ドMなんかじゃない

みきてぃー。

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6.混沌と失意

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何回くらいイカされたのだろうか。
身体が痙攣しすぎてワケがわからなくなってきた。

控えめに言って、辛い。


「…苦しい?」

藤宮はやっとのことで、電マが私の秘部から離れてくれた。

私は涙目になりながら藤宮の方を見た。
痙攣すぎて、身体が痛い。

「……うん。筋肉痛になりそ」

私がボソっと呟くと、藤宮はフンといつものように鼻で笑った。
そしてポイッと投げるように電マを置いた。


「……ねえ。さっきのあの子お店のナンバーワンの子でしょ?」

「そーだけど。」

「……思い切り風紀じゃん」

「…ま、俺らもね」

そう言って、藤宮はベットから降りた。
テーブルにあったタバコに火をつけて吸い始める。

私に背を向けたまま藤宮は言った。

「……昨日、お前が酔っ払ってクロにベタベタしてて、そのままクロの家行ったって聞いて、すげえムカついた」

「は?」

「…だからお前にも教えてやろうかなと思って。他の奴とヤラれたらどんな気持ちになるのか」

「………え?…なに。なんなのそれ」

「何って?」

背を向けていた藤宮はベットに座る私に近づいてきた。

そっと私の頭を撫でて、頬に触れる。

「お前と俺は、奴隷とご主人様。…それ以外になんかある?」

フ、とバカにするように笑う。


「………」

「何、そのポカンとした顔。ドMならココはキュンとするとこだろ」

「…ドMなんかじゃないって」

「は?今更奴隷が何言ってんの?奴隷は奴隷らしく、感じて鳴いてればいい。

…俺の前だけで」


「…………」

依然と、私は藤宮をポカンとして見つめ続ける。


「何、なんか文句ある?」

「……いやなんか意外で」

「何が」

「人に執着しなさそうなアンタに、独占欲なんてあったんだなって」

「は?何?悪い?」

「……いや」

「噛むよ?」

私は咄嗟に後ずさりした。
その様子を見て、藤宮は楽しそうにハハッと笑う。
「今は噛まないって」と言いながら、タバコを吸う。

今は、って…。

すると腕を抑えながら、ふと思った。

私はいつのまにか当然のように脱がされているけれど…。


「…ねえ、なんで私の前では脱がないの?」

「ああ」

藤宮はフゥと、タバコの煙を吐いた。

「…脱ぐ前にいつもお前意識トばちゃうじゃん」

「え?…飛ばさないように加減してよ」

「ヤダね。お前のイキ狂ってる姿が何よりも見てて面白い」

「…見せもんじゃないっての」

私は、チッと舌打ちをして、ベットから降りた。

藤宮がフンと鼻で笑った後、こう言ってきた。

「まー、他の人の前ではどうだか知りませんけどー」

「…ねえ、誤解のないように言っとくけど。ほんとにクロとはなんもないから」

「へえー、どうだかね」

「クロとは7年も一緒にいる。今更男女の関係にはならない。」

「7年?」

「うん。7年前からこんな感じの仕事してるから。ま、クロに出会ったからこの店に私はいるんだけど」

そう言って、私はシャワールームへと向かう。

「ねえ。じゃあ五年前の事件、お前知ってる?」

「は?」

私は振り返って、少し驚いた。

いつもの飄々とした余裕そうな藤宮らしからぬ表情だったから。
どこか切羽詰まったような。

「五年前?…いや、クロと出会ったのは7年前だけど、2年間はフリーの娼婦やってて、私が正式にこの店に在籍したのが5年前くらいだから…。」

「…そう」

「何、事件って。どんな事件?」

「いや、知らないなら、いい」

藤宮はタバコを消して立ち上がると、いつのまにか消されていたテレビをまたつけた。

知らない女優の喘ぎ声がまた室内に響く。

五年前の事件、とは…
少し気になってしまうじゃないか。

藤宮は真剣な表情で、ジッとテレビを見つめている。

「……ねえ、AVなんて見て楽しい?」

「うん。次はお前にどんなプレイさせようかなーってゆう考える上での参考資料だから」

「何言ってんの、バカじゃない」

私はシャワールームへと入った。



熱いシャワーを頭から浴びながら、ふと考える。

…藤宮は、酔っ払ってクロにベタベタしていた私を見て、クロに嫉妬したとゆうことでいいのだろうか。

だから見せつけるためにあのナンバーワンの子とヤったと?

この解釈で合ってるのはよくわからないけれど、とりあえずまあいいか。

モヤッとする気持ちが少しだけ晴れた。
こんなことで先ほどまでの気持ちが変わるのだから、私も単純でチョロい奴だなと思う。


…それよりも事件、とは何のことなのだろう。

この蓮二さん率いるグループ内で、何か起きたのだろうか。

…五年前からあのバーにいるって言ってた紫音に聞いたら何かわかるかも。
まあ機会があったら紫音やクロにも聞いてみよう。

私はこの時は、そんな軽い気持ちでいた。

それよりも、あの藤宮が私に対して、独占欲を発揮したことに少しウカれていたから。
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