったりするわでもうわけが分からない。

 まぁ、最初の現象は冷静になって振り返ってみると……。

「僕は彷徨う霊魂と共感というか……共鳴してしまったんだろうか?」
「多分な」
「ふーむ……」

 確かにいつも彷徨う霊魂を昇華させたタイミングで声のようなものが聞こえたが、あれが彷徨う霊魂の感情というか……昇華された時に剥がれた残滓のようなものを僕が受け取ってしまっていたのだろうか。……それに……共感……しやすい感情ではあったのかもしれない。

「で、あの……その後の脱げたり……その……」

 言葉にしづらくて濁してしまう。

「……ああ、アレはお前の体の成熟の時機が合っただけだったが、結果的には良かったな」

 そう言って大きな手が僕の頬を覆うように置かれる。

「体の成熟……」
「ああ、成熟した状態で、俺に心を開いてないと脱がせられなかったからな。だから、熱を分け合うには良い頃合いだったろ?」
「うぅん……」

 一応流れと条件っぽいものは何となく分かったが、原理は……まぁ、アルストではちゃんと手順を踏んで信頼関係を築けばその……性的なことも体験出来るということなのだろうか。いや、何処に力を入れているんだ、このゲームは。

「と、とりあえず……起きる」

 さっきから僕に触れるバラムの手の動きが怪しげで、これ以上は……反応してしまいそうな気配がする。

「まだ夜も明けてない。せっかく成熟したんだ、慣れる為にも……」
「えっ、ぁ、あぁう……」

 ベッドを抜け出そうとした僕をバラムの腕が捕え、服の上から足の間を撫で上げられる。それだけで背筋に甘い痺れが走って、声が漏れてしまった。
 ……しかも、刺激が未知から既知に変わったからか、ただ“気持ちいい”という感覚しか無かった。

「はぁ……あぁ……」
「は、もう良さそうだな」

 そんな様子の僕を見てバラムが機嫌を良さそうにしながら、撫で上げる動きを強くする。

「ふぅっ! んぅ」
「……やっぱエロいな……」
「な、に……っ」

 バラムの熱い視線の先を見ると、僕のものがすっかり勃ち上がり、服を押し上げて主張していた。僕にピッタリなサイズの服なので妙に目立つ。その様とバラムに凝視されてることに羞恥を感じて全身が熱くなる。

「は、可愛いな」
「うっ」

 耳元で低く掠れた声……多分、バラムが興奮している時特有の声を吹き込まれて、体を寄せられて、弱いところを刺激されて……されるがままになってしまった。もしかしたら、現実でも自慰行為をしている人にはなんて事ない刺激なのかもしれないが、今の僕にはこれだけでいっぱいいっぱいだ。



 それから、日が昇るまで濃密な接触を受け、既に満身創痍な僕の体をバラムが清めたり整えたりしてくれて後、何故か1階ではなくバラムの部屋で朝食を食べて少し元気が出てきた現在。

 昨日は演奏の技能が出来るまでかなりの鎮め札・中を消費していたので、インベントリ内の鎮め札の在庫チェックをしている時に異変に気づいた。

「また、何かインベントリに入れられてる……」
「あ?」

 ここのところは無かったが、またインベントリに知らない物があったり“とある物”の数が大幅に増えていた。そして、僕の呟きを聞いたバラムの機嫌が急降下したのが何となく分かった。

 とりあえず、まずは知らない物の方を取り出してみよう。

 それは、卵くらいの大きさの木彫りの像だった。模られているのは……。

「フクロウ?」

 そして、フクロウはフクロウでも僕が変化するスコップオウルなのではないだろうか。小さな羽角がついてるし。

「お前が変化するフクロウみたいだな」

 バラムも同じ感想らしい。僕よりも客観的に外見を観察出来ているだろうバラムが言うのだから、これは僕なのだろうか?

 何はともあれ、とりあえず《解析》。


[木彫りの像/スコップオウル]
対象の造形を簡略化した木彫りの像。
名も無き彷徨う霊魂だった者達の返礼。その者らに特定の形が無い為、救い主の形をとった。
耐久力:-
品質:-
分類:置物
効果:-
素材:ホオの木
製作技能:-
製作者:-


「これは……返礼……シリーズ化か?」

 木彫りの像だったことと、様々な状況の符合からして何となくそんな気はしていたが、いつか狂った魔物・獣腕のトロル型からの返礼と同じような物らしい。異なる点としては一体からではなく、僕が昇華した彷徨う霊魂達からまとめて贈られたもののようだ。

 “救い主の形をとった”とあるが……僕が変化していたところを見た霊魂もいたにはいたと思うので、それでフクロウになったのだろうか。

「じゃあ、まぁ……とりあえず獣腕のトロル型の隣に置いておくか」
「何でだよ」
「同じような木彫り像で置物だと言うし……」

 窓際に既に置かれたミニチュア木彫り像の横に新たな木彫り像を置いてみる。
 うーん……大きさも異なり形もデフォルメされているとはいえ、獣腕のトロル型の方が魔物らしいデザインだからか、完全にスコップオウルが捕食されそうな雰囲気になってしまっている。……まぁ、いいだろう。

 次に、いつの間にか大幅に増えていた“とある物”だが……。

「『秘文字の破片』がすごい増えてる……」

 バラムや黒山羊を《編纂》した際に出てきた『秘文字の破片』が今までに無いほど大量に手に入っていた。これは塵も積もれば……ということでこんなに大量に手に入ったのだろうか。

「何だそれ?」
「……うん? 言ってなかったか?」

 黒山羊と出会った時の説明で言ったと思うんだが………………いや、省略し過ぎて言って無かったかもしれないし、バラムからこれが出て来たことも多分伝えてない。

「えぇと……」

 伝えた時のバラムの反応が怖いがとりあえず伝えることにした。


「滅しろ、そんなもん」

 眉間に深い深い皺を作って地を這うような声で、発せられたのが『秘文字の破片』に関するあれこれを聞いたバラムの反応だ。まぁ、己の人生の大半を苦しめた原因っぽいことを察してのことなので、問答無用で取り上げられないだけマシだと思おう。

「その……『文字』とあるからには、いずれ読むことが出来るんじゃないかと思うと捨て難くてな……」
「……チッ、とりあえず何なのか分かるまで封印しとけ。出すなよ」
「ああ」

 改めて『秘文字の破片』のインベントリ封印が決まった。……『霧惑のダチュラ』と言い、インベントリの用途は曰くつきのアイテムの封印では無いはずなんだが。


 あとは、敢えて最後に回していたあの通知の確認をしていこう。
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