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蛇と蠍

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2024年9月14日。
約1年ぶりに浜松市は鴨江の
鴨江ヴンダーカンマー
さんにお邪魔してきました。

全国各地から集めた曰く付きの品々や珍しいものを見るために、
全国各地から集まる隠れた人気スポット。
私も初めてお邪魔して以来、また見に行きたくって。でも転職やら出版でズルズル先延ばしに…。

で土曜の昼前。
いつものようにジム行って筋トレして、あと半日どうしようか。
三連休の初日。ドコ行ったってマナー悪いクルマとバイクで気分悪いし(愛知県ってそーゆーとこ)、かといってこのままいつも通りスーパーで昼飯買って帰って食って終わりじゃあ、あまりに寂しい。
そうだ、鴨江さんに行こう!

この数日前から新しいスタッフさんが加わっていて。
蛇蝎(だかつ)さんという方で、なんとも面白そうな別嬪さんだった。
よく館長の写真にも写っているし、ご自身のスタッフ用アカウントも作られていて。そこに書いてあった占いの案内も信用できるなあ、という感じで…。

占い師さんを信用するってアブナく思う向きもあるかも知れないけど、そもそも蛇蝎さん自身の心霊や神仏に対するスタンスが明瞭で、神秘性を謳うより気楽で簡単なイメージを持って臨んでいるところがまずよくて。
あと「演出のため」にお香を焚いたりヴェールをかぶったりしていると明言しているのもいい。なんやらの効果があるだの、ナントカのためだの言ってやらないって、逆に度胸が座ってるとかアタマが飛んでるとかじゃないと出来ないよ。
もっともらしい理由のない行動こそ、その人の持っている勇気や無邪気が出るものだと思う…で、その被った神秘的な白いヴェールも
「やってみたら全く前が見えず、占いに支障をきたすのでやめた」
とアッサリ撤去している。な、そんな奴おもしろいに決まってるだろ。

で是非お会いしたいなと。
長いなあ、ここまで前置き。ほんとに作家かコイツ?

私が通っているジム…といっても市の施設で、焼却処分場の余熱利用施設でもあって。
プールや銭湯もあって、ついでに併設されたトレーニングルーム。
でもここで十分。だってもう誰とも戦わないし…。
メキシコの、あのウルティモ・ドラゴン校長のジムにいたんだから、その時そんぐらいやってりゃどれだけ良かったかと思うこともあるけど、この1回400円の月額なしというのがまた良くて。面倒くさい物販や勧誘、なんなら横にくっついてあれこれ言ってもらうこともない。
空いてるマシンで好きに鍛えて、ぱっと帰る。これがいいんだ。
私ゃ(ちょっと重たいなー)ぐらいのをガツッとやって、すぐ帰りたいの。
他人のペースでダラダラすんのキライなの。

で、その施設が国道23号線のバイパス沿いにあるので、そっから一路浜松目指して走る。
1時間もかからないくらいかな。
土曜日で混んでるかと思ったけど、別にそうでもなくって。
快晴の太平洋を潮見坂から望みつつ、DreamTheaterを聞きながら。

あれ、まだ着いてなかったの!?
前置きっていいながら…中置きってことにならねえかな。ならねえか。

浜名湖大橋を渡り、左手に弁天島。右手は果てしなく海。
でっかい堤防が出来ているけど、あの辺りは今切といって平安時代の大地震で湖だった浜名湖がバッコリ崩れて汽水湖になったところ。
さあ果たして、あの堤防がどれだけ助けになるか。ほんとは文字通りの無用の長物であってほしいんだけどね。
で篠原でバイパスを降りて、257号線から県道62号線へ。
そっから東に向かって、オルガン坂を登って左手に。
カーブと信号の先に鴨江観音の大きな門が見えてきたら、その対面にある開発ビルという建物が、鴨江ヴンダーカンマーさんである。
ああ、やっと着いた。3000文字も何を書いていたんだろう私は。

駐車場は縦列駐車だけど、今のところ隣のレーンは空きになっているので出し入れにさほどの苦労は無いかと。
インターホンを押すと一年ぶりの館長さんの声。
挨拶もそこそこに2階へ上がらせて頂く。ちょうど妖怪の展示が終わったのだが、先だっての台風で帰宅難民(妖怪なのに!?)となっているためまだ置いてあるのだという。
それを見せていただこうという矢先、蛇蝎さん登場。
黒いゴシックなワンピースに青空が映るほどという漆黒の頭髪。前髪はぱつんと揃えている。白い肌、相貌にチカラをもたせたメイクアップ。
だけど喋ると素っ頓狂でカラカラ笑う快活さ。

