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第911回。王道プロレスとストロングスタイルと
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先日、ジャスト日本さんから頂いたお題は一つではありませんでした。実はもう一つ、どちらかで…と言うことで頂いていたお題がありまして。
それが表題の、王道プロレスとストロングスタイルの違いについて、でした。せっかくなのでこちらも私なりに解釈をしてみたいと思います。
昨今のプロレス人気は完全に新しいものであり、連綿と続くプロレスの歴史にまた次の1ページが生まれたなと思います。ではその前のページにびっしり、古いラブホテルのポエムノートみたいに書き込まれている言葉はどんなものだったか。
それが王道プロレスとストロングスタイルについて、だったと思います。
つまり、両方ともすでに教科で言えば現代社会ではなく歴史のカテゴリに入ったプロレスの専門用語みたいなものであり、今だからこそ様々な解釈を楽しみつつ語ることのできる概念なのではないかなと。
まずそこを踏まえておかないとまとまるものもまとまりません。情報も選択肢もごく限られていた時代の人ほど後世にその縛りを残したがるし、原理主義的な思考と行動に陥りやすいのはどのジャンルも同じですね。
一般的にストロングスタイルと言えばアントニオ猪木さん。そして王道プロレスはジャイアント馬場さんという、日本のプロレス界をリードしてきた二大巨頭のイメージで語られます。それぞれのプロレスに対する価値観や信念を第三者がカテゴライズするにあたって考えたキャッチフレーズのようなものです。棚橋弘至選手はご自身の著書でストロングスタイルを
ただの言葉、そして呪いの言葉だった、
と書いていますが当時のファンや関係者にあまりに浸透したせいで今度は抜け出すこともままならず、抜け出されちゃ困る人たちによって呪文のように使われてきたのがストロングスタイルでした。正直言えば、私が中学生ぐらいの時に読んでたプロレス専門誌は、ストロングスタイルとか猪木イズムとかそういう言葉は実に肯定的で聖典のような扱いで使われることもままありました。
イズム、という言葉は便利なもので、ストロングスタイルというフレーズに対する補助輪みたいな感じでよく一緒に書かれていました。ストロングスタイルとは猪木イズムを表現するにあたってのキャッチフレーズだった、と。
おそらく王道プロレスという言葉は、ストロングスタイルという言葉によって中身はよくわからないけどとりあえず文章にされたことで向こうの方が伝わりやすくなったことに対する言葉だったと思います。
アントニオ猪木さんといえば異種格闘技戦や日本人トップ選手同士の対戦、中東や北朝鮮で試合を行うなど革新的なイメージがあります。それに対する普遍的なプロレスという意味での王道。ジャイアント馬場さんは、日本に根付いたプロレスというコンテンツにおいて常に王道を歩んできた、というイメージを持つ言葉だと思います。
力道山さんの弟子としてスタートし、アメリカに渡って活躍し現地の大手団体のチャンピオンと多数対戦。帰国してからも力道山亡き後の日本プロレス協会を牽引しつつ日米を往復して試合をし、全日本プロレスを設立後も米マット界との密接な関係を続けてきたジャイアント馬場さんは、確かに王道という言葉が相応しいと思います。しかしやはり、どうしても地味で起伏に乏しいと思われがちでした。
実際のところを言えば王道もストロングも大した変わりはなく、職人レスラーの時にも申し上げましたが馬場さんも猪木さんも単純に、そしてかなり高度なレベルで
いつ誰とどこで試合をしてもプロレスを成立させることが出来た
のであって、両名とも王道もストロングも自称してはいないのです。恩恵を受けたことはあるのでしょうけれど。
ストロングスタイルとは、アントニオ猪木というキャラクターを王道的な背景から浮き上がらせるためのデコレーションでもあったのではないでしょうか。マトモに馬場さんと張り合っても仕方がない、もっと違うこと、もっと派手なこと、壮大なことをやりたい。そうして猪木さんはプロレスの枠を超えた仕掛けを打ち出していきます。馬場さんはプロレスの枠の中を分厚く充実させていきます。
両者ともにプロレスであることに違いはないのですから、どちらにせよファンに支持されて今日までその歴史が残されています。
私としては、今日までの両巨頭の歴史を一言で先ず言い表すのに便利な言葉、くらいのことでその違いや解釈についてさして思い入れはありません。
これぞストロングスタイル!どどーん!!
まさに王道プロレス!!ででーーん!!
