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第928回。#いいねの数だけ元恋人の話をするちなみに見た人もする
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4いいね。
良かった、そんな幾つもネタねえよ…けど見た人もするって書いてあるから…AMATAさんのツイートに反応したばっかりに…だって読みたいじゃんあんな可愛い人の話。
でこんな脂っこい人の話。
そうね…4つほど軽く。何の話をしようかな。
生まれて初めて女の子とお付き合いっぽいことをしたのは小学5年だった。相手はブラジル人の女の子だった。豊橋には当時からブラジルをはじめ南米からやってきた人たちが沢山暮らしていて、彼女もその夫婦の子供だった。だからハーフとか日系とかではなく純粋なブラジル人。白人系の凄く綺麗な子だった。背も高くて眼鏡が似合う、よく笑う明るい子だった。でも周囲の女の子たちに馴染めず、ピアスや金髪など文化の違いでも悩んでいた。
で、学校行かずにフラフラしてた私とは、はみ出しもん同士でもあった。
こんな時どうしたらいい?と、いつも相談してくれていたのが嬉しかった。
そうこうしているうちに、二人して学校サボるようになった。団地住まいで共働きの彼女の家に行ってテレビ見たりお菓子食べたり、昼間っからウダウダしていた。外を歩くと見つかって怒られると思ってたから、コソコソしてたっけな。でもそんなことが、なんか大人になった気がして楽しかったんだ。
でもある日、あの子が急に駅ビルに行きたいと言い出した。新しく完成した豊橋駅のカルミアビルの4階に、当時ディズニーストアが入っていた。そこに行きたい、と。それで二人して平日のド昼からディズニーストアでアレコレ見て、最終的に何か小さなぬいぐるみを買ってあげた。プーさんだったかな?もう忘れてしまった。
その帰り道、駅ビルを出たデッキのところで補導員のオバサンにつかまった。ピンクっぽいなんか色付きの眼鏡をした化粧が濃くて息が臭い、歯が茶色くて汚いオバサンだった。
「学校はどうしたの?」
「親御さんに連絡を」
「交番に…」
新しく出来た駅舎の敷地内に綺麗な交番があった。そんなところに連れていかれるのもゴメンだし、このババア、明らかに立場が弱くて大人しそうなやつしか狙ってない。すぐ後ろで私立高校の制服着た茶髪のバカそうな不良たちがソフトクリーム食ってるのに。
この頃からこういう時ばかり知恵が回るクソガキだったキッドさん。咄嗟に
「わかった。うちは母子家庭でお母さんは働きに行ってるから、おばあちゃんに電話する」
と言ってデッキのエスカレーターを降りたところにあるファミリーマートに設置してある公衆電話を指さした。で、ババアが満足そうにこっちへ背を向けエスカレーターに乗った瞬間、反対側へダッシュした。
しばらく遠回りして走って走って、下が商店街で上が団地になってる、そのアーケードの下を息を整えながら歩いてた。逃げるときに、いつの間にか手を繋いでた。彼女の手のひらはすべすべで冷たくて、指が細くて長かった。強く握ったら小枝のように折れてしまいそうだったけど、何となく離すのが怖くなるくらい気持ちのいい感触だった。
ふと気が付くと、その商店街のはちみつ屋さんの外に積まれた
は
ち
み
つ
とペンキでひと文字ずつ書いたミツバチの巣箱の影に補導員のババアがいた。よく追いついて見つけ出して付け回してたもんだ。その執念は20年ぐらい経った今なら敬意を表せる。ババア乙。
ちょうど20年前の出来事だけど全部実話。
は
ち
み
つ
の巣箱は、今でもそのお店の前に置いてあって、通るたびに思い出す。
