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8.終息と休暇
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そんな感じで旺ちゃんがいなくなってから、あっとゆうまに一年が過ぎ去った。
仕事終わりに、紫音ではなく今や乃依がやっているバーにもちょくちょく顔を出している。
意外にも乃依は、いい奴だった。
アイドルのような可愛いらしいルックス
を持ちながら、その性格は意外と男勝りでサバサバしていて。
「…….ねえ」
「ん?」
とある日。
仕事終わりにバーに行き、ビールが出てくると同時に乃依は私に話しかけてくる。
まだ他に誰も客はいなかった。
「…紫音、生きてると思う?藤堂さんに追われて殺されてるのかな」
「…ああ。紫音は…たぶん大丈夫だよ」
「え、なんで?」
「……ふふ」
実は旺ちゃんがいなくなって数週間後くらいに、行った。
…紫音の故郷、北国に。
行った、とゆうか行ってきてもらった。
…蓮二さんに。
有名な大学病院、景色が綺麗に見える病室。
ヒントをもらってたから、グーグ○先生で検索したらすぐに病院がヒットした。
そして、妹の名前は紅葉。
土地は広いけれど、さまざまな施設がまだまだ少ない北国。
探し出すのは意外と簡単だった。
病院と病室を探し当て、行ってみると紫音が本当にそこにいたらしい。
「…ん?大丈夫なもんは大丈夫なの」
「なにそれ。もしかして紫音とデキてた?」
「…なわけ」
「は?じゃなんなの、なんでアンタがわかんの?」
「…企業秘密です」
「言えないならとりあえず飲めや」
「じゃ、お前も飲めや」
乃依とビールのジョッキをカンと鳴らした。
二人でそれをイッキする。
飲み干した後、わたし達は何故だか笑い出した。
蓮二さんによると、紫音は普通に元気だったようだ。
何故自分が追われないのか、こんなに平和に暮らしてるのか、
疑問のようだったけれど、蓮二さんは「もう追われることはないよ。安心して家族を守ってあげて」と、だけ伝えて、すぐにとんぼ返りしてきたらしい。
何もかもが、とりあえずはうまく終息してくれた。
……そう。
旺ちゃんは戻ってこないのだから、これで終息。
私にとっても、これがハッピーエンドなのだ。
そして一年経つ今も、いつものようにオナニーしようと、物品庫に来た。
この物品庫に来ると、いつも思い出す。
携帯を構えながら、こちらに近づいてくるあの時の旺ちゃんを。
あの頃は、殺したくなるくらいに憎たらしかった旺ちゃんを。
「旺ちゃん…」
最初は心底嫌いだったけど、今思えば旺ちゃんは結局、いつも優しかった。
あの動画を流す気など、たぶん最初からなかったのだと思う。
「お、うちゃん…」
ドMの気持ちを汲み取ってくれる、そんな優しいドS。それが旺ちゃん。
「ぁぁ、………」
電マのスイッチを入れる。
旺ちゃんの意地悪な顔を思い出す。
「……あ、旺ちゃん……」
会いたい……。
やっぱり…会いたいよ……
「…旺ちゃん…!」
「はーい?」
仕事終わりに、紫音ではなく今や乃依がやっているバーにもちょくちょく顔を出している。
意外にも乃依は、いい奴だった。
アイドルのような可愛いらしいルックス
を持ちながら、その性格は意外と男勝りでサバサバしていて。
「…….ねえ」
「ん?」
とある日。
仕事終わりにバーに行き、ビールが出てくると同時に乃依は私に話しかけてくる。
まだ他に誰も客はいなかった。
「…紫音、生きてると思う?藤堂さんに追われて殺されてるのかな」
「…ああ。紫音は…たぶん大丈夫だよ」
「え、なんで?」
「……ふふ」
実は旺ちゃんがいなくなって数週間後くらいに、行った。
…紫音の故郷、北国に。
行った、とゆうか行ってきてもらった。
…蓮二さんに。
有名な大学病院、景色が綺麗に見える病室。
ヒントをもらってたから、グーグ○先生で検索したらすぐに病院がヒットした。
そして、妹の名前は紅葉。
土地は広いけれど、さまざまな施設がまだまだ少ない北国。
探し出すのは意外と簡単だった。
病院と病室を探し当て、行ってみると紫音が本当にそこにいたらしい。
「…ん?大丈夫なもんは大丈夫なの」
「なにそれ。もしかして紫音とデキてた?」
「…なわけ」
「は?じゃなんなの、なんでアンタがわかんの?」
「…企業秘密です」
「言えないならとりあえず飲めや」
「じゃ、お前も飲めや」
乃依とビールのジョッキをカンと鳴らした。
二人でそれをイッキする。
飲み干した後、わたし達は何故だか笑い出した。
蓮二さんによると、紫音は普通に元気だったようだ。
何故自分が追われないのか、こんなに平和に暮らしてるのか、
疑問のようだったけれど、蓮二さんは「もう追われることはないよ。安心して家族を守ってあげて」と、だけ伝えて、すぐにとんぼ返りしてきたらしい。
何もかもが、とりあえずはうまく終息してくれた。
……そう。
旺ちゃんは戻ってこないのだから、これで終息。
私にとっても、これがハッピーエンドなのだ。
そして一年経つ今も、いつものようにオナニーしようと、物品庫に来た。
この物品庫に来ると、いつも思い出す。
携帯を構えながら、こちらに近づいてくるあの時の旺ちゃんを。
あの頃は、殺したくなるくらいに憎たらしかった旺ちゃんを。
「旺ちゃん…」
最初は心底嫌いだったけど、今思えば旺ちゃんは結局、いつも優しかった。
あの動画を流す気など、たぶん最初からなかったのだと思う。
「お、うちゃん…」
ドMの気持ちを汲み取ってくれる、そんな優しいドS。それが旺ちゃん。
「ぁぁ、………」
電マのスイッチを入れる。
旺ちゃんの意地悪な顔を思い出す。
「……あ、旺ちゃん……」
会いたい……。
やっぱり…会いたいよ……
「…旺ちゃん…!」
「はーい?」
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