ドMなんかじゃない

みきてぃー。

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7.過去と取引

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そんなことがあろうとも、店はいつも通りに稼働する。

あのあと蓮二さんとクロは私の家に来るも、家宅捜索などせずに軽く話して帰って行った。

「まーちゃんのことは微塵も疑ってない」と言いながら。

…こんな状況でも人が良すぎる二人だなと呆れた。


そのあといつも通りに出勤して、いつも通りに仕事をした。

今日はロングコースの人で終わると、もう朝方だった。
しかしいつも通りに、仕事終わりとゆうことで、クロと紫音のバーに行った。

蓮二さんは警察を交えての捜索や事情聴取などで大忙しのようだ。

紫音のバーは、こんなことがあってもいつも通りに賑わっていて、紫音自身もいつも通りにいた。

「おはよー!お疲れ様、クロさん、まーちゃん!」

…このタイミングで飛ばないのは、やはり疑われないようにするためなのか。

「…紫音お疲れ様ー。もう大変。めっちゃ大変。もう疲れたよ~~」

なんてクロが言っても、紫音はいつも通りに笑っているだけだった。

私も平然を装って、普段どおりに会話する。


…藤宮はいなかった。 

奴は一応このグループの幹部。
金庫が盗まれたことにより今まで飛んだ奴やお金に困ってるキャストや黒服を調査するのに忙しいらしい。

…クロも一応幹部だが、疲れたので、一旦休憩らしいが。


「…あー、昼間はごめんね、紫音。急に家に押しかけて」

「いや全然。ちょっとビックリしたけど」

クロと紫音がそんな会話をしている。
蓮二さんとクロはもう紫音の家にも行ったようだ。

「…もうビビるよね~急に」

参ったわ~といいながら、クロはビールを飲む。

「いくら入ってたの?その金庫」

と、私が言うと、クロは、うーんと首を傾げた。

「3000」

「…意外と大したことないじゃん」

「そう、もうみんなに給料とか支払った後だからね~不幸中の幸い?」

ははっと苦笑いするクロ。

「いやいや!大したことあるでしょ!これだから売れっ子は~…」

と言って、紫音は、もー!と言いながら笑う。

紫音は…なぜこのタイミングを狙ったのか。
そもそも最初からこうするつもりなら、五年待たなくても、もっといいタイミングでチャンスがあったように思えた。

「まー、でも困るっちゃ困るからね~。早く見つけないと…やばいよな~」

クロは、はあーとため息をつく。

こんなにも途方にくれるクロを、私は初めて見る気がした。
犯人を知っているとゆうことが、思ったよりも良心に響く。


ピリリリリリ

ピリリリリリ

私の携帯が鳴った。
こんな時間にかけてくる無礼者は、一人しか知らない。

うなだれているクロを残し、私は携帯を持って立ち上がる。


「…ごめん、クロ。私帰るわ」

「ええええー…」

「ロングだったから疲れちゃって。…なんか手伝えることあったら言ってよ」

そう言って立ち上がる。

良心が痛んだとしても、それとこれとは話が別だ。

…その去り際に紫音と目が合った。

「…紫音、クロをよろしくねー」  

紫音はいつも通りにニコリと笑って、「おっけー」と言って手を振っていた。

「ええー…そんな、まーちゃん…」
と、クロがうなだれていたけれど、私は無視してバーを後にした。




電話をかけ直しながら、もうMUTOにむかっていた。

電話が繋がるとすぐに聞こえた、藤宮のやる気なさそうな第一声。

「…はい。MUTO集合」

「もう着く」

私はそう言い捨てて、電話を切った。


…私たちは、何日間連続で一緒にいれば気がすむのだろう。

いや、気が済む、なんてことはない。

今、一緒にいたいと思えるから一緒にいる。今はそれでいい気がする。






MUTOに着いて、部屋に入るも部屋の中はとても静かだった。

薄暗い部屋の中で、藤宮がベットに横たわりスースー寝息をたてて寝ていた。

…なんだ、寝てんのか。


私はそっと入って、荷物を置くと、藤宮のとなりに横になった。

…とても疲れたような顔をしている。

今日一日、この一件で大変だったのだろう。


「………れ、い……」

「………」


あ、また出た。れい。

この間からよく口にしているこの名前は一体…。

必死に気にしないようにしていたのに、モヤっとする気持ちがフツフツと湧いてきた。


「………れい…ごめん…………」

藤宮の腕が、私を掴んだ。

「…………」


今は、れい、でも何でもいいか。

私は藤宮の近くに寄っていく。
すると当たり前のように藤宮が腕枕をしてくれて、ギュウと抱きしめられた。

コイツ、私だってわかってんのか…?


タバコと酒、汗とワックスと香水の入り混じった匂い。
…シャワーにも入らずに眠りにつくほど疲れていたらしい。


温もりに包まれると、ロングコースで疲労していた私は、すぐに眠りに入っていった。
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