ゴーストバスター幽野怜Ⅲ〜三つの因縁編〜

蜂峰 文助

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第十五話『二体の霊王』

【2】

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 千以上の銀の槍が放たれた瞬間、冥は高速で思考を巡らせた。

(命吉のハンマーと剣一郎の刀で捌く? いや、あの槍はとてつもなく硬い銀で出来たものだ、全てを捌き切る前に、二人の武器の方が悲鳴を上げてしまう――と、なると、私の炎王獅子――もしくは――――)

 思考はまとまった。

「彩乃!!」

「分かってまぁーすっ!!」

 彩乃は既に、両手を前に掲げていた。
「はぁーーっ!!」という掛け声と共に、『引き離し』を発動。

 次の瞬間、千の銀の槍全てが後方へと弾かれた。

 回避成功。

「まぁ……普通に考えて、そういう手段に出ますよね」

「っ!?」

 千の銀の槍の後退とは反対に、【銀丿軍隊】本体が、彩乃へと急接近していた。

「その手が、そのおかしな力の発射口なのでしょうか?」

 狙いは、彩乃の両手である。

 【銀丿軍隊】は右手を、鋭利な銀の刃へと変化させ、それを目にも止まらぬ速さで振るう。

 しかし、その銀の刃が彩乃の手に触れようとした、その瞬間――

「む?」

 ボウッ! と、【銀丿軍隊】の全身が、炎に包まれた。
 その刹那、「ガオオォオオォオオオオオォォオーーッ!!」という雄叫びと共に、炎王獅子の牙が、霊王本体へと突き刺さった。

