ゴーストバスター幽野怜Ⅲ〜三つの因縁編〜

蜂峰 文助

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第十七話『VS 霊王丿八――万物斬撃』

【10】

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【万物斬撃】の身体が、少しずつ消滅していく。

「そうか…………拙者は、敗れたのでござるな……。よもや……拙者が、強さを求めるがゆえに捨てた、人間に敗れるとは……なおかつ、それを果たされた相手が、拙者の子孫であるなど……笑い話のようでござるな……」

「オイラだけじゃ、適わなかった」

「………………」

「皆がいたから…………勝つことができた」

 剣一郎は言う。

「これは決して……オイラだけの勝利じゃない。この戦闘に関わった人達――――



 全員の力による、勝利だ」


 目を瞑り「……そうか……」と、その言葉の意味を噛み締める【万物斬撃】

 そんな霊王を、悲しそうな目で見つめながら、剣一郎は続ける。

「あんたも……この強さを、目指すべきだったんだ。『個の強さ』ではなく……『力を合わせる強さ』を……」

「それを目指したがゆえに……拙者は、全てを失った……」

「違う……たかが霊王一体に歯が立たなかったくらいで、誇りが奪われたと思っていたアンタは…………その時点で、『個』の強さを求めていたんだよ……失われた弟子達も、結局は、その考えの延長線上の消失でしかない……アンタは、『力を合わせる』ってことの意味を、履き違えてたんだよ……」

「お主……拙者の過去を……知っていた、のでござるか……?」

「当然だろ? 倒すべき相手のことは、しっかり、ちゃんと調べてるっつーの……」

「そうか…………ならば、最期に教えてくれ……真の意味で……『力を合わせる』とは、どういう意味だったのでござるか……?」

「そんなの決まってんじゃん……」

 剣一郎は言う。


「互いに足りないモノを共有して――――互いに足りないモノを補い合う、ということだよ……。アンタはそれを、全て一人で補おうとした。だから、意味を履き違えてるって言ったんだ」


「補い合う……か……フッ……確かに、拙者には、その発想はなかったでござる……」

「だろうな……でなけりゃ、『霊王になろう』なんて発想には至らねぇもん……」

 剣一郎は続ける。

「足りないモノがあれば、他人に頼れば良いんだ。アンタも、頼るべきだったんだ。頼れる人を、見つけておくべき、作っておくべきだったんだ……自分の弱さを……カバーしてくれる、そんな仲間を……」

「仲間……で、ござるか……」

「人間は確かに、アンタの言う通り、弱い生き物だ。だからこそ、力を合わせて、知恵を振り絞り、生き抜いてきたのが人間なんだよ……」

「そうか……正に、人類の歴史が、それを物語っていた訳でござるな…………。そうか…………拙者の、完敗でござるな……」

【万物斬撃】は、そう言って笑った。

「お主ならば……『あの霊王』を、倒せるやもしれんな……」

「あの霊王って…………人間時代のアンタを追い詰めた……奴のことか……?」

「…………ああ……『そ奴』はまだ……存在している。三つの目を持つ、女の霊王……」

「三つの目……」

「『奴』に、お主の刃が届く瞬間を……地獄から、見届けてみたいものでござるな……」

「分かった……」剣一郎は、即答した。

「必ず――――オイラがその『三つ目の霊王』を倒す。だからアンタは、地獄で、ちゃんと自分の罪を償いながら…………その瞬間を、見届けてくれ……」

 その言葉に、【万物斬撃】は目を見開く。

「ああ……なるほど……これが…………想いを託す、というものなのでござるな……なるほどなるほど……中々に、心地良い……」

「何を今更……」

「では、ついでにコレも授けよう……」

【万物斬撃】が、自分が持っていた刀を、差し出してくる。

「え……」剣一郎は、少し驚きつつ、その刀を受け取った。

「コレって……」

「かつて……小葉焚家に代々受け継がれていた刀でござる……それを改めて、今、お主へと授ける…………」

「ま、マジ!? うおっ!」

 剣一郎が受け取った瞬間、その刀が、眩く、黄金色の光を放った。

 その様子を目にした【万物斬撃】が笑う。

「どうやら……その刀も喜んでいるようでござる」

「刀が……喜ぶ……?」

「さて…………遺言は、ここまででござるな……」

「お、おいっ!」


【万物斬撃】の身体は、いよいよ、消え去ろうとしていた。


「……小葉焚 剣一郎…………そして、その仲間達よ……最期に、良いものを見せてもらった。感謝でござる…………」

「感謝なんて、勝手にするんじゃねぇよ……オイラ達は、絶対に、お前のことを許さないから……」

「…………そうか……」

「だけど――――」剣一郎は続けた。

 少し、悲しげな表情を浮かべながら。


「オイラだけは…………少し、ほんの少しだけ……アンタに同情するよ」

「……そうか……少し、心が暖かくなったでござるよ……」

「………………」

【万物斬撃】の身体が――――

「さらばだ……剣一ろぅ…………」


 完全に、消え去っていった。


 この瞬間――――ゴーストバスター達は、歴史上初の快挙を成し遂げる。


「終わったねー、剣一郎ー。お疲れさんー」

「…………ああ……」


 一日で、二体の霊王の撃破という――――快挙を。


「じゃあさー。迎えに行こっかー。見舞さん達をー、姉さんをー、そして――――天地をさー」

 天地――――その名を聞いた瞬間、剣一郎や命吉、彩乃の表情が曇ったのが見て取れた。

 怜は続ける。

「天地の奴に怒られるだろうなー、『こんな大事な時に何してんだー』ってさー。な? 剣一郎は、どう思うー? 怒られるかなー?」

「………………」

「? 剣一郎ー?」

 怜が、それに気付いた。
 周囲を見渡すと、他の面々も同じ表情をしていることにも、気付いた。

「え……? なんで皆……暗い顔を…………」

「怜っち……」声を上げたのは、彩乃だった。

「実はね……? 天地ちゃん、はね……?」

「…………え……?」


 この日――――ゴーストバスター達は、歴史上初の快挙を成し遂げた。

 しかしそれは――――



 偉大な…………一人の人間の、命と引き換えに……。
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