不定期エッセイ キッドさんといっしょ。

第９９２回。松山座「田上百花繚乱」 第一試合・第二試合

第一試合
鈴木敬喜選手
ＶＳ
ＭＩＫＡＭＩ選手
入場式のあと、第一試合が開始される。
まずは新潟プロレスより期待の新人、
鈴木敬喜選手が登場。
かなりがっちりした体躯で胸板が新人離れして分厚い。スポーツ歴はなんだろうと思ったらレスリングの猛者だそうな。これは確かに団体からもファンからも期待も集まるはずだ。
対するは大ベテラン、今やインディープロレスの伝説ともなったＭＩＫＡＭＩ選手。フリーとなり松山座への登場が増えてうれしい限りです。
やっぱり自分が憧れていた
「東京でいつもやってるインディープロレス」
の主要な登場人物だったＭＩＫＡＭＩ選手が、この遠く新潟で、目の前のリングに颯爽と現れるんってなんだか嬉しいような不思議なような気分になる…
ところで鈴木選手の入場曲がトムキャットのタフボーイ（北斗の拳２の主題歌だった）だったんだけど、確かに若手選手らしいしカッコいいけど本人のチョイスだったらシブいなあ。
試合はプロレス教室も始められたＭＩＫＡＭＩ選手による公開レッスンのように、鈴木選手も自身で語っていた通り「知らない技」の数々が次々に繰り出された。
まずは手を取り、取り返しの繰り返し。
プロレスが初めてのお客さんもいるし、ＭＩＫＡＭＩ選手を初めて見るお客さんも少なくはない。なのでこうやって先ずはじっくりと試合、そして選手の動きが見られるのはとても良かったのではないか、と思います。バタバタっと試合をしてお客さんを掴むのも大変だと思いますが、あの静かな、リング状の緊張がこっちまで伝わってくるような雰囲気で、お客さんも固唾をのんで鈴木選手の応援をし、ＭＩＫＡＭＩ選手の出方をうかがっている中で落ち着いて試合をする。これこそがプロ、まさにＭＩＫＡＭＩ選手がＭＩＫＡＭＩ先生である証明ではないでしょうか。
期待の鈴木選手も流石に緊張しているのか、目をカッと見開いて気合を入れて威圧するもＭＩＫＡＭＩ選手は余裕たっぷり。入場してきてもコーナーポストに寝そべったり、幾ら攻めても身軽に攻撃をかわしたり手首を取り返したり。
パワーでは鈴木選手に分があったかもしれないけれど、それだけじゃない奥深さや面白みを感じさせる組み合わせでしたし、その通りの試合になったのではないかと思います。
試合はＭＩＫＡＭＩ選手が危なげなく勝利したものの、この先もっとテクニックやスピードを身に着けるのか、はたまた大日本プロレスの関本選手や岡林選手みたいになるのか、もしくは松山座的な第二の人格・依り代としても…今は新潟カラーのオレンジがまぶしいけれど、その顔と衣装が血に染まる日も近いかもしれない。
ある意味でまっさらな今こそが、いちばん大事な時期なのだと思います。
ＭＩＫＡＭＩ選手が言っていた
第一試合はメインイベント並みに重要
という言葉の意味を、ＭＩＫＡＭＩ選手みずからが鈴木選手にも、お客さんにも伝えてくれた。そんな試合だったのではないでしょうか。
ホントに分厚くて「イイ身体」をしている鈴木選手。
また見たい、これからが楽しみ！という選手でした。
がんばれタフボーイ。そしてこのイカれた世界へようこそ。
無傷でいられるなんて運がいいことはきっとないでしょうけれど。
あなたの負うであろう傷ひとつひとつに思いを込めてくれるファンの方が必ずいると思います。この日のあたたかな声援と拍手が、それを物語っていたのではないでしょうか。

第二試合。
ブルアーマーＴＡＫＵＹＡ選手
ＶＳ
アグー選手
活動終了前のラスト新潟、ということでアグー選手も貴重な機会になるかと思いました。豚さんのマスクが会場の女性のお客さんに
かわいい！
と好評で、ちびっ子ファンからは
焼き豚にしちゃえ！
と心無いフレーズを投げられるアグー選手だけど、デカいうえに動けるので飛んだり走ったりするだけでリングがゆっさゆっさ揺れる。
手のひらの小指・薬指と中指・人差し指をくっつけて豚のヒヅメみたくするポーズも会場のお客さんが沢山マネしてた。
対するは世界一のリング屋さんでバーの店主でもあるブルアーマーＴＡＫＵＹＡ選手。こちらもかなりの巨体。
ブルアーマーＴＡＫＵＹＡ１２０キロ！
体重は正義だ！
と叫ぶその分厚い肉体でアグー選手にぶつかると、ホントにリングが壊れそう。
試合は明るく楽しく面白いけどド迫力、このお二方にしか出来ない試合だったと思います。派手な技やハイスパートしなくても、表情やひとつひとつの技と間合いでお客さんが掴まれる。大音量のボディスラムやブレーンバスターというお馴染みの技の迫力で目が離せなくなって、笑って驚いて、たくちゃん！の合唱と電光石火のラ・マヒストラル。
最後はアグー選手がばっちり勝利。
こういう試合をコントというには役者さんにもレスラーにも失礼だ。
プロレスである以上は訓練があるし、それは役者さんにも同じこと。
じゃあどういう表現をするかと言えば、私なら
これもプロレス、こういう試合、それが面白かった
とそれだけで済むと思う。熟練の職人（巨漢）ふたりによるステキな第二試合でした。