 【銀丿軍隊】の視線が、冥へと向けられる。

 冥は言う。

「普通……そういう行動に出るわよね?」

「なるほど……読まれていましたか」

 だが、ダメージの入っている様子はない。
 それどころか、「うん、可愛らしい猫ちゃんです」そう言って、炎王獅子の頬を撫でる始末である。

「私の――研究材料にしたいほどに、可愛らしい」

「ガオッ!?」「っ!?」

【銀丿軍隊】が、その言葉を発した瞬間、メンバーはおぞましい殺気を、再び感じた。

 炎王獅子は後ろに飛んで距離を取り。

「彩乃!」
「はぁい!!」

「おっと……」彩乃が『引き離し』の能力を行使し、【銀丿軍隊】を吹き飛ばした。

 ゴーストバスターメンバーも、距離を取る。

 吹き飛ばされた霊王はというと、三キロ程離れた場所で、くるんっと空中で回転し、軽やかにアクロバティックな着地を決めた。

「なるほどなるほど……遠くまで吹き飛ばす力はあっても、決定打にはなり得ない……と。ふむふむ、良いデータが取れました」

 米粒のように小さく見えるゴーストバスターメンバーの姿。

 その中の、一つから激しく炎が燃え盛るのが見えた。

 炎王獅子だ。

「炎王獅子――――」冥が指示を飛ばす。


「最大火力よ!!」
「ガオオォオオォオオオオオォォオーーッ」

 炎王獅子の口から、高火力の炎が吐かれる。

 その炎は、一直線に【銀丿軍隊】へと向かう。

 避ける素振りなどない。
 微動だにすることなく、その業火を身体に受ける。

「ケホッ……ふむ、なかなかに良い炎です。が――――やはり、この炎も決定打には、なり得ない。あるとすれば――――」

 業火が止んだ、余裕綽々と耐え抜く【銀丿軍隊】

 追撃と言わんばかりに、命吉と剣一郎、そして天地が作り出した、巨大なクマのぬいぐるみが襲い掛かる。
 バンバンバン……! 見舞の能力アップの弾丸を加えて。

 けれど、これにもまた、【銀丿軍隊】は逃げる素振りもない。

「この三人ですね……」

 襲い掛かられているにも関わらず、余裕の笑みを浮かべる【銀丿軍隊】
 流石の面々もカチンとくる。

「舐めやがってぇ! ぶち割れろゴラァ!!」
「その余裕……命取りになるよ!!」

「命取り……ねぇ……」霊王は、眼鏡をクイッとあげながら言う。


「取れるものなら、取ってみなさい――――私の、命を」


 そこからは二人+一体の猛攻が始まった。

 命吉がハンマーで殴り。
 剣一郎が斬って斬って斬りまくり。
 巨大なクマのぬいぐるみが、殴る。

 見舞の援護射撃を挟みながら、猛攻を続ける――――が。


「確かに筋の良い攻撃ではある……しかし残念――――その程度では、私の命は取れません」

「「っ!?」」

 またしても、おぞましい殺気。

 その時、銀の大地、銀の天井と化している上と下から、グニョンッと、銀の矛のようなものが三つ生成され、命吉と剣一郎、そして大きなクマのぬいぐるみ目掛けて伸びてくる。

 串刺しにするために、だ。

「っちぃ!!」
「くっ!」

 命吉はハンマー、剣一郎は刀で、その銀の矛に対し応戦するものの……。

「あがぁっ!!」
「がっ!!」

 命吉は左脇腹、剣一郎は右ふくらはぎを抉られる。

 大ダメージだ。

 クマのぬいぐるみはというと、為す術なく串刺しにされている。


 命吉と剣一郎は、それぞれダメージを受けたため、力なく大地に倒れる。


 ここで、【銀丿軍隊】による追撃。

「おやおや……良いんですか? ここら一体の大地は、全て私の攻撃範囲内ですよ?」

「「っ!?」」

 命吉と剣一郎が倒れている真下の銀の床が、ポコンッと音を立てた。

「っちぃ!」
「しまっ――」

 咄嗟に、「彩乃ぉ!!」と冥が指示を飛ばし、彩乃が動く。

 遠く離れた場所から、倒れた命吉と剣一郎を無理やり吹き飛ばした。
 それにより、銀の床から伸びた銀の矛を回避することに成功。


 串刺しにならないことに、成功した。


 飛ばされた命吉と剣一郎は、無造作に転がるも、激痛に耐えながら体制を整え、迎撃姿勢をとる。

 闘士は萎えていない。

 しかし――――勝つイメージが湧かない。


 冥は痛感していた。

 霊王を相手にした際に、常々感じていた。ゴーストバスターメンバーの欠点――


 圧倒的な、火力不足。


 決定打の欠如。


 常々思った――もし、この場に、怜と姫美がいたら、と。

 あの二人の力なら、この無敵とも呼べる【銀丿軍隊】の鎧を、打ち砕く可能性があったのに……と。

 こうなってしまったら――アレしかない。

 冥の切り札しかない。

 けれど、この場には、他のゴーストバスターメンバーがいる。

 巻き込んでしまう可能性があるため、それは使えない。

 どうする? どうする!?


 冥は考える。考えて考えて考えるものの、答えが出ない。


【銀丿軍隊】を倒す策が、見つからない。


 万事休すか?

 そんな中で一人、この絶体絶命の状況下で、この絶望的な状況をひっくり返す手段があることを、知っている人物がいた。

「今しか……ない!」

 その人物の名は――――国獄 天地。

 彼女の切り札ならば、この状況を変えられる。

 一本の糸を取り出し、その切り札を発動しようとした――その時。


 スパッと、音がした。

「っ!?」

 驚愕する。

 ゴーストバスターメンバーのみならず、霊王――――【銀丿軍隊】までもが。

 次の瞬間、上空を覆っていたはずの銀のドームの天井が、崩れ落ちた。

 曇り空が見え、雪が降り落ちてくる。

「こ……これは一体……」

 何がなんだか分からない状況下であるものの、この機を利用しない手はない。

「天地っ!」咄嗟に冥は叫んだ。

 呆気に取られていた天地が、その声を前に正気に戻る。
 即座に、名前を呼ばれた意味を理解した。

「はいっ!」遠くに離れた、命吉と剣一郎へと糸を伸ばす。

 その糸で、二人をぐるぐる巻きにしっかりと固定。

「彩乃っ!」冥が今度は彩乃へと指示を飛ばした。

「了解でぇす!!」彩乃が、自分自身に向けて『引き離し』の力を放つ。
 その際、見舞と天地と冥が、彩乃のあちこちへとしがみついた。

『引き離し』の力による、強行脱出。

 彩乃と、彼女にしがみつく三名。そして天地の糸で硬く結ばれている命吉と剣一郎は、空へと舞い上がる。

 もの凄い速度で、空を飛び逃げる。

 その最中――――剣一郎は目撃した。


【銀丿軍隊】の近くの空間が、まるで刀で斬り裂かれたかのように傷が入ったことを。

 そしてその中から、空間をこじ開けるようにして、一体の悪霊が現れた瞬間を――――剣一郎は目撃した。

「まさか……アイツは!」



【銀丿軍隊】の視線は、立ち去ったゴーストバスターメンバーには一切向けられない。

 彼の視線は、突然現れた、一体の悪霊へと釘付けになっている。


「私の銀の城を、容易く斬り裂くとは……やはり、あなたでしたか……」


『霊王丿八』――――【万物斬撃】


「確か名前は…………斬之助、でしたよね?」


 小葉焚 斬之助こと【万物斬撃】は言う。
 とてつもない、殺気を撒き散らしながら。

「やはり貴様か……ブラッドレイ。拙者の眠りを邪魔しおって……。許さんでござる」

「わー……嬉しいですねぇ……。私の名前、覚えていてくれてたんですねぇ……」

 向かい合う、霊王と霊王。

 ここで一つ、確認しておくべき、世界の理がある。


 霊王は霊王を――――殺せない。
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