不定期エッセイ キッドさんといっしょ。

ダイナマイト・キッド

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2023年8月4日~6日。

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仕事が終わってそのままクルマを走らせた。久しぶりに伊勢湾岸道を通ったら四日市から直接、新名神に入れるようになったお陰か混雑は殆どなく。快適なドライブであった。
ナゴヤ圏のド真ん中を、ナゴヤな連中と一緒に走る危険性と胸糞悪い運転を目の当たりにする以外は。今回も酷かったよー。
片側三車線の高速道路で、いっちゃん右の追い越し車線から直接、二車線あるランプの左側車線まで斜めに突っ切って目の前に割り込んで来るクルマがあるとか、JAFの広告にある危険予知コーナーでも書けないだろ。そんな常識ねえもん。
なくて当たり前だよ。
何故ならここは交通地獄ナゴヤ。
ここの道路を走るものは、一切の希望を捨てよ。
と、桶狭間あたりに立札でも出しておいたらどうだろうか。
今どき、こんだけ煽り運転や危険運転が大問題になってるのに、大型トラックも高級セダンもイキリSUV&軽自動車も、みんながみんなを煽り、追い抜き、通路を塞いで割り込んで。
地獄ってより餓鬼道なのかもしれない……。

深夜。阪神高速を降りて。人通りもまばらな大阪は北浜某所の可愛いお店。
明るい雰囲気とひっそりとした佇まい。
この落ち着く空間にほんわかムードで、創作仲間の入江弥彦さんが待っていてくだすった。この創作アカウントを作って以来、大阪に行くたび忙しいなかお時間を作って下さっていたのだけれど、今回は思い切って営業中にお邪魔しました。
お店にいらした木田さんも交えて3人で四方山話。入江さんとも、珍しく創作についてあれこれ話す。キャラを作る、物語を作る、動かす、出版する、などなど…。
入江さんと創作の話をするなんて何年振りだろうか、下手すると殆どしたことなんか無い気がする。いや、することにはするけど、それは
「売れてえ~~~」
「仕事くれえ~~」
とクダをまいたり、うめき声を上げたりするだけであって……。

短い時間だったけど、甘くないジンジャーエールとリッツを頂きながら楽しいひと時を過ごさせてもらいました。大阪のこと、創作のこと、話せば話すほど湧いてくる愛着と発想、私は基本的に人に話すと気が済んでしまうのか、その後に失速してしまうこともあるのですが……あの時に少しか話したことは、今日になっても脳の片隅でくすぶって、ずっと付け火か狼煙にでもなってくれそうです。
木田さんにも、客ながら楽しんでいただけていれば幸いです。
聞き上手で乗せ上手だけど、それが仕事っぽくない。楽しく過ごして欲しいと思って接して下さっていたと感じたし、退屈しないでくださってればいいな。
笑うとクールな顔たちがきゅっと丸まって、一気に可愛くなる。笑顔が素敵な木田さんでした。

そのまま御堂筋経由で宿に帰る。
二度と大阪市内、特に夜のミナミなんぞを自動車で走るもんか、と心に決めつつ、これからの3日間で三ツ寺周辺をチマチマと走り回ることになるのであった。

8月5日。
翌朝も大阪の空は悪意に満ちて晴れ渡り、顔をゆがめた太陽が舗装路をトボトボ歩く僕を射す。白熱した光は文字通りの陽射しとなって、僕は影法師まで串刺しになって、そのまま蒸し焼きになりそうだった。再びクルマを走らせ、日本橋オタロードに向かう。
コインパーキングが軒並み高い!生野区桃谷は24時間800円だったというのに。
需要と供給のバランスというのは恐ろしいもので。

お昼にお邪魔したのは日本橋のカラオケ喫茶ポアロさん。
前回の来阪でフォロイーに連れてってもらった「あたらよ」さんにいらしたお母さんメイド、こなさんがいらしたので…。一緒にお店に出てらしたるぅさんは明るくてポンバシらしいお姉さん。可愛くてお話も楽しいけど、気配り上手でよく見てくれている。
こなさんはといえば、常連のお客さんの歌や話を聞いたり答えたりしつつ、その日のみんなの昼飯をこさえ、足りない分は買い出しにも行く。本当に、ポンバシに居るみんなの母ちゃんみたいだった。

