不定期エッセイ キッドさんといっしょ。

第９３１回。#いいねの数だけ元恋人の話をするちなみに見た人もする４ 続・福岡事件

ホテルに着くと、最上階の色んな意味でいちばん高い部屋しか空いてない。実はコレが初ラブホだったキッドさん。男気を見せようとためらうことなくチェックイン。ちなみに一泊１万３千円くらいだったのでまだマシな方だと今は思う。言い出せばキリないし、こういうのは青天井だもんな。男の見栄と見え見えの心と。いいね、粋だね。
ホテルの中に無人のファミマがあって、それもあとで清算するんでつけといてもらえる。古典落語の「居残り佐平次」だったらコレで延々と居座ることも可能かもしれない。
んでお部屋に入ってやることは一つ。
お風呂に入ってテレビを見る。ちなみにお風呂場にもテレビと冷蔵庫があった。ブラン・シークレットとアナルプラグでも冷やしておくためのものだろうか。
するとお部屋に設置されていた超デカいテレビの画面に映し出されたのがまあ酷いシロモノで。今どきこんなのある！？てか、ここまで凄いテレビ画面で見るようなもんなのか！？ってぐらい。
どこにでもいそうなフツーの、小太りで全然美人でもない、むしろ授業参観で
アレ誰の母ちゃんだよ…
みたいな感じの、厚化粧で不細工なオバサンが服を着たまま、タイツも履いたまま白昼堂々街中の至る所で小便を漏らして回るという野良犬だかなんなんだかわからないビデオ。アレで萎えなかったキッドさんエライ。
それでまあ色々いたしまして。ホテルも初めてならそれ自体も久しぶりだった。使い終わったコンドームを捨てるときはティッシュにくるんで捨てろ、とかもこの時に教わった。キッドさん１９歳の冬の事で御座いました。
で。初めてのデートで初めてのベッドを共にしてから（ブンガク的な表現だろう）どうも彼女の様子がおかしい。
身の上話から自分語りから色々と話が続き、手首が云々薬が云々という。聞けば彼女の体は副作用でこうなってしまった、とのこと。見せてくれた写真は少し前にお店で使うために撮影したものだったらしい。デリヘルだったかな？
今ほど加工アプリも無かった頃なので、角度とか光の加減でだいぶ細く見せることも出来る、と言っていた。
そうこうしているうちに、お馴染みの白いカミソリが出てきて手首をスパー。そんなところから血を出されても困ってしまう、慌てて手当てをしようにもコンドームやローションはあっても絆創膏なんてない。タオルをグルグル巻いてアタフタしていると、彼女はそのまま部屋を飛び出してしまった。どうも勝手に内線をしたらしく（料金は前払いプラス後で使った分を清算だったと思う）そのままフロントでお会計。
着の身着のまま木の実ナナ、行く当てもなく真夜中の博多に出てしまった。結局そのままうろうろとさ迷い歩き、またもファミレスで時間をつぶす。その間にも彼女のタオルにはドクドク染みてきている。が、どうも傷は浅かったらしくすぐに収まっていた。傷口を抑えて歩きまわっているのだからそりゃ血も出るし、そのうち止まってくれて良かったよ。で血が止まったところでこっちの泊まる場所がない。
これがキッドさんのリスカされ初体験でもありました。
結局どこをどう歩いたかもうさっぱりわからなくなったところでタクシーを捕まえて、さっきのホテルに再度チェックイン。今度は７千円くらいの赤っぽい部屋だった。１１月の上旬だったと思うけど、流石に汗だくでもう一度お風呂に。んで彼女も入る前にもう一度、その、まあ。
私は女の子がお風呂入る前のがスキなの！！！
麻婆豆腐洗ってから食うバカが居るかよ！？
あんだけ乱痴気騒ぎしておいて、することはしているのだから若いというか呆れるというか。でも、もうそれが終わってお風呂に入るころには彼女は別の男の話を始めていた。私が彼女と出会った作詞の個人サイトの管理人のことだった。
んで、朝イチの新幹線で私は帰った。二人でトボトボと早朝の博多を駅まで歩いてたら、ゆうべのタクシー運転手さんが横を通りかかって、手を振ってくれた。
帰りの新幹線が新大阪に着く前に、メールで別れた。メールで付き合ってメールで別れた、最初で最後のデートだった。何となくまあそうだろうな、とは思ったけど、やっぱりちょっと堪えた。今だったら
高いオフパコだったな！
で済むけれども。悪い意味で年を取ったなあキッドくん。何が麻婆豆腐だよ。

で、家に帰って例の作詞サイトにアクセスしようと思ったら出来ない。彼女が私についてあることないこと言いふらしていた。アクセス禁止、アク禁というやつである。チャットに入ることも、掲示板に書き込むことも出来なくなってた。わけがわからなかったが、数か月後に当の管理人から詫びのメールが来た。
彼女が私に酷いことをされたと触れ回ったこと
それを真に受けてしまったこと
さらにその話をアタマから全面的に信じ込んで大騒ぎした女性参加者もいたこと（この人は本当にそれっきりなので未だに何か思いこんでる可能性もある）
自分も彼女に会いに行きカラオケで咥えられそうになったがドロップキックぶちかましたこと（絶対ウソだ）
などなどを打ち明けて、その後すぐに私はそのサイトに復帰して暫くは楽しくやっていた。あれから１０年以上が経った。まだ生きてるかなあの子。
管理人の方はしぶとそうだな。

と、これが私の通称福岡事件、でした。
こういうのは供養と書いてネタとルビを振るに限る。