完璧だ。

この人いったいどんなふうに生きて「こうなった」のだろう。この先、どうなっていくのだろう。思った以上に、想像の斜め上どころか四次元のベクトルで上に向かって飛び越す魅力と魅惑。2秒で来てよかったと思った。
自分の浅めにとったスタンス、楽しめるように楽しむ姿勢を崩さず、でも深みにハマったことも恥じないで居る。少なくともこの建物の中では、彼女にもそういうマジナイがかかっている気がする。ここ(彼女の居場所)から連れ出したら砂になってあぶくになって風に乗って消えてしまいそうな人でもある。

妖怪を見せて頂き、河童のおどろおどろしさにおののき、ぬっへっほを眺めたりしました。前回お邪魔した際には三浦悦子さんのお人形があって、それも恐ろしくも可愛らしかったけれど、今回の妖怪たちも不気味でグロテスクで可愛かった。
恐怖や畏れのなかには、何かしらの可愛げが免罪符のように塗り込まれているような気がする。それは送り出す方も、受け止める方も、同じ人間が脳で作って心で感じている感覚だからなのか。

怖い話を考えて作って読んでもらっている私にも、それは言えると思って。
単に怖い話をしようと思えば、どこまでも無駄のない怖さを伝えていけばいい。
でもそれじゃ芸が無いから、私は私なりの怖さを運ぶ人たちを作り出した。
よもやタクシーに乗って来るとは思ってなかったけど、書いてるほうがそうなんだから、読んでくださった方にも色んな感じ方をしていただきたいと願っています。

2階の受付横で占いブースを広げている蛇蝎さん。
さっそく占って頂くことに。
メニュー表を見ると色んな方法で色んな事柄を見てもらえるらしい。
手元にはキレイに付けたノートのメモと、カードに付属している解説書。
「解説書を読みながらやりまーす!」
と明朗に宣言。信じ込ませてハマらせようとするのじゃなく、遊びでこじつけてみれば意外と当てはまることもあるかもよ?ヒントがあれば儲けじゃん、という感じ。
私もそれぐらいでいいと思うし、身近な遊びの延長にマジナイとかジンクスがあって、なんとなく気にしたらいいんじゃないかなーと思う。でも、当たってるジンクスも今まで幾つもあったので、それはまた今度お話してみたいと思っている。
ちなみに占いの結果は如何にというと、これが結構当たっている。ズバリ言い当てられると言うよりは、カードの意味と自分の置かれた状況が符合するように解釈出来る場合が多かった。
そう考えると、気をつけるべきことや、この先に待っているであろうことへの備えも満更デタラメでもないと思うし、コレを踏まえて蛇蝎さんとアレコレ話すのが楽しかった。

そのままお話していると、浜松市内の高校生が取材に来るという。
放送部の子たちで、ドキュメンタリーを撮影してコンクールに出すのだとか。
ココを!?
たしかに地元の施設ではあるが、よく見つけて選んだなあ、目端の利く人たちだなあ。
と思っていると早速やって来た。
育ちの良さそうなお嬢さんふたりだ。
ネクラな男子生徒かと思いきや、一見おとなしくて礼儀正しいし一生懸命やっているいい子たちだ。が、話してみると流石ここを選ぶだけあっていい趣味をしている。
見知らぬ丸っこいオヤジがいても気にせず、なんなら館長さんが
「この人は小説家だよ」
と紹介してくださり、この丸っこいのも小説家として取材して頂いた。
小説家として何らかの取材をしてくださったのは、彼女たちが最初だった。
いやはや光栄でありました…。

そこに元スタッフさんや、遠方から全日本プロレスを見るためにやって来たお客さん、果ては生徒さんのうちひとりRちゃんのお母様までやって来くる盛況ぶり。
聞けばお母様、ずっとここが気になっていたとかで娘の取材に合わせて参上したそうな。興味津々で館長の案内を聞いていらしたり、私のこともまたまたご紹介に与りまして、自分の本のこともお伝えしつつ今日びは書籍、Kindleなどの電子版以外に、音声で読み上げてくれるものもあってそれが重宝しているという話も伺った。

