ドMなんかじゃない

みきてぃー。

文字の大きさ
上 下
24 / 58
4.抵抗と情動

11

しおりを挟む
「…なんか、今日のまーちゃん、やる気満々だったっしょ?」

午後9時過ぎ。
夜が更けてきて、歓楽街の染井吉野はまだまだこれから、とゆう時間帯。

ワイシャツを着ながら、蓮二さんがそんなことを言ってきた。

蓮二さんの左肩らへんにある刺青が目に入る。
もう見慣れてしまったけれど、その大きな花のような植物のような何の意味があるのかはよくわからない。


「そう?別に」

脱ぎ散らかした蓮二さんのジャケットとズボンを私が拾い上げて、シワを伸ばす。

蓮二さんは、夜が更けてきたこれからがお仕事なのだ。


あれからいいだけ苛め倒し、蓮二さんはもう一度欲を出した。
二回射精したおかげなのか、先ほどの疲れ切った蓮二さんではなく、スッキリとした顔つきの私たちの社長が出来上がった。


「んー、超よかった。今までももちろんよかったけど…なんかいつもと違ったんだよね。俺がしてほしいことや言ってほしいことをドンピシャで次々としてくれたって感じ?」

と言いながら、サンキュー、と言って蓮二さんは私からジャケットを受け取った。

「………まあね。私はドMの気持ちがわかるドSなのよ」

「…ほおほお、腕を上げましたね~さすがですっ!でも、それなんかで勉強したの?」

「…え?」

風俗嬢とゆう仕事も適当にこなして人気が出るわけない。

それなりの勉強と経験が必要なのだ。

うちの店では、ビギナー風俗嬢はみんなAVを見させられたり、先輩風俗嬢のプレイを教えこまれたり、いろいろと勉強させられる。
それが身になるかどうかは、この子次第なのだけれど。

「じゃあやっぱまーちゃんはただの天才っしょ」

「…こんな分野で天才って言われてもね」  

ジャケットをきっちり着こなした蓮二さんは、ふふ、と苦笑する。

「…まあ、でもSとMは表裏一体って言うもんね」

…聞こえてきたどこかで聞いたセリフ。

「ドMはドSになれるし、ドSはドMにもなれるって言うしね。…ってことは、まーちゃんもドMになれるわけだ」

「…なるわけないでしょ、このまひる様が」

フン、と鼻で笑ってやった。

「SとM、両刀ってことで売り込んでもいいんだよ?」

「…たった今に言ったこと、聞いてた?Mにはならないって言ってんの」

蓮二さんは、ネクタイを締めながら、ははっと笑っている。 

そんなことを強めに言っていても、実際は藤宮に翻弄される自分が脳裏によぎっている。

…仕事の時の私、藤宮の前での私、
どちらが本来の私の姿なのだろう。

人の優位に立つのは確かに好きだ。
男の惨めな姿も、懇願する姿も好きだ。

…Mの気持ちの勉強などしていない。

でも、今日は特に蓮二さんのしてほしいことが手に取るようにわかってしまった。苛められてる自分を無意識に想像できてしまっていたのだろうか。


「…ねえ、それより。さっきのって本気?冗談?」

スーツをバッチリ着こなした蓮二さんが、急にそんなことを言ってきた。

「ん?さっきの、って何?」

私はソファで一服しながら、聞き返した。

「顔も仕事も中途半端、って」
 
「ああ」

ふう、と煙を吐き出す。
プレイ中に言ったそんなことを気にしてきたのか。

「ん、本気。」

「えっ」

軽くショックを受けたように、こちらを見る。

「…何その顔。…あのね、そもそもそんな風に思ってたら、蓮二さんの所で働いてない」

「………だっよねえ、あーびっくりしたわ」

蓮二さんは、アハハッと調子よく笑う。

実際、蓮二さんの仕事っぷりに不満を抱いたことはない。
罵るために適当に言ったことだ。

「これからもうちの店をお願いします、まひる様~」

「はいはい」

私は適当に返事をして、ゆったりとタバコを吸う。

「…あ、でも、まーちゃん。その…身体に痕を残すのは、いただけないねえ。客にやられたの?」

「……」

私の頭の中は、この跡がどの客のせいとゆうことにするのが一番いいのか、と言い訳を考えるためにフル回転し始めた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

調教専門学校の奴隷…

ノノ
恋愛
調教師を育てるこの学校で、教材の奴隷として売られ、調教師訓練生徒に調教されていくお話

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

アクシデントで抱き合ってしまった

サドラ
大衆娯楽
僕(高井)はクラスの女子・真白さんに好意を抱いている。そんな彼女と居残りでたまたま教室で二人きりに!そこに大地震が起こり…

♡ちょっとエッチなアンソロジー〜舐める編〜♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショートの詰め合わせ♡

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

夫の浮気

廣瀬純一
大衆娯楽
浮気癖のある夫と妻の体が入れ替わる話

♡ちょっとエッチなアンソロジー〜合体編〜♡

x頭金x
恋愛
♡ちょっとHなショートショートつめ合わせ♡

処理中です...