上 下
209 / 273

粘膜EL.DORADO 11.

しおりを挟む
 それからこれは流動砂式焼却銃、サンドストーム13っちゅうやつや。13はワシのおった十三にちなんで……それはどうでもええわい。こいつは補給が途絶えてもタマ切れに悩まされんと戦えるように造ったんや。中身は砂。どこにでもある砂でエエんよ。そいつをタンクに充填したら……ノズル内部のコイルで超高温にして吹き付ける。すると、赤熱した砂にまかれた相手は一瞬で完全燃焼させる……主に虫系のバイオテクノロイドに使ったな。普通の銃や火炎放射器じゃ的は小さいし焼かれへん。せやけど、コレやったら半径数メートルは一網打尽や。
 
「前に、マノがオタロで使った技に似てるね」
「ああ。アレか」
「歩く超兵器やな、ブラウンが一目置くだけのことはあるわナ」

 その後もポンバシ博士ことドクトル・アマリージョによる自身が発明した超兵器の紹介が続いたが、中にはイチゴ味のグルメな豆腐が無限に錬成されるマシンや、雲を固めてちょっとした塊にするガス、ゼンマイ仕掛けでまるで生きているかのように動き回る木彫りのネズミなど、よくわからないものも沢山あった。

「とにかく、アンタと知事が竹馬の友だというのはよくわかった。それで、租界であるココと知事の名前が同じなのは……どういうわけだ?」
「それは、モチャモチャ……これもまあモッチャ話せば、長いんや」
「ポンバシ博士が余計なものまで説明してるからでしょ。もうっ、イチゴとうふ食べてる場合じゃないわよ!」
「モッチャモッチャなかなかオツなモンやけどなあ。売れへんかってんやなー」
「まあまあ、おいおい聞いて行けばいいじゃないか」
 サンガネがそう言って、一先ずこの場を収めようとしたその時。

「ごめんくださーーい」
「あら、お客さんね?」
「ほんまや。ほな商売、商売」
 歌うようにしてアマリージョ博士がトントンと階段を下りてゆく。
 ボクとサンガネは部屋に残って、引き続き思案を巡らせていた。あぶくちゃんはコーヒーとクッキーの後始末をしてオカモチを持ち上げると、またお店に戻ると言って階段を降りて行った。

「つまるところ、向こうが手出しをしなきゃコッチも攻めようがねえってわけだな」
「そういうことになるね。何しろコチラから攻撃しようものなら、まんまと文化粛清の口実を与えることになる」
「文化粛清か、くだらんな」
「そうだね。くだらない……くだらないことぐらいにしか、躍起になれない奴等なのさ」

 O.C.P、つまりオーサカシティプレジデントは旧市政で言うところの市長のポジションだが、それよりもさらに権限を強く持ち、それを議会のみならず市民に働きかけることが出来る。常に活発な議論を行い、オーサカの健全かつ躍進的な発展を願う善良な市民に対し、O.C.P自らの意志で強く願うことにより市民の理解と協力を求める。というものだ。

「早い話が脅迫さ」
「議論だの躍進だの健全だの言ってりゃ、暗に脅してると言ってるようなもんだ」
「実際、議論どころか彼の意見に口を挟んだり、ちょっと言い直したりするだけでも大変なことになるみたいだね。だからみんな戦々恐々、言いたいことも言えずに、どうにか本音を悟られまいとビクビクしてるって話さ」
「ヤダねえインテリどもの腹の探り合いは。腹を探られるならカワイ子ちゃんがいいや。腹の下がいいな。なあサンガネ」
「ボクは遠慮しておくよ」

「それにしても、おーしーぴー、ってか……フン。どういう奴なんだか」
「こういう奴さ」
 ボクは手に持った端末の液晶画面にニュース映像を映してマノに見せた。

「このォ、オーサカの街もォ、グローバリゼーションの渦中にあってェ、包括的なァ抜本的構造改革におけるゥ、第二次消費者生活向上計画推進委員会の開催をもちましてェ」
 なんだかよくわからない横文字と造語を、マイクを引っ掴み真っ赤にした顔で得意になって並べ立て捲し立てている背広姿の男が映し出された。
「噂のおーしーぴー様だよ」
「ほぅ、随分と若く見えるがこりゃ実物はだいぶ老けてるな」
「映像を見ただけでわかるのかい?」
「顔と手首の皺の数が合わねえや」

「我々ェ、オーサカ一心会にとって今度のォ、オーサカ自由民主大選挙は世紀の決戦でありィ、皆様のォ、御支持の元ォ、今日までオーサカの繁栄と進歩の為ニィ……」
「え、選挙なんかすんの?」
「まあカタチだけはね」
「市長がハリボテなら選挙も茶番か」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性転換ウイルス

廣瀬純一
SF
感染すると性転換するウイルスの話

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

古代日本文学ゼミナール  

morituna
SF
 与謝郡伊根町の宇良島神社に着くと、筒川嶼子(つつかわのしまこ)が、海中の嶋の高殿から帰る際に、 龜比賣(かめひめ)からもらったとされる玉手箱を、住職が見せてくれた。  住職は、『玉手箱に触るのは、駄目ですが、写真や動画は、自由に撮って下さい』 と言った。  俺は、1眼レフカメラのレンズをマクロレンズに取り替え、フラッシュを作動させて、玉手箱の外側および内部を、至近距離で撮影した。   すると、突然、玉手箱の内部から白い煙が立ち上り、俺の顔に掛かった。  白い煙を吸って、俺は、気を失った。

性転換タイムマシーン

廣瀬純一
SF
バグで性転換してしまうタイムマシーンの話

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

処理中です...