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第十三話『目覚める霊王』
【2】
しおりを挟むとりあえず、彩乃は今、話せるだけのことを話した。
当時のことを思い出しながら、言葉を繋いでゆきながら。
そんな話を聞き終えると、三月は少し考えるような素振りを見せる。
「ふむ……と、なると、ボクはあんまり、回復系の御札は得意じゃないですし……瞬間移動や攻防力アップなどを活かした、戦闘補助の方が合っているような気がします」
「うーん……一概に、そうとは言いきれないんじゃないですかぁ?」
「と言うと?」
「えーっとぉ……昨日の映像や資料で見てもらった通りぃ、霊王の攻撃ってぇ、もの凄く攻撃範囲が広いんですよぉ。『兆力無双』なんてぇ、拳の風圧でぇ、数十キロ先の街を破壊してましたしぃ。だからぁ、回復も確かに大事だとは思うんですけどぉ……イロノとしてはぁ、避難という意味での移動方法の確保っていうのがぁ、とても大切だと思うんですぅ」
「……確かに」
三月は頷いた。
「『兆力無双』は、どちらかというと、肉体強化系の力だった。だから、余波が物理的な破壊だけで済んだ。けれど、冥さんが昨日のミーティングで言っていた通り、残りの霊王には、毒などを使う悪霊もいる……そのケースの場合必要なのは、回復よりも、移動方法ってことですね」
「そぉーいうことでぇーす」彩乃は頷いた。言葉は軽いが、表情は真剣そのものだ。
「うー……そうなったら、今度は私がお払い箱だよぉ」と、遙がしょんぼりしてしまうが。
「いいえ、間違いなくぅ、回復やバリアーの力は必要となりますよぉ」彩乃がフォローした。
「例え、どんなに凄い移動能力があったとしてもぉ、その街全員の人が無傷に避難できる可能性なんてぇ、絶対ないものぉ、だから回復の力も必要ですよぉ」
「…………ほろり」
遙の頬を、一筋の涙がつたう。
「彩乃ちゃんはぁ、私のこと、必要だと思ってくれてるんだねぇ~ぐすっ」
「そ、そりゃ、まぁ……普通に考えてぇ、そうですよねぇ……」
「うわぁぁあん! 嬉しいよぉ~!!」
「ちょ、遙さん!?」
号泣し始めた遙を前に、少し狼狽えてしまう彩乃。
「前回の霊王討伐の際には、ボクと遙は呼ばれませんでしたからね……」
三月が、その涙の理由を語った。
「正直……そのことについて、ボクと遙は、相当凹んだんですよ」
一言一言を噛み締めるかのように続ける。
「声が掛からなかった理由は、『拳銃の悪霊』との戦いで不甲斐ないところを見せて、冥さんを落胆させてしまったから、とか、シンプルに実力不足だから、戦力として数えて貰えなかったのか……色々と、考えてしまってて……だから、冥さんの言葉じゃなくても……彩乃さんの言葉でも、嬉しかったんだと思います。必要って、言ってくれたことが」
「…………」
彩乃はそれを聞き、泣きじゃくる遙へと視線を向ける。
そして小さく声を落とした。
「なぁんだ……ここにいる皆、同じだったんじゃなぁい」
「え?」「へ?」少し目を見開きながら、三月と遙の視線が彩乃へと向けられた。
「イロノもぉ……どっちかって言うとぉ、選ばれなかった側だからねぇ」
「そんな……あなたは、戦地に足を運んでたじゃないですか」
「ううん……」彩乃は首を振る。
「それはきっとぉ、イロノの師匠が、怜だったからよぉ……。もしも冥さんだったらぁ、きっとイロノは呼ばれてなかったわぁ……。皆さんとぉ、イロノの差って、それくらいだよぉ」
彩乃は続ける。
「怜っちは優しいけどぉ、冥さんは、もっと優しい……それだけの差……」
「……ぐす……優しい……?」遙が、その言葉に疑問を持った。「厳しい、じゃなくて……?」と。
「うん、皆さんに声が掛けられなかった理由はきっとぉ……冥さんが、二人の身を案じてぇ……巻き込みたくなかったからだと思うよぉ……てゆーかぁ、多分そう。普通に考えてぇ、ゴーストバスターに成り立ての女子高生を、霊王との戦いに連れていくぅ? イカれてるのはぁ、怜の方だと思うけどぉ?」
「「…………確かに」」
「だからねぇ」彩乃は笑って、三月と遙の肩に手を回した。
「今度はぁ、向こうから『付いてきてください』って言って貰えるくらい、強くなろぉ! きっとぉ、怜っちも冥さんも、そうなってくれるのを、期待してるはずだからぁ!」
「「…………うん……」」
二人は、その彩乃の言葉に、揃って頷いたのであった。
「うんうんっ! 素晴らしい心掛けだねー! その言葉を聞いただけで、オイラなら! 選抜メンバーに組み込んでしまうよー!」
「でしょお? イロノ達も意外と…………って、えぇ!?」
突然現れた、その声の主の存在に、彩乃だけでなく、三月と遙も驚いてしまう。
小葉焚 剣一郎――冥や怜と並ぶ六強の一角が、何食わぬ顔で、彩乃の横の席に座っていたのだった。
「あははっ、話の腰を折っちゃった上に、驚かせちゃってごめんね!」剣一郎は、そう言って笑う。
明るい人だなぁ、と彩乃は思った。
「さて、仲良くお話中、非常に申し訳ないんだけれどね?」剣一郎が話を切り出した。
「冥さん、どこにいるか分かるかな? ちょっと話がしたいんだよね」
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