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3.屈辱と快感
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翌日の出勤前、なんとなく私は紫音のバーへ寄った。早く準備が終わってしまって、なんとなく来てみたのだ。
昨日、藤宮のせいで飲めなかったせいで、気持ちが落ち着かず、バーに行かないとなんとなく気が済まなかった。
「…わ、びっくりした、ずいぶん早いね」
開店準備をしていた紫音は早い時間に現れた私に驚いている。
店内は私しかいない。開店前なので当然である。
「…なんか飲む?まーちゃん」
カウンターにいた紫音は開店前であるのにそう聞いてきた。
「うん、ちょうだい」
「あいよ」
そしていつも通りにビールが出てくる。
「ありがと。…ごめんね、開店前に」
「いやそれは全然いいけどさ。どうしたのさ、珍しいね」
「昨日飲めなかったから」
どうにかして藤宮から逃れるためにここ何日か必死だったのだ。
藤宮は私を見るたびに、何かを言いたそうにしていて、話しかけるチャンスを狙っている気がするが、私がヤツに話すことはない。
と、ゆうか話したくない。
「あーなんで途中で帰ったの?気づいたらいなかったし」
「眠くなっただけー」
「えー?まーちゃんが?今までそんな理由で帰った事あった?」
目を丸くして紫音がそう聞き返してくるが、私はビールを飲んで誤魔化した。
紫音は不思議そうな顔をしていたが、すぐにまた開店準備へと戻る。
「あ!ねー、聞いてよ。まーちゃん。この間とある女の子とヤったんだけどさ、」
と思ったら、何やら紫音が急に話し始めた。
「…え?うん」
「序盤からすんげえ反応いいなと思ってたんだけど、最後昇天して意識飛んじゃって。…何しても起きなくてビビってさ、どうしたらいいかわかんなくなって」
「ふ、ふうん。」
4日前の誰かさんと被ってる気がする。
「…紫音てそんなにセックスうまかったんだね」
「…はは、試してみる?」
「遠慮します」
紫音は、なんだよーと口を尖られる。
「…で?結局そのあとどうしたの?」
「心臓の音とか脈とか確認した」
「あはは、死んだと思ったの?」
「うん。まじで起きなかったからね。でも普通に音聞こえたから、安心したわ」
紫音がいつものようなくだらない話をしてくれる。
しかしこの話、なんだか身に覚えがありすぎて、うまく反応できない。
「…で、そのコいつ起きたの?」
「朝になっても起きなかったから、先に帰った」
「…ぶ!」
飲んでたビールを吐き出しそうになったのを堪えた。
「ちょっと、まーちゃん、大丈夫?」
「だ、大丈夫…」
大丈夫なんかじゃない。
あの時の私とまったく一緒じゃないか。
「ってか、まーちゃんはプライベートでセックスすんの?」
紫音が急にそんなことを聞いてきた。
「…は?しないわよ、面倒くさい」
「そうなの?…でも首筋にすんごい跡付けられてんじゃん?あれって彼氏じゃないの?」
「違う。これは彼氏じゃない。断じて違う!」
ムキになって言い返す私に、紫音は少々驚いたような顔をする。
「そんなムキにならなくても…」
「あれはちょっと非常識な客にやられたのよ。」
そう言い放ち、ビールを喉に流し込む。
酔いが回らないと、なんかもう、やってられないわ。
この首筋の跡はウォータープルーフのコンシーラーを塗りまくって誤魔化している。
しかし仕事上、風呂に入るのでいくら厚塗りしても落ちてしまうので、結局バレる。
まあお客様たちはみなさん賢くて紳士な大人の男性なので、助かっている。
「非常識ってか…でもすごい吸い方上手なキスマークだったよね」
「キスマークに上手いも下手もない!」
私はグビグビとビールを飲み干す。
「…あ~~」
「いつになくペース早いけど、大丈夫?これから仕事じゃないの?」
「大丈夫。もう一杯ちょうだい」
紫音は少しこちらを心配するように見つめたが、すぐにおかわりのビールを注いでくれた。
「仕事何時から?」
「18時。たぶんもう少ししたらクロ迎えにくる」
「え?18時ってあと30分じゃん。大丈夫?」
ビールを注ぐ手が止まる。
「うん。クロの馬鹿野郎がいつも迎えにくるの遅いからね。待ち合わせ時間にはいつも遅刻が基本」
「……もうバップだね」
「…バップどころじゃないわよ、ぶっ潰してやるわ。……キンタマも」
あはは、やっちゃえ~!と可愛い顔で少年のように笑う紫音。
紫音は今このバーにいる誰よりも、いい意味で普通っぽい。
いつも夜っぽくないフレッシュな大学生みたいな身なりだ。
この普通っぽい素朴な感じが逆に夜の女の子たちからは新鮮なのか、人気があるようだ。
他の風俗嬢やキャバクラのキャストは紫音狙いも結構多いと聞く。
その時、携帯が鳴ったので、見てみるとクロからのメッセージだった。
『17時30分にバーまで迎えに行こうとしたけど、ちょっと待っててね。俺のまーちゃん(ハートハート)』
…何が俺のまーちゃんハートハートだ。
時間ジャストで来ねーくせに。
ちょっと待って、のちょっととはどのくらいの時間なのか。
はあ~と私はため息をつく。
このような空き時間に、先日のこと思い出してしまう。
…私は、あれからあの日のコトを時々思い出してしまう。
だれかに自分の全てを託して、自分の身体全てを預けるとゆうことは、あんなにも怖くて、異常で、それでいてあんなにも快感なことだなんて、知らなかった。
…もうあんな自分は嫌だ。
あの動画や蓮二さんの件がどうなったのか知らないけど、とりあえずネットには上げられてないし、蓮二さんのことも口外してないようだ。