お客さんがみんな、何というか愛すべき大きいお友達だったのも私にとって収穫だった。
私が書きたいのは、私の中の物語で蠢いている人々は、こういう自分の「好き」や「推し」に素直で、謎めいている生活からやってきて。あけすけな性格をにじませて歩く、あの日あの時あのお店のカウンターや出入り口そばのテーブルに腰かけていた皆さんだった。それが今まで足りなかった。もっとこういう部分も観察して、盛り込んで行かなくちゃならない。

思いを新たにしているとお腹が空いたので、こなさんの手料理をご馳走になることに。
こなさんのお料理、前回のあたらよさんでも驚いたけど、ほんとに美味しい。
お腹に優しく着陸してくれるような味わい。ゼニの取れるおふくろの味。
今回の日替わりメニューは、というと…。
メインは豚しゃぶおろしポン酢うどん(冷)と、とろろご飯。
おかず3品はタレ漬けのタマゴ、厚切りベーコン焼き、夏野菜の煮びたし。
デザートはアップルパイとアイスクリーム。
迷ったので3つ全部オーダーしてしまった。そして3つ全部美味しかった!
みんなも食べに行くといいよ。
こなさん、ご馳走様でした!るぅさん、楽しかったです!

……お店を出ても、まだ暑い。クルマを置きに生野区へ戻る。鶴橋駅は今日も混雑しているが、区民センター付近まで下って来るとそうでもない。つまり、タクシーもそこまでは来ない。来ても誰か乗っている。いつものタイムズ……が、タイムズじゃなくなっていたが、値上げも100円で勘弁してくだすっているので相変わらず良心的だ。Peach9Park 桃谷
さんありがとう。

で!
この駐車場から桃谷商店街を抜けて、JRの桃谷駅まで向かう道のりが、こんなに長く感じたのは初めてだった。そんぐらい暑くて暑くて、もうかなわん!と、何度も心が折れかかった。桃谷駅から電車に乗る気も起きず、ちょうど来たタクシーにヒハヒハと乗り込む。
運転手さんは父子二代でタクシー運転手。大昔の大阪府立体育会館や、大相撲の贔屓力士の話で盛り上がる。こういう話が聞けるから大阪のタクシーって好きだ。あまりはずれの運転手さんに当たったことがない。まあ、絶対的なトライ数の問題があるけれど、たまに来てアタマにも来てたら絶対覚えてるしな、そんな奴の事。
なのでほんと、毎回助かってます。

気分よく日本橋1丁目の交差点に降り立ったはイイが、まだ日が高い。
どうしよう。そうだ!あそこなら!!
と、味園ユニバースの横っちょを歩いて行くと、もうワンブロック先の角っこにある
アるかあるか
さんが営業中。ここのお料理と飲み物は絶品で、この日はエスプレッソコーラとアるかソーダ、それと朝〆鶏のたたきを頂きました。
美味かったなあ、鶏のたたき。薄切りのタマネギや野菜がどっさり乗って、その下にはガッツリ鶏肉。暑いさなかに食べると美味さもひとしお。
アるかソーダは甘すぎずほろ苦く、でも後を引く独特かつオンリーワンの味わい。これがまた飲みたくって。でもエスプレッソコーラも美味しいんで、迷った挙句どっちも頼みました。これがデブの強み。
窓際の席に腰かけて、千日前と堺筋を往来する人々をぼんやり眺めている。この暑いさなかでも、結構な人通りがあるし、アるかあるかさんも外のテラス席に座っている人までいる。
案外と日陰になっているので、風が心地よかったのかも知れない。

その後は堺筋を渡って、日本橋パールビルにある
立ち呑み 毘さんへ。
松山座も毎回お越しになられていて、ポスターも貼って下さっている。
種子島のお酒と、豊富なツマミ、巨大な唐揚げもある。
今日は暑かったのでタコ刺しや、マグロの頭肉の御造りなどを頂きながら、ココで漸くお酒を口にする。駐車場にクルマを置いたので、やっと気兼ねなく飲めるのだ。
梅酒をちびちび飲みつつツマミを頂きつつ、プロレスのお話もしつつ。
店主さんはボスと呼ばれているようなので、私もそれに倣っていこうかと…。
この日のお手伝いさんは、声音とスマイルは癒し系で可愛いけど結構、歯に衣着せぬ物言いがギャップを生む、さわちゃんという方だった。

マグロの頭肉の御造り、絶品でした!これがねえ、トロより甘いけどしつこくなくて、でも脂のってて。美味しかったなあ……これはやっぱり、サカナの美味しいお店じゃないと食べれないんだと思う。
公演の日も、お声掛けくださりありがとうございます。またボスのお料理とお酒、楽しみにしております…!ごちそうさまでした!

一旦、宿に荷物を置く。
ここでこの夜の予定が2つとも飛ぶ。発熱や体調不良が増えている。まだまだ予断はナラナイ。が、その知らせを受けた私は、なんばウォークの抹茶カフェみてえな意識の高い木材で誘い込んだ意識の高いお客さんを木のぬくもりと和のホッコリテイストでおもてなしするタイプの店で、しばし呆然とする。もう完全に場違いであった……。

気を取り直して道頓堀のほとりから入るスーパーポジティブバー、なるお店にお邪魔しました。
ましおりさんと香寿司さんがいらしてて、下品な話もカラっと出来るのでとても気兼ねなく楽しく過ごせました…いつもお店のInstagramにはタトゥとピアスの多いイカツイお兄さんがいっぱいなので、私にとっては前向きな魔窟、みたいな場所だと思ってたんですが。
まだ時間が早かったのか静かで落ち着いていたし、なんと昼間はお花屋さんでもあるというので、とてもオシャレで雰囲気の良い場所でもありました。
ここでソファに腰を落ち着けつつ飲んでるのも気分いいだろうな。眼下には運河、そして夜半にそぞろ歩く人々。川も人も流れる。それを眺める。面白いもんだ。

風流なこと言ってますが、ラブホとAFの話ばっかしてた気がする。
ましおりさんとは初対面で、酒好きの明るいお姉さんだった。思った通りというか、思ってた以上に「ましおりさん」だった。
また乾杯しましょう!香寿司さん、個展の詳細が決まったら教えてくださいな…!

三ツ寺会館に移って、地下のプカプカさん。
大吾郎さんが亡くなられて暫くになる。このお店があったから私は三ツ寺会館で楽しく過ごせている。最初がココだったからだ。
この年代物の建物のなかに無数にひしめくお店の、最初に入って最初に出会ったお店とマスターが大吾郎さんだった。だから思い入れもあるし、小説に出させてもらうお許しも頂いて、折に触れて「三ツ寺会館のBARプカプカ」は私の物語の中に顔を出す。そうすれば、そこに大吾郎さんも、プカプカという場所も、その空気も、全部ずっと在るからだ。
この日はお休みの予定だったが、急遽奥様のさおりさん(4代目オーナー)が開けていらした。それを見てすぐに向かった。隣に座った鉄道系のお兄さんと落語を聞いて、大吾郎さんやプカプカとの初対面の話をして。
漸くご挨拶が出来て良かったです。また今度お会いできるのを楽しみにしております。
大吾郎さん、また来るよ。

その足でちょこさんのお店へ。
あれ?プカプカさんと逆だったか…?結構、酔っていて細かいところを忘れている。
が、ちょこパさんでの出来事は覚えている。
暫くした時に来店したのが、写真家のジャックさんご夫妻だった。ちょこさんのことも写真に撮ってらして、日本語ペラペラ、のんべで優しいジェントルメン。
奥様はAMラジオリスナーとのことで…ラジオ関西で深夜の馬鹿力をお聞きになっているかも知れない。また伊集院さんに拾っていただけるように頑張ろう。
ジャックさんと何かの拍子にSF小説や映画の話になって
「アナタ意外と学があるね!」
と言われたのが、結構うれしかった。こういう話が出来る人って限られてるし身近にも居ないし、そういうハナシとして楽しんでくれる人がいるだけでも有難いけど、内容や感想まで踏み込んで話せる人に出会えたことは本当に貴重なひと時だった。
これだからお店に行って飲み食い出来るのって素晴らしい。ちょこさんのおかげです。
ありがとうございました!

三ツ寺会館3階のトリップステアさんにも初めまして。
実は翌日に訪問する予定が間に合わないかも…?と、この時点でかなり自分の予定管理に自信を無くし、飛んだり飛ばしたりしているせいで情緒不安定でした。
酔いも手伝って、これはもうダメかも…と、謝りに行くつもりでしたが、ぶんぶん丸さんに
「逸材」
の魅力を仄めかされ、力説され、気を取り直して翌日の再訪を約束してお店を後にしました。
弱気になっていると先々の自分を自分で悩ませてしまう。それでは損だし、申し訳ない。
折角なので楽しく過ごせるようにベストを尽くさねば。同じお金と時間を使っているのだし。俯いて入ったお店から顔を上げて出て行けたのは僥倖でした。ぶんぶん丸さん、その節はお世話になりました。

いい加減に酔いと疲れが回って来たので、三ツ寺会館から近くのリトルシープさんに。
クロヱ様に会いたくて。この日の彼女は普段の匂いたつ色気よりも、か細い生命のロウソクがぼうっとどす黒い焔を纏っているかのような雰囲気だった。
正直に言えば、そんな状態でも美しく、ぐっと迫るものがあった。
何かこう、いい客・まともなニンゲンとしての気持ちと、加虐性のベクトルに針を振ろうとする圧力とが丹田でせめぎ合ってしまう感じ。
くたばりかかっててもこんなステキじゃあ、元気になってくれとも言いにくい。
ただ生きてまた会いたい。

宿に帰ってシャワーだけどうにか浴びて寝る。

8月6日。
起きたら随分と明るかった。チェックアウトが遅くて助かった。
連日の猛暑、酷暑、メキシコより暑いのだ。しかも湿度のオマケ付き。
鶴橋駅のホームを吹き抜ける生ぬるい風と、古い家屋をキツイ色彩で浮き上がらせる野蛮な青空が眩しかった。
どうにか生野区民センターに辿り着き、試合を見た。

夜、本当に前向きに行動するとちゃんと間に合った。
約束通りトリップステアさんで、リリィさんと初めまして。
文化的素養の高さが、前日のジャックさんや香寿司さんと並んでピカイチだった。写真、デザインと来て、遂に文才の持ち主に出くわした。
その後にわかったことも併せて、納得の頭の回転の速さだった。
本当に何処にどんな逸材がいるかわからないから面白い。この人はモノホンだ…!
正直に言えば見た目のインパクトが強くて惹かれた人だった。でも、キュビズムの権化みたいな内面を抱えたこの人と、もっと話がしたいし、対等に渡り合えるようにもなりたいと思う。この人が経験していないフィールドの話を持ち出すんじゃなく、同じ土俵でスイング出来たらどんなに楽しいだろうと思う。まあそれはそれで独りよがりなのだけれど、ここで独白しておく。

面白い人が、面白いお店に隠れている。だから時々は知らない扉を開けてみないと人生がつまらなくなるなあ。

翌朝、曇天の国道25号線。結局殆ど何処にも寄らずにぼんやりと天理まで走る。
この道を走るのも随分と久しぶりになる。大阪の町並みを、普通の生活道路を、そして川沿いや山際を。誰かの生活に一瞬だけ見切れるようにして走る。それがちょっと楽しい。
頭に浮かぶのは陰鬱で、ぐったりとした言葉ばかり。
そこからは名阪国道だ。
大内インター横の名阪ドライブインが更地になってて、土砂降りの雨も手伝ってなんだか寂しかった。
友生インターで漸く降りて、すぐのファミマに入る。
12年前にも同じ車で同じファミマを訪れていたことを思い出す。
SNSをずっとやってると、あの子いなくなったな、あいつ見かけないな、と思うけど、自分がずっと居るだけなんだよな。そう思ってまた気分が少しドンヨリする。良いことも楽しいことも沢山あるのにな。

楽しかったけど消化不良も残ったので、これを未練としてもうしばらく生きることにする。

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