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その男、輝さん。
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写真がnoteに貼れないので、ツイッターでも見ておくんなまし。
拙作、怪奇話集 タクシー運転手のヨシダさん。の、登場人物のモデル。カズヤくんは、作者であるこの私。170センチ100キロの小型戦車。格闘技の経験があって、豊橋市出身で怒ると三河弁が出る。たぶん実際の私より、このカズヤくんのがいいやつだし、強い。二十代前半の自分をモデルにしているから、今になって書いているともう別人みたいな部分もある。ドラえもんはずーっと変わらないけど、大山のぶ代さんが年輪を重ねていくにつれて老成していったようなもん。かもしれない。
じゃあ、ヨシダさんには誰かモデルがいるのか。という話。
書き始めた当初は、岩城滉一さんだった。かっこいいじゃん。そこから少しずつ変わっていった。見た目のイメージも、声も、色々と足したり混ぜたりしたものになる。大塚明夫さん(ソリッド・スネーク)とか、吉井和哉さんとか、背が高くて喧嘩が強くて不健康で不健全な美形のオジサンが多い。吉井和哉さんは柔道の有段者だ。
書いていくにつれて、育ち、性格、感情、言語感覚なんかが肉付けされていく。それは書いている私の中にあるもので、彼個人のパーソナリティでは無いのかもしれない。けど、よく言うように「キャラが動く」という感覚もあって、自分で書いたものをあとから読み返すと、もうそれはヨシダさんの行動を後から文章化したような感じになる。こともある。
で、そのヨシダさんの動きを見ると似ているなあと思う人がいる。それが佐藤輝之さん(以下、輝さん)。私キッドこと佐野和哉くんのお父さんである。
名字が違うのは、実の父親では無いからだ。死ぬまで内縁関係だったので佐藤姓のままだった。何処から話したらいいものか。詳しく、ひとつひとつ書くとなると大変だしとてもじゃないが笑える話ではないので、ざっくり言うと…。我が家は私が小学校2年のときに離婚してムコヨーシだった奴は出ていって、私は生まれ育った母方の実家に残った。数年後そこに輝さんがやって来た。
まあこの出ていったムコヨーシというのが、ガタイはデカいが人間的には何一つ尊敬できるところのない〝聳え立つクソ〟だった。で、出ていってからも親権がどうした、土日だけは子供を泊まりに来させろ、とグズグズ未練たらしくして我々を振り回し苦しめ、虐げ続けてきた。
幾らガタイがよくてそこそこ喧嘩慣れもしているとはいえ、小学生のガキでは大の大人の相手にならない。私は来る日も来る日もボコボコにされ、引きずり回されていた。家の中だけじゃない。奴がアタマにさえ来たなら場所なんか何処だって関係なかった。市民プール、ジャスコのお魚コーナー、団地の廊下、ドラッグストアの駐車場、どこぞの道端。家庭内暴力の大会があったら上位入賞間違いなし。家庭外暴力も絶好調。そういう奴だから離婚からの追放という目に遭ったのに、それを逆恨みするばかりか自分の権利だけは主張し、結果として私は多感な時期の貴重な月日をずいぶんと浪費し、犠牲にしてきた。
何度も死ぬかもしれないと思った。テニスのラケットでアタマをガッツンガッツンいかれているとき、ふと痛みを感じなくなって。殴られている衝撃、熱や音は感じるのだが、それ以上に猛烈な眠気に苛まれていた。でも、ここで寝たりなんかした日にゃそれこそ何をされるかわかったもんじゃない。そんな理由で一生懸命、眠気を堪えていたのだが、今にして思えばあれで寝てたら死ぬか、良くてもなにか遺っただろうなと思う。その後も、あのテニスラケットのときに死んでやっておけば良かったと思うことが次々に起こった。
数年後そこに輝さんがやって来た。離婚しても尚やまぬDVを断ち切り、私や母を助けてくれた輝さんではあったが、一方で酒と女性とお金にはだらしなく、まあまあのトラブルを抱えていた。当時、経営していたバーが潰れて百万単位の負債があったうえ家賃も払えず家もなかった。母が輝さんと知り合ったのはそんな時期で、我が家が彼を受け入れるときに借金も肩代わりしてあげていた。
書いた順番が悪くて(でも書き直さない)わかりにくいかもしれないけど虐待離婚虐待輝さん虐待開放の順番である。手助けをしてくれたから借金を肩代わりしたわけではない。恋愛と金銭は完全に母の一存で、私が救われたのはその副産物だ。
