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第三話『幽野怜と裏の世界』
【1】
しおりを挟む『呪い』――それは、霊が人間かける枷の様なものだ。
大抵の場合、生前に恨みを持った人間がこの世から去った際に発動する場合が多い。
呪いも多種多様であり――不幸を呼び寄せる事もあれば、不運を呼び寄せる事もある。はたまた――霊を呼び寄せる事もある。
そして……
死を呼び寄せる事も。
かの男子小学生の霊も、『呪い』の掛けられた女子――末代彩乃に掛けられた呪いに引き寄せられたとみて、間違いはないだろう。
それだけでなく、末代の肩に取り付いていた霊達も引き寄せられていたという訳だ。
磁石の如く、引き寄せられていたのだろう。
「よくもまー、これ迄元気に過ごせれてるねー、それが不思議なくらいだよー」
「まぁねぇ……」
例の男子小学生の霊との決着後、階段で気絶していた善通寺と風呂敷を霊能力を使用した、ある種インチキな移動手段にて無事自宅へ送り届けた後、歩いて再び山を登っている所であった。
廃校舎へ向けて、歩みを進めている所だった。
「それにしてもぉー、まさか怜っちが本当にゴーストバスターだとは思わなかったわぁー……あの小さな御札をくれた時、もしかしてとは思ったけどぉー」
「ま、普通は学校の同級生がゴーストバスターだなんて思わないよねー」
「そうねぇー……でもぉ、それはイロノにとって幸運だったとも言えるわぁ……怜っちだと話し易いしねぇ」
そうにこやかに微笑む末代。
「……その呪いの件については、廃校舎に帰ってから聞くねー」
「うん、その方がちゃんと話せるしぃー、私も助かるわぁー」
そう言いながら、彼女はポケットからタバコを取り出し、一本口に咥えた。先端に火をつけると煙が立つ。
フゥーと、吸い込んだ煙を吐く姿を見た怜は彼女へ言う。
「タバコはいつから吸ってるのー?」
「え? あぁ、そうねぇー……小学校卒業したあたりだったかしらぁ……」
かなりの法律違反を起こしていた。
読者の方々は是非とも真似をしないでいただきたい。
「イロノ……ママとパパが死んでから荒れちゃってさぁー……周りの友達もぉ、類は友を呼ぶじゃないけどぉ、悪い系の子ばっかりだったんだよねぇ……でぇ、その友達にぃ」
彼女は、タバコを怜に差し出すフリをする。
「なるほどねー、それで吸っちゃった訳だー」
「そんでぇ、一回吸っちゃったら癖になっちゃってぇー、それからバンバン吸っちゃうようになっちゃった訳よぉー、まったく、ニコチンって言うのは怖いわねぇー」
「でも……」と、末代は続けた。
「呪いは、それ以上に怖いけどねぇー……」そう、続けた。
「だろうねー、その様子を見るとー……」
「貴方なら助けてくれそうねぇ……何か安心して来たわぁー……」
「ま、手は尽くすよー」
その後、たわいもない話をしつつ、二人は再び廃校舎へと辿り着き、そして保健室へと足を運んだのだった。
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