あの子はその翌年の、小学校6年の4月28日にブラジルに帰ってしまった。以来、音信不通だ。いつだったか物置の整理をしていたら遠足の時に撮った彼女の写真が出てきた。女子数名と楽しそうに写っているものや、彼女一人でピースをしているものもある。こうしてみると、あの頃ずいぶん大人びて見えた彼女も、当然ながら幼かったのだなと思った。今では32歳、きっと素敵なセニョリータになっていることだろう。コモ・エスタス・ジュリアーナ。
4つ軽い話をするつもりが1600文字も書いてたか。どうしよう。
ブラジルはじめラテン系のアミーゴの多い豊橋市には、ラテン系の人のためのお店も増えた。当時、ウチの近所にブラジル風ハンバーガーのお店があった。別にハポンでも誰でも入れるお店なのだが、やっぱりお客さんはブラジルの人が多かったみたいだ。クラスの連中も何人か彼女に連れられて行ったらしいが、みんなお口に合わなかったようだ。私も彼女と行ってみた。値段は普通のハンバーガーと同じか、お惣菜のハンバーガーくらいの値段。でもハンバーグの大きさが倍近くあった。マクドナ〇ドとかの。
味は物凄くクセが強くてスパイシー、確かに小学生には合わなかろう。んが、元々の好みが酒飲みみたいなクセが強くて歯ごたえのあるものが好きだった私にはちょうど良かった。このエッセイにも出てくるクマさんの台湾土産のハムでも大絶賛のち即完食したくらい、どうも私は昔からアジアでもラテンでもスパイシーでクセの強いものが好きらしい。今でもアジアン料理店やインド料理のお店に行くのが大好きだが、その原点的な経験はこの時だった気がする。
コレ美味しいらあー!
と流暢な日本語で、かつしっかり染みついた三河弁で彼女がハンバーガー片手に笑った。私もモリモリ食べて、美味しいねえ!と笑った。
窓の外には大通りをぐおーんと独特の音をたてて走る路面電車がゆっくりガタゴトと駅に向かって走って行った。
そのハンバーガー屋さんも随分前になくなってしまったし、ディズニーストアもとっくにない。そういえば一時期はアニメイトになった。
意外や意外、彼女との思い出の場所で現存しているのは、彼女の家があった団地と、あのはちみつ屋さんだった。そんな甘い思い出。はちみつだけに。
良かった、そんな幾つもネタねえよ…けど見た人もするって書いてあるから…AMATAさんのツイートに反応したばっかりに…だって読みたいじゃんあんな可愛い人の話。
でこんな脂っこい人の話。
そうね…4つほど軽く。何の話をしようかな。
生まれて初めて女の子とお付き合いっぽいことをしたのは小学5年だった。相手はブラジル人の女の子だった。豊橋には当時からブラジルをはじめ南米からやってきた人たちが沢山暮らしていて、彼女もその夫婦の子供だった。だからハーフとか日系とかではなく純粋なブラジル人。白人系の凄く綺麗な子だった。背も高くて眼鏡が似合う、よく笑う明るい子だった。でも周囲の女の子たちに馴染めず、ピアスや金髪など文化の違いでも悩んでいた。
で、学校行かずにフラフラしてた私とは、はみ出しもん同士でもあった。
こんな時どうしたらいい?と、いつも相談してくれていたのが嬉しかった。
そうこうしているうちに、二人して学校サボるようになった。団地住まいで共働きの彼女の家に行ってテレビ見たりお菓子食べたり、昼間っからウダウダしていた。外を歩くと見つかって怒られると思ってたから、コソコソしてたっけな。でもそんなことが、なんか大人になった気がして楽しかったんだ。
でもある日、あの子が急に駅ビルに行きたいと言い出した。新しく完成した豊橋駅のカルミアビルの4階に、当時ディズニーストアが入っていた。そこに行きたい、と。それで二人して平日のド昼からディズニーストアでアレコレ見て、最終的に何か小さなぬいぐるみを買ってあげた。プーさんだったかな?もう忘れてしまった。
その帰り道、駅ビルを出たデッキのところで補導員のオバサンにつかまった。ピンクっぽいなんか色付きの眼鏡をした化粧が濃くて息が臭い、歯が茶色くて汚いオバサンだった。
「学校はどうしたの?」
「親御さんに連絡を」
「交番に…」
新しく出来た駅舎の敷地内に綺麗な交番があった。そんなところに連れていかれるのもゴメンだし、このババア、明らかに立場が弱くて大人しそうなやつしか狙ってない。すぐ後ろで私立高校の制服着た茶髪のバカそうな不良たちがソフトクリーム食ってるのに。
この頃からこういう時ばかり知恵が回るクソガキだったキッドさん。咄嗟に
「わかった。うちは母子家庭でお母さんは働きに行ってるから、おばあちゃんに電話する」
と言ってデッキのエスカレーターを降りたところにあるファミリーマートに設置してある公衆電話を指さした。で、ババアが満足そうにこっちへ背を向けエスカレーターに乗った瞬間、反対側へダッシュした。
しばらく遠回りして走って走って、下が商店街で上が団地になってる、そのアーケードの下を息を整えながら歩いてた。逃げるときに、いつの間にか手を繋いでた。彼女の手のひらはすべすべで冷たくて、指が細くて長かった。強く握ったら小枝のように折れてしまいそうだったけど、何となく離すのが怖くなるくらい気持ちのいい感触だった。
ふと気が付くと、その商店街のはちみつ屋さんの外に積まれた
は
ち
み
つ
とペンキでひと文字ずつ書いたミツバチの巣箱の影に補導員のババアがいた。よく追いついて見つけ出して付け回してたもんだ。その執念は20年ぐらい経った今なら敬意を表せる。ババア乙。
ちょうど20年前の出来事だけど全部実話。
は
ち
み
つ
の巣箱は、今でもそのお店の前に置いてあって、通るたびに思い出す。
あの子はその翌年の、小学校6年の4月28日にブラジルに帰ってしまった。以来、音信不通だ。いつだったか物置の整理をしていたら遠足の時に撮った彼女の写真が出てきた。女子数名と楽しそうに写っているものや、彼女一人でピースをしているものもある。こうしてみると、あの頃ずいぶん大人びて見えた彼女も、当然ながら幼かったのだなと思った。今では32歳、きっと素敵なセニョリータになっていることだろう。コモ・エスタス・ジュリアーナ。
4つ軽い話をするつもりが1600文字も書いてたか。どうしよう。
ブラジルはじめラテン系のアミーゴの多い豊橋市には、ラテン系の人のためのお店も増えた。当時、ウチの近所にブラジル風ハンバーガーのお店があった。別にハポンでも誰でも入れるお店なのだが、やっぱりお客さんはブラジルの人が多かったみたいだ。クラスの連中も何人か彼女に連れられて行ったらしいが、みんなお口に合わなかったようだ。私も彼女と行ってみた。値段は普通のハンバーガーと同じか、お惣菜のハンバーガーくらいの値段。でもハンバーグの大きさが倍近くあった。マクドナ〇ドとかの。
味は物凄くクセが強くてスパイシー、確かに小学生には合わなかろう。んが、元々の好みが酒飲みみたいなクセが強くて歯ごたえのあるものが好きだった私にはちょうど良かった。このエッセイにも出てくるクマさんの台湾土産のハムでも大絶賛のち即完食したくらい、どうも私は昔からアジアでもラテンでもスパイシーでクセの強いものが好きらしい。今でもアジアン料理店やインド料理のお店に行くのが大好きだが、その原点的な経験はこの時だった気がする。
コレ美味しいらあー!
と流暢な日本語で、かつしっかり染みついた三河弁で彼女がハンバーガー片手に笑った。私もモリモリ食べて、美味しいねえ!と笑った。
窓の外には大通りをぐおーんと独特の音をたてて走る路面電車がゆっくりガタゴトと駅に向かって走って行った。
そのハンバーガー屋さんも随分前になくなってしまったし、ディズニーストアもとっくにない。そういえば一時期はアニメイトになった。
意外や意外、彼女との思い出の場所で現存しているのは、彼女の家があった団地と、あのはちみつ屋さんだった。そんな甘い思い出。はちみつだけに。
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