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第一話『ゴーストバスター幽野怜』

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 黄金の光――龍の爪に見えた何かが消えたと同時に、再び周囲は漆黒の闇に包まれた。
 しかし、数端や友人の表情は明るかった。
 彼らは命を救われたからだ。
 目の前の……少年に。

 ゴーストバスターの少年に。

「にひひ、終わったよー。良かったね」

「はい! ありがとうございます!」

「それにー、友達も無事で良かったねー。あ、無事ではないかー、一週間も霊の中でいたんだもんねー、一応検査してもらっとくー? 知り合いに腕の立つ専門医がいるんだー」

「ぜ、是非お願いします! 良かったね! 友人!」

「……ああ……」

 二人して手を繋ぎ、喜び合う。両者の目には涙。
 無事、この悪夢は終わったんだ――と。

「さーて、それじゃあ現世に帰ろっかー、いつまでも地獄にいたんじゃ死んでるのと同じだしー……と、言いたい所だけど……ちょっとここで待っててー」

 怜は歩き出す。

「は、はい……でも、どこへ?」
「んー? ちょっと情報収集しに行ってくるー……あ、この件とは別件だから、気にしないでー」

 怜が向かった先は、老婆のような手の残骸が残る場所。
 いや、残骸ではまだない、まだかろうじて息があった。

「やっほー、即死しないように打ち込んだ筈だから生きてるよねー? ちょっと聞きたい事があるんだけどー、答える事出来るー?」

 少しずつ体が消えていっている老婆のような手は返答する。

「マサカ……キサマホドノオオモノガアラワレルトハ……ワタシモツイテイナイ……」

「喋れるみたいだねー? だったらとっとと質問しちゃうねー?」

「……シツモン……?」


「金色に光る幽霊を知らない?」


 言葉に詰まる、老婆のような手。

「キンイロ……? キンイロニヒカルノハ、キサマノ……アア、ナルホド、ソウイウコトカ……ナルホドナァ……」

 何かに気付いたのか、ニヤァと汚い笑みを浮かべる。

「気持ち悪く笑ってる暇があるならさっさと答えてー、早くしないと君死んじゃうからさー。少なくともソイツ、100年前には日本にいた筈なんだけどー、何か噂話とか聞いた事ない?」

「ヒャッヒャッヒャッヒャ……ウワサモナニモ、ソノオカタハ、ワレワレニトッテ、アコガレトモイエルカタのヒトリダ……ヒャッヒャッヒャッヒャ! キサマ……ワタシガ、ツタエタトコロデドウスルツモリダ? ソノオカタヲ……」

「ん? ぶっ潰すつもりでいるけどー?」

 怜の発言を聞いた途端、突如大きな声で笑い始める老婆のような手。

「ヒャッヒャッヒャッヒャヒャッヒャッヒャッヒャヒャーッヒャッヒャッヒャ!! オモシロイ! ジツニヒャクテンマンテンノカイトウダァ!! ヨモヤキサマ――


 レイオウノナカノレイオウニケンカヲウルツモリトハナ!! ヒャッヒャッヒャッヒャ!!」


「うるさいなー、で、そのレイオウノナカノレイオウって奴の事、何か知ってるー? 知らないなら、早くくたばって」

「シッテイル……ト、イッタラ……?」

「……!! 本当に知ってるの!? 教えろ! 奴は今どこにいる!! どこで眠っているの!?」

「ヒャッヒャッヒャッヒャ……メノイロガカワッタナ、ソレガキサマノホンショウカ……タイソウナカメンヲカブッテイルナァ、ヒャッヒャッヒャッヒャ……」

「良いから答えろ!!」

「ヒャッヒャッヒャ……ワタシニカッタ、ニクタラシイキサマニゴホウビトシテオシエテヤロウ……アノカタノイバショマデハシラナイ、ダガシカシ――

 アノカタハ……マチガイナク、チカイウチニメザメルデアロウ……」

 死にかけの老婆のような手は続ける。

「ソシテアノカタガメザメタトキ――


 ニンゲンカイハオワル。


 ヒャッヒャッヒャッヒャ! ソレヲミトドケラレナイノガザンネンダ……ソノトキ、キサマガドンナカオヲスルノカ……ヒャッヒャッヒャッヒャ……ミテミタカッタ」

「きっとその時は、その光る幽霊をぶっ潰して、満面の笑みを浮かべているよ……絶対ね」

「ヒャッヒャッヒャッヒャ……オット、サスガニモウジカンガナイミタイダ……ソレデハサイゴニワタシカラヒトコト、コレヲイイノコスコトニスルヨ……ヒャッヒャッヒャッヒャ――

 キサマノオモウミライハ、ヒャクパーセントアリエナイ」

「…………!」

「ソレデハマタ、ジコクデアォゥ……」

 そう言い残し、老婆のような手は消え去った。
 死に絶えた。

「……ホント……しぶとい幽霊だったねー…………さ、あの二人の元に戻ろっかー」


 そして――

 二人の元に戻った怜は、呆気なく、いとも簡単に、地獄から現世へと帰って行ったのであった。
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