50 / 106
エピソード3『万屋太陽と白金愛梨』
【第49話】万屋太陽と白金愛梨⑥
しおりを挟む太陽を見送り、下校を始める忍、千草、透士郎の三名。
「それにしても……感慨深いな」
「……ああ……」
「だよねぇー。やっぱり、あの二人は、オイラ達にとっても特別だもんねぇー」
「……だな」
透士郎は思い出す。
かつての太陽と愛梨の関係を。
『人の心をかってに読むな! 殺すぞ!!』
『あらあら……物騒なこと。読まれたくないような事考えているのがよくないんじゃない?』
『何だとゴラァ!!』
(……それが今じゃ、ああだもんな……)
「む? 何を笑っているのだ? 透士郎」
「いいや……何でもねぇよ。あーあ! オレも彼女欲しいなぁー!!」
「あ、そういえば」と、千草がとある事に気付く。
「太陽の告白が成功したらさぁー。この中で彼女いないの、透士郎だけになっちゃうんだよねぇー。ニヒヒ」
「げっ! オレが必死に目を背けていた現実を、つつく様な真似しやがって! 見てろよー! オレだってー」
地団駄を踏む透士郎。
「あはは」と笑う忍と千草。
「心配せずとも、きっと透士郎ならすぐに出来る」
「そーそー。何てったって、変態のオイラ達にだって出来たんだからさー!」
「……お前ら……。まぁ……確かに……そうだな……。これまでの人生で、一番説得力のある励ましだな」
「…………それそれで……」
「腹が立つんだけどぉー?」
「ところで……」透士郎が疑問に思う。
「太陽の奴……白金と約束した場所があるみたいなんだけど……一体どこなんだ? オレはてっきり、校内の『あの桜の木』だと思っていたんだが……」
「アダンと最後に闘った場所」
「え?」
「そう言ってたわよ……愛梨が」
「宇宙」
彼氏である忍が、突然現れた宇宙に反応する。
「ちょっと……私の彼氏を不用意に連れ回さないで欲しいものね」
「あ、ああ……ごめんごめん。忍、宇宙と一緒に……」
「いいわよもう……私も、あんた達と一緒に帰るから」
「え? 珍しいな」
「愛梨がいないしね……それに――今日は何だか……あなた達と一緒に居たい気分だし」
「…………そっか。そうだよな。なら、一緒に帰ろう」
「うん」
宇宙も加わり、四人並んで歩き始める。
ふと、透士郎が気付いた。
「アダンと最後闘った場所……?」
「ええ……恐らく、あの空き地ね」
「あそこ……立ち入り禁止区域になってる筈じゃ……」
立ち入り禁止区域――その言葉に、忍と宇宙が顔を合わせほほ笑み合う。
「別に良いじゃない。そういう所が、案外素敵な場所だったりするのよ」
「はぁ……素敵、ねぇ……。それにしても、あの場所って……ここからそこそこ遠くねぇか?」
「それも大丈夫よ」
「いや、太陽は限界突破すりゃ大丈夫だろうけど……白金の方が……」
「大丈夫。だからあの子、今日――――昼休みから早退して、そこへ向かってるから」
宇宙の言葉通り、愛梨は今……その場所に居た。
アダンとの最終決戦を繰り広げた地……。
青春が始まった地に。
闘いの痕跡が今も尚残っている。
あちこちに隕石が落ちたのかと思う程の大きな穴が空いており。
抉られた地面や木が、広範囲あちらこちらに見受けられる。
そんな中で、工事用だろうか? 謎に備え付けられているベンチに座り、愛梨は、待つべき人を待っている。
「早く……着きすぎちゃったかなぁ……?」
おもむろにスマホを取り出し、時間潰しを始める。
画面が灯ると、そこにはいくつかのメッセージが送られていた。
この場所で、メッセージを開く。
先ずは静からだった。
『お疲れさまです!! 良い連絡おまちしております(笑)
太陽さんが怖気付いたら、あの立派なお尻を蹴り飛ばしてやってくださいねっ!(「 ˙◁˙)」アチョ-☆』
次は、姫から。
『こんにちは(*^^*)
いよいよですね! 昔のように……本音でしっかりとぶつかってください!!
連絡おまちしております( . .)"ペコリ』
大地から。
『こんにちは。
あのお二人がようやく……と、凄く感慨深いです。
応援しています!』
そして――
最後は月夜から。
『約束破ったら、許さないから』
それらのメッセージを見て、愛梨はクスッと笑った。
(それぞれ個性があるなぁ……)と、面白かったのだ。
「了解しました」
それぞれに返信をし、スマホで時間を確認。
確認すると、スマホを仕舞う。
「もう……そろそろ……かな?」
愛梨は、目を閉じて……その時を待つ。
日光が暑い……日傘でも持ってくるべきだったかな? そんな風に思考していた、その時だった――
どーん! という物音と共に、砂煙が舞った。
「…………なるほど、そういう登場の仕方をするのね。あなたは」
徐々に、その砂煙が晴れていく。
中に隠された一つの影が、少しずつ顕になっていく。
砂煙が完全に晴れ、そこに現れたのは……当然、この男――
「よぉ……白金。待たせたな」
「ううん、今来た所よ。別に待ってないわ……長旅ご苦労さまでした――――太陽くん」
万屋太陽だった。
「……悪かったな。わざわざこんな所まで足を運んでもらってよ」
「うーん。そうだね。それを言うなら、もっと早く言って欲しかったかも」
「そっか……流石に昨日の今日ってのはやり過ぎか。すまなかったな」
「いえいえ。別に謝ることでもないのよ」
「一刻も早く……伝えておきたかったからな」
「?」
「オレはさ……星空の言う通り、腰抜けなんだよ。だからさ、いざ『やろうっ!』って決めても、時間が経っちまうと、尻込みしちまうんだよな……。だから、出来る限り早い内に動いちまおうって思った訳だ」
「うん……知ってる」
「だろうな……何せお前は――他人の心が読めちまうんだもんな」
「うん……よく分かってるじゃないの」
「当たり前だろ? 多分オレが……世界中の誰よりも――――お前の事を知ってるよ」
「うん……そうだね」
「白金……」
「何かな? 太陽くん?」
見つめ合う二人……。
暫く見つめ合った後、太陽が切り出した。
「オレは今日――お前に伝えたい言葉があるんだ」
伝えたい言葉――
「お前に伝えたい気持ちが……」
伝えたい気持ち――
「うん……知ってる。だから、ちゃんと……言葉にしてね?」
「…………。もちろんだ」
「…………」
「…………」
見つめ合う二人の心臓が高鳴る。
ドクン……ドクン……ドクン……と……。
間もなく――その時が、訪れようとしていた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
JC💋フェラ
山葵あいす
恋愛
森野 稚菜(もりの わかな)は、中学2年生になる14歳の女の子だ。家では姉夫婦が一緒に暮らしており、稚菜に甘い義兄の真雄(まさお)は、いつも彼女におねだりされるままお小遣いを渡していたのだが……
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる