ゴーストバスター幽野怜

蜂峰 文助

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第四話『悪霊討伐遠征』

【3】

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 駅を出る為、新幹線から下りた二人が歩き始めると違和感があった。

 休日であるというのに、駅に人が少ないのだ。

 事実、怜と天地が下りた新幹線には、乗り込む人間が一人もいなかった。二人が確認した限りだが、誰一人として乗車をしていなかった。

 怜と天地は、偶然かと思ったが、どうやらそうではないみたいだ。

 次の電車が駅に到着した。

 怜達が先程乗って来たのとは逆の方向からやって来た新幹線だ。早い話、県外へ行く為の電車である。


 県外へと――逃げる、為の電車である。


 そして、階段を鬼の様な形相で下りて来る男性が一人。その手には御札の様な物が握られている。

 あまりにも凄まじい形相をしていたので、何事かと二人はその男に目を向ける。

「怜、あの御札って……」

「うんー……」怜は頷いた。


「アレは姉さんの御札だねー」


「何で冥さんが、一般人に御札を渡してるの? あ、もしかしてあの人が、今回の依頼者なのかなぁ? 話、聞いてみる?」

「いやー」怜は引き攣った表情で言う。


「そうでもないみたいだよー」

「え?」天地が再び、その男へ視線を向ける。


「こ、こんな所に! いつまでも居られるかってんだ!! へへへっ! 新幹線に乗っちまえばこっちのもんだ! オレ天才だろ!」

 そう、希望を見つけたかのような満面の笑みを浮かべ、その男は新幹線へ乗り込もうとした……その時――


 パァンっと、その男の頭が弾け飛んだ。


 ドチャッと、生々しい音を立て、頭部を失ったその男の身体は倒れ込んだ。

 駅のホームは騒然とする。

 悲鳴の嵐だ。

 当然、その光景を見た怜と天地も驚愕する。何が起こったんだ、と。


 しかし、怜と天地が注目したのはそこではない――


 駅のホームが騒然となり、新幹線の入り口付近に頭部を無くした男が倒れているにも関わらず……新幹線の中の人達は見向きもしないのだ。

 怜と天地に一番近い窓から見える人は、悠長に弁当を食べている。

 まるで駅と新幹線の中が別世界の様に感じたのだ。


「な、何だこれー……」

「や、ヤバくない……?」

 青ざめる二人。

 二人は気付いたのだ、目の前で行われた一連の出来事は――


 今回討伐すべき霊による――『呪い』であると。


「状況から見るにー……この県に足を踏み入れた瞬間、発動する呪いみたいだねー……いやー……これは手強いなぁー……」

「これ……マジで『霊王』なんじゃ……」

 更に二人は目撃する。

 その亡くなった男性の遺体が、風に流されるようにサラサラと消え去ったのだ。

 まるでそこには最初から、何も無かったかのように。

「……ウチらも、ここで死んだら、消えちゃうのかなぁ?」

「だろうねー……」


 次の瞬間、天地は頬っぺたを強く叩いた。「うん! とりあえず、もう一般人モードは終わり! 仕事モードに入らないとね!」

「そーだねー、だってボクらはゴーストバスターだもんねー、ビビってちゃ表の世界の人達が不安がっちゃうもんねー」

「行こう! 怜!」

「うん、行こうかー、亡くなったあの男の人の為にも――


 この霊を倒しにー」


 そう言って、駅の階段を上る二人の目の前に「やっと来たわね」と言い、立ち塞がる人影が一つ。

「姉さんー!」
「冥さん!」

 怜の姉であり、そして――


 最強のゴーストバスターでもある、幽野 冥だった。

「長旅ご苦労さま」と、二人を労う彼女の姿はボロボロだった。

 顔を見るに疲れ切っている。


 怜はこんな姉の姿を見るのは初めてだ。


「だ、大丈夫なのー? ボクらが来たから少し休んでー……」ふらつく冥を支える怜だが、冥はいつものブラコンぶりを見せる事もなく真剣な表情を崩さない。

「そんな余裕はない――来るよ」


 目の前に、禍々しいオーラを放つ、拳銃の様な物が現れた。

 それも二丁――


 それぞれ銃口が、怜と天地に向けられている。

 パァンっと銃声が鳴る。

 突然の事に身動きが取れなかった怜と天地を、冥が押し倒す様な形で助けた。

 冥の助けが無ければ、二人は先程の男性と同じく、頭部を失っていた所だろう。

「油断しないで二人共! ここは既に敵の霊空間の中よ! あんた達ゴーストバスターでしょう!? 自分の身は自分で護って!! でないと、来て貰った意味がないわ!」


「う、うん!」と、立ち上がり戦闘態勢に移る怜と天地。

 怜はありがたい御札を額に貼り、
 天地は懐から熊のぬいぐるみを取り出す。

 が――


 既に二丁の拳銃には、冥の御札がそれぞれ貼られており、行動不可能と言わんばかりに床に落ちていた。

 二人を助けた一瞬間に、冥は拳銃にも攻撃を加えていたのだ。

 冥が戦っている……にも関わらず、怜はただ助けられただけ。


「ボクは何やってんだろうなぁー!!」と、自分自身への怒りを込めた拳を二丁の拳銃へぶつけた。

 拳銃はそれぞれ粉砕し、消え去った。

「行こう天地ー! ボクらも戦わなきゃー!」

「うん!」天地は頷いた。

 二人の顔は、既に一般人ではなく、ゴーストバスターの顔をしていた。


 冥は走って階段を下りていった。

 その狙いは恐らく、怜達と共に新幹線から下りた人達を救う為だろう。

「あの拳銃はボクと天地を狙ってたー、きっと今この場所に足を踏み入れたからだー」

「行こう怜!」

「うんー!」

 二人は急いで階段を下りる。


 既にその人達は救助されていた。

 一人一人が冥の御札を身に付けている。


 十丁を超える拳銃が、標的を見失ったかのように宙を彷徨っているのだが……

「よっこらしょ」と、その状態のまま冥は疲労困憊と言わんばかりに地べたへと座り込んだ。

「後はお二人共よろしくねー」

 と、二人へ指示を送る。

 よろしくとは、全ての拳銃を処理しろという事なのだろう。

「天地――任せてー、ボク一人でやるからさー」

「了解」

 天地の承諾を受け、怜が全速力で駆け出す。

 たった一秒の間に、全ての拳銃をその拳で破壊したのだった。


「ブラボー」その様子を見た冥は、拍手を送る。


「最初からそれ、やんなさいよねー」


「ごめんよー」怜は頭を下げた。
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