負けたら奴隷になる宣言までしまった私は何を言われるのか怖すぎて、あれからずっと藤宮を避け続けている。
昨日、藤宮のせいで飲めなかったせいで、気持ちが落ち着かず、バーに行かないとなんとなく気が済まなかった。
「…わ、びっくりした、ずいぶん早いね」
開店準備をしていた紫音は早い時間に現れた私に驚いている。
店内は私しかいない。開店前なので当然である。
「…なんか飲む?まーちゃん」
カウンターにいた紫音は開店前であるのにそう聞いてきた。
「うん、ちょうだい」
「あいよ」
そしていつも通りにビールが出てくる。
「ありがと。…ごめんね、開店前に」
「いやそれは全然いいけどさ。どうしたのさ、珍しいね」
「昨日飲めなかったから」
どうにかして藤宮から逃れるためにここ何日か必死だったのだ。
藤宮は私を見るたびに、何かを言いたそうにしていて、話しかけるチャンスを狙っている気がするが、私がヤツに話すことはない。
と、ゆうか話したくない。
「あーなんで途中で帰ったの?気づいたらいなかったし」
「眠くなっただけー」
「えー?まーちゃんが?今までそんな理由で帰った事あった?」
目を丸くして紫音がそう聞き返してくるが、私はビールを飲んで誤魔化した。
紫音は不思議そうな顔をしていたが、すぐにまた開店準備へと戻る。
「あ!ねー、聞いてよ。まーちゃん。この間とある女の子とヤったんだけどさ、」
と思ったら、何やら紫音が急に話し始めた。
「…え?うん」
「序盤からすんげえ反応いいなと思ってたんだけど、最後昇天して意識飛んじゃって。…何しても起きなくてビビってさ、どうしたらいいかわかんなくなって」
「ふ、ふうん。」
4日前の誰かさんと被ってる気がする。
「…紫音てそんなにセックスうまかったんだね」
「…はは、試してみる?」
「遠慮します」
紫音は、なんだよーと口を尖られる。
「…で?結局そのあとどうしたの?」
「心臓の音とか脈とか確認した」
「あはは、死んだと思ったの?」
「うん。まじで起きなかったからね。でも普通に音聞こえたから、安心したわ」
紫音がいつものようなくだらない話をしてくれる。
しかしこの話、なんだか身に覚えがありすぎて、うまく反応できない。
「…で、そのコいつ起きたの?」
「朝になっても起きなかったから、先に帰った」
「…ぶ!」
飲んでたビールを吐き出しそうになったのを堪えた。
「ちょっと、まーちゃん、大丈夫?」
「だ、大丈夫…」
大丈夫なんかじゃない。
あの時の私とまったく一緒じゃないか。
「ってか、まーちゃんはプライベートでセックスすんの?」
紫音が急にそんなことを聞いてきた。
「…は?しないわよ、面倒くさい」
「そうなの?…でも首筋にすんごい跡付けられてんじゃん?あれって彼氏じゃないの?」
「違う。これは彼氏じゃない。断じて違う!」
ムキになって言い返す私に、紫音は少々驚いたような顔をする。
「そんなムキにならなくても…」
「あれはちょっと非常識な客にやられたのよ。」
そう言い放ち、ビールを喉に流し込む。
酔いが回らないと、なんかもう、やってられないわ。
この首筋の跡はウォータープルーフのコンシーラーを塗りまくって誤魔化している。
しかし仕事上、風呂に入るのでいくら厚塗りしても落ちてしまうので、結局バレる。
まあお客様たちはみなさん賢くて紳士な大人の男性なので、助かっている。
「非常識ってか…でもすごい吸い方上手なキスマークだったよね」
「キスマークに上手いも下手もない!」
私はグビグビとビールを飲み干す。
「…あ~~」
「いつになくペース早いけど、大丈夫?これから仕事じゃないの?」
「大丈夫。もう一杯ちょうだい」
紫音は少しこちらを心配するように見つめたが、すぐにおかわりのビールを注いでくれた。
「仕事何時から?」
「18時。たぶんもう少ししたらクロ迎えにくる」
「え?18時ってあと30分じゃん。大丈夫?」
ビールを注ぐ手が止まる。
「うん。クロの馬鹿野郎がいつも迎えにくるの遅いからね。待ち合わせ時間にはいつも遅刻が基本」
「……もうバップだね」
「…バップどころじゃないわよ、ぶっ潰してやるわ。……キンタマも」
あはは、やっちゃえ~!と可愛い顔で少年のように笑う紫音。
紫音は今このバーにいる誰よりも、いい意味で普通っぽい。
いつも夜っぽくないフレッシュな大学生みたいな身なりだ。
この普通っぽい素朴な感じが逆に夜の女の子たちからは新鮮なのか、人気があるようだ。
他の風俗嬢やキャバクラのキャストは紫音狙いも結構多いと聞く。
その時、携帯が鳴ったので、見てみるとクロからのメッセージだった。
『17時30分にバーまで迎えに行こうとしたけど、ちょっと待っててね。俺のまーちゃん(ハートハート)』
…何が俺のまーちゃんハートハートだ。
時間ジャストで来ねーくせに。
ちょっと待って、のちょっととはどのくらいの時間なのか。
はあ~と私はため息をつく。
このような空き時間に、先日のこと思い出してしまう。
…私は、あれからあの日のコトを時々思い出してしまう。
だれかに自分の全てを託して、自分の身体全てを預けるとゆうことは、あんなにも怖くて、異常で、それでいてあんなにも快感なことだなんて、知らなかった。
…もうあんな自分は嫌だ。
あの動画や蓮二さんの件がどうなったのか知らないけど、とりあえずネットには上げられてないし、蓮二さんのことも口外してないようだ。
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