店は潰し家はなくなり借金だけが残ったダメ男が我が家に転がり込んできた。それも事前の相談や通告さえも一切ナシに。これはこれで結構モンダイだなあと思わんこともないけど、結果としてそれで私は救われたし、今もって輝さんには感謝している。それほど、あのバカの人間的な資質が畜生とどっこいだったとも言える。
この愛すべきダメ男の背中を見つめて育った私のなかに、輝さんの話し方や酒の飲み方、酔っ払ったときの印象なんかが強く残っていたのだろう。私自身は殆ど酒を飲まず、タバコも吸わない。にもかかわらず、その作品には呑兵衛のヘビースモーカーが出てくる。お酒といえば、ヨシダさんたちがプカプカで飲んでいる時の描写で不自然なものや、使い方を間違っている用語が幾つも出てきた。如何に私が普段お酒に縁遠いかがよくわかる。
輝さんは元料理人でバーテン、そのさらに前はテキヤさんだったので、お料理と喧嘩は抜群だった。水泳の選手だったからか身を持ち崩しても痩せマッチョ体型は維持していた。
背が高く痩せマッチョで不健康ながらっぱちの男前、というフォーマットは、この人を見て育つことで出来上がっていったものだったのかもしれない。他にも俳優さんやアニメ、マンガ、ゲームなどのキャラクターに影響された部分もあるだろうし、自覚しているものもある。
けど、このヨシダさんという人を錬成するのに結構な割合で用いたエレメントが、私の親父であるところの輝さんだった。
結局、輝さんはお酒で体を壊し、それでも酒がやめられず我が家を去った。隔離病棟で治療し、アルコール依存症と糖尿病と戦いながら、実家に戻って働いていた。だけど仕事中に出先で倒れ、そこからは早かった。もともとぼろぼろだった内臓が、ついに壊れてしまっていたのだ。
酒代が丸ごと浮いたから、と、ずっと欲しがっていたハーレーダビッドソンを買って我が家に乗り付けたところを写真に撮ったこともあった。でも、それに乗ってとうとう遥か遠くまで行ってしまった。
最後の数年間は穏やかで、楽しく過ごしていたようだった。私も悩んだり迷ったりした時、輝さんに相談することもあった。
この本を見せてあげられなかったのは残念だ。だけど、ご覧くださった皆さんがヨシダさんという人を覚えていてくれる限り、そこに私の亡き父も生き続けていられる。
実は、ちょっと、そんなことも込められていたりするのです。
拙作、怪奇話集 タクシー運転手のヨシダさん。の、登場人物のモデル。カズヤくんは、作者であるこの私。170センチ100キロの小型戦車。格闘技の経験があって、豊橋市出身で怒ると三河弁が出る。たぶん実際の私より、このカズヤくんのがいいやつだし、強い。二十代前半の自分をモデルにしているから、今になって書いているともう別人みたいな部分もある。ドラえもんはずーっと変わらないけど、大山のぶ代さんが年輪を重ねていくにつれて老成していったようなもん。かもしれない。
じゃあ、ヨシダさんには誰かモデルがいるのか。という話。
書き始めた当初は、岩城滉一さんだった。かっこいいじゃん。そこから少しずつ変わっていった。見た目のイメージも、声も、色々と足したり混ぜたりしたものになる。大塚明夫さん(ソリッド・スネーク)とか、吉井和哉さんとか、背が高くて喧嘩が強くて不健康で不健全な美形のオジサンが多い。吉井和哉さんは柔道の有段者だ。
書いていくにつれて、育ち、性格、感情、言語感覚なんかが肉付けされていく。それは書いている私の中にあるもので、彼個人のパーソナリティでは無いのかもしれない。けど、よく言うように「キャラが動く」という感覚もあって、自分で書いたものをあとから読み返すと、もうそれはヨシダさんの行動を後から文章化したような感じになる。こともある。
で、そのヨシダさんの動きを見ると似ているなあと思う人がいる。それが佐藤輝之さん(以下、輝さん)。私キッドこと佐野和哉くんのお父さんである。
名字が違うのは、実の父親では無いからだ。死ぬまで内縁関係だったので佐藤姓のままだった。何処から話したらいいものか。詳しく、ひとつひとつ書くとなると大変だしとてもじゃないが笑える話ではないので、ざっくり言うと…。我が家は私が小学校2年のときに離婚してムコヨーシだった奴は出ていって、私は生まれ育った母方の実家に残った。数年後そこに輝さんがやって来た。
まあこの出ていったムコヨーシというのが、ガタイはデカいが人間的には何一つ尊敬できるところのない〝聳え立つクソ〟だった。で、出ていってからも親権がどうした、土日だけは子供を泊まりに来させろ、とグズグズ未練たらしくして我々を振り回し苦しめ、虐げ続けてきた。
幾らガタイがよくてそこそこ喧嘩慣れもしているとはいえ、小学生のガキでは大の大人の相手にならない。私は来る日も来る日もボコボコにされ、引きずり回されていた。家の中だけじゃない。奴がアタマにさえ来たなら場所なんか何処だって関係なかった。市民プール、ジャスコのお魚コーナー、団地の廊下、ドラッグストアの駐車場、どこぞの道端。家庭内暴力の大会があったら上位入賞間違いなし。家庭外暴力も絶好調。そういう奴だから離婚からの追放という目に遭ったのに、それを逆恨みするばかりか自分の権利だけは主張し、結果として私は多感な時期の貴重な月日をずいぶんと浪費し、犠牲にしてきた。
何度も死ぬかもしれないと思った。テニスのラケットでアタマをガッツンガッツンいかれているとき、ふと痛みを感じなくなって。殴られている衝撃、熱や音は感じるのだが、それ以上に猛烈な眠気に苛まれていた。でも、ここで寝たりなんかした日にゃそれこそ何をされるかわかったもんじゃない。そんな理由で一生懸命、眠気を堪えていたのだが、今にして思えばあれで寝てたら死ぬか、良くてもなにか遺っただろうなと思う。その後も、あのテニスラケットのときに死んでやっておけば良かったと思うことが次々に起こった。
数年後そこに輝さんがやって来た。離婚しても尚やまぬDVを断ち切り、私や母を助けてくれた輝さんではあったが、一方で酒と女性とお金にはだらしなく、まあまあのトラブルを抱えていた。当時、経営していたバーが潰れて百万単位の負債があったうえ家賃も払えず家もなかった。母が輝さんと知り合ったのはそんな時期で、我が家が彼を受け入れるときに借金も肩代わりしてあげていた。
書いた順番が悪くて(でも書き直さない)わかりにくいかもしれないけど虐待離婚虐待輝さん虐待開放の順番である。手助けをしてくれたから借金を肩代わりしたわけではない。恋愛と金銭は完全に母の一存で、私が救われたのはその副産物だ。
店は潰し家はなくなり借金だけが残ったダメ男が我が家に転がり込んできた。それも事前の相談や通告さえも一切ナシに。これはこれで結構モンダイだなあと思わんこともないけど、結果としてそれで私は救われたし、今もって輝さんには感謝している。それほど、あのバカの人間的な資質が畜生とどっこいだったとも言える。
この愛すべきダメ男の背中を見つめて育った私のなかに、輝さんの話し方や酒の飲み方、酔っ払ったときの印象なんかが強く残っていたのだろう。私自身は殆ど酒を飲まず、タバコも吸わない。にもかかわらず、その作品には呑兵衛のヘビースモーカーが出てくる。お酒といえば、ヨシダさんたちがプカプカで飲んでいる時の描写で不自然なものや、使い方を間違っている用語が幾つも出てきた。如何に私が普段お酒に縁遠いかがよくわかる。
輝さんは元料理人でバーテン、そのさらに前はテキヤさんだったので、お料理と喧嘩は抜群だった。水泳の選手だったからか身を持ち崩しても痩せマッチョ体型は維持していた。
背が高く痩せマッチョで不健康ながらっぱちの男前、というフォーマットは、この人を見て育つことで出来上がっていったものだったのかもしれない。他にも俳優さんやアニメ、マンガ、ゲームなどのキャラクターに影響された部分もあるだろうし、自覚しているものもある。
けど、このヨシダさんという人を錬成するのに結構な割合で用いたエレメントが、私の親父であるところの輝さんだった。
結局、輝さんはお酒で体を壊し、それでも酒がやめられず我が家を去った。隔離病棟で治療し、アルコール依存症と糖尿病と戦いながら、実家に戻って働いていた。だけど仕事中に出先で倒れ、そこからは早かった。もともとぼろぼろだった内臓が、ついに壊れてしまっていたのだ。
酒代が丸ごと浮いたから、と、ずっと欲しがっていたハーレーダビッドソンを買って我が家に乗り付けたところを写真に撮ったこともあった。でも、それに乗ってとうとう遥か遠くまで行ってしまった。
最後の数年間は穏やかで、楽しく過ごしていたようだった。私も悩んだり迷ったりした時、輝さんに相談することもあった。
この本を見せてあげられなかったのは残念だ。だけど、ご覧くださった皆さんがヨシダさんという人を覚えていてくれる限り、そこに私の亡き父も生き続けていられる。
実は、ちょっと、そんなことも込められていたりするのです。
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