確かにそれなら聞きながら家事や散歩も出来るしなあ。二宮金次郎さんみたいにならないで済む。
なるほどなあ、と思っているとRちゃんが二階に居る木馬(下半身が馬でヘソから上が人間という代物)を甚く気に入ってしまい、しまいに「レイラ」と名前までつけてずっとヘップバーンスタイルで座っていた。ほんとはもっと長い名前だったのだが、覚えきれなかった…。というわけで館長さん、あの子は「レイラ」だそうです。
またそれを笑顔で当たり前のように聞きつつ
「一瞬でそんな名前が出るなんてすごいね!」
と友達を褒めるもうひとりの生徒さんことFちゃんも流石は類友というか、ちんまりしておとなしい子なのだが、いちばん宇宙の真理に近そうなのは彼女だった気がする。
Rちゃんは教養と活発な性格もあってわりとわかりやすく明るい、育ちのいい女の子。
質実剛健。
Fちゃんも真面目で真っ直ぐな子なのだが、天然というか無意識の深度が高いというか。
泰然自若。
Rちゃんはコバルトブルーの美しい湖。
Fちゃんは限りなく透明に近い井戸、って感じだった。
ふたりとも平和に愛情たっぷりに過ごして育ってほしいぞ。
丸っこいオヤジとしては…。

取材も終わり、みんなで裏手にある邸宅跡のサロンに移動して座談会。
このヴンダーカンマーさんと別宅サロンの建物が出来たあらまし、そして鴨江の街の変貌の様子など、今回も館長の貴重なお話が炸裂した。
基本的には蛇蝎さんと生徒さんで話すことが多いけど、館長が生徒さんズと蛇蝎さんのお話を補完したり、何か答えたり、さらにはお母様や私ともジェネレーションギャップを埋めたりと楽しい時間でした。
何しろ高校生、重大なカバ、いや十代半ば(いま予測変換の一発目がコレだったんだ。日頃どんな文章を打ってたらこんな変換が出るんだ)ということは38歳の私でも半分。
館長が五十代、お母様はもっと若くて私よりはお姉さん。
まさにMOTHER2の主題歌「SMILES and TEARS」の
おとなたーちのはんぶんもー
いきてはーいないーけれどー
である。やくしまるえつこさんのバージョンが可愛くてなあ。

あんな可愛いのに私と同年代なんだよな。
わたしは人類のライブ盤の〆の「おやすみっ」なんかお前、卒倒するぐらい可愛いぞ。
ロンリープラネットも好き。

そうこうしているうちにRちゃんが塾のお時間になったので、今回はお開きに。
なんか奇跡的なタイミングで其の場に居合わせることが出来て、とても楽しかった。
この日の来客全員を占った蛇蝎ちゃんも、これから塾に行くRちゃんも少々お疲れの様子。
聞けば朝から体育祭のリハーサルか何かがあったとかで、もう12時間近くぶっ通しで活動していることになる。そりゃ高校生でも疲れるよな。
わかりやすく疲れちゃってたところも子供っぽくて可愛いRちゃんだったけど、Fちゃんも機材持って撮影してだったし表に出にくいだけでちょっと疲れてたんじゃないだろうか。気づかなくってごめんよ。

帰り際、外に出ると小雨の跡があった。
見送る館長さんと蛇蝎さん。車に乗り込んでいくお母様とRちゃんFちゃん。
雨上がりの薄闇と周囲の明かりで浮かぶそんなシルエットが、
この日に見たいちばんの芸術、
生きてるアートだったかもしれない。

そんな事を考えていると、中田島のあたりでもの凄いスコールに遭った。
結局、豊橋に帰るまで豪雨に見舞われ、なんとなく入った技科大のそばのミニストップの駐車場で「オルガン坂のぼって」という作品をまとめていた。

見本誌をお届けしたいので、近々またお邪魔します。
いつもありがとうございます。

皆様も静岡、浜松に観光の際は是非。
私をフォローしてくださっている方ならきっと楽しめるはずです。

鴨江ヴンダーカンマー
432-8023 浜松市中央区鴨江4丁目1-14
開発ビル2階
https://www.instagram.com/KAMOE_WUNDER/
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