みたいな大袈裟で無駄な熱ばかり持たせた表現があまり好きではないので、この辺りに過剰な思い入れを持っている人からすれば面白くないのでしょうが…どうも私はそうした過剰な意識を持たされることが苦手なもので…。
そういえば私の敬愛する理不尽大王こと冬木ボスの著書「理不尽大王の高笑い」においても、国際プロレスから全日本プロレス、その後に新日本プロレスにも出場した冬木さんが
「ストロングスタイルなんてベタベタなアメリカンプロレスだぞ」
とバッサリ言っていました。その当時はピンと来なかったのですが、要するにアントニオ猪木さんのやっていたことはフォーマットこそプロレスの枠を超えた部分があったけど中身は完全にバディ・ロジャースとかあの辺のやったことだぞと。
そしてそのバディ・ロジャースこそ、ジャイアント馬場さんが惚れ込んだ稀代のプロレスラーだったのです。両巨頭の出発点は同じ日本プロレス協会。
アメリカに渡り、同じスター選手を見て、同じ国で同じ時代にスターになった。
その二人を形容するフレーズが全く違ったイメージを持たされているにもかかわらず原点が同じだというこのメビウスの輪。これがあるからプロレスは面白い。
正直ここまでだらだら書いていますが身も蓋もないことを言えば王道プロレスもストロングスタイルも
どっちでもいい
し、
どっちも好き
だし、
どっちも変わらない
と私は思うのです。キャッチフレーズとデコレーションが違うだけで中身は同じだからです。牛丼と牛めし、軍艦巻きのネギトロと細巻きのネギトロみたいなもんです。美味しく食べられれば別に文句もないので…おそらく私が新日VS全日の枠外でプロレスを好きになったことも大きいと思いますが、もうすでにそんな時代でもなかったのでしょう。
あの頃はこの二つの概念を際立たせて競わせ、常に比較することでプロレスという文化が育まれてきた。今はそうした歴史を楽しむことも出来る。良い時代になったものですね。
それが表題の、王道プロレスとストロングスタイルの違いについて、でした。せっかくなのでこちらも私なりに解釈をしてみたいと思います。
昨今のプロレス人気は完全に新しいものであり、連綿と続くプロレスの歴史にまた次の1ページが生まれたなと思います。ではその前のページにびっしり、古いラブホテルのポエムノートみたいに書き込まれている言葉はどんなものだったか。
それが王道プロレスとストロングスタイルについて、だったと思います。
つまり、両方ともすでに教科で言えば現代社会ではなく歴史のカテゴリに入ったプロレスの専門用語みたいなものであり、今だからこそ様々な解釈を楽しみつつ語ることのできる概念なのではないかなと。
まずそこを踏まえておかないとまとまるものもまとまりません。情報も選択肢もごく限られていた時代の人ほど後世にその縛りを残したがるし、原理主義的な思考と行動に陥りやすいのはどのジャンルも同じですね。
一般的にストロングスタイルと言えばアントニオ猪木さん。そして王道プロレスはジャイアント馬場さんという、日本のプロレス界をリードしてきた二大巨頭のイメージで語られます。それぞれのプロレスに対する価値観や信念を第三者がカテゴライズするにあたって考えたキャッチフレーズのようなものです。棚橋弘至選手はご自身の著書でストロングスタイルを
ただの言葉、そして呪いの言葉だった、
と書いていますが当時のファンや関係者にあまりに浸透したせいで今度は抜け出すこともままならず、抜け出されちゃ困る人たちによって呪文のように使われてきたのがストロングスタイルでした。正直言えば、私が中学生ぐらいの時に読んでたプロレス専門誌は、ストロングスタイルとか猪木イズムとかそういう言葉は実に肯定的で聖典のような扱いで使われることもままありました。
イズム、という言葉は便利なもので、ストロングスタイルというフレーズに対する補助輪みたいな感じでよく一緒に書かれていました。ストロングスタイルとは猪木イズムを表現するにあたってのキャッチフレーズだった、と。
おそらく王道プロレスという言葉は、ストロングスタイルという言葉によって中身はよくわからないけどとりあえず文章にされたことで向こうの方が伝わりやすくなったことに対する言葉だったと思います。
アントニオ猪木さんといえば異種格闘技戦や日本人トップ選手同士の対戦、中東や北朝鮮で試合を行うなど革新的なイメージがあります。それに対する普遍的なプロレスという意味での王道。ジャイアント馬場さんは、日本に根付いたプロレスというコンテンツにおいて常に王道を歩んできた、というイメージを持つ言葉だと思います。
力道山さんの弟子としてスタートし、アメリカに渡って活躍し現地の大手団体のチャンピオンと多数対戦。帰国してからも力道山亡き後の日本プロレス協会を牽引しつつ日米を往復して試合をし、全日本プロレスを設立後も米マット界との密接な関係を続けてきたジャイアント馬場さんは、確かに王道という言葉が相応しいと思います。しかしやはり、どうしても地味で起伏に乏しいと思われがちでした。
実際のところを言えば王道もストロングも大した変わりはなく、職人レスラーの時にも申し上げましたが馬場さんも猪木さんも単純に、そしてかなり高度なレベルで
いつ誰とどこで試合をしてもプロレスを成立させることが出来た
のであって、両名とも王道もストロングも自称してはいないのです。恩恵を受けたことはあるのでしょうけれど。
ストロングスタイルとは、アントニオ猪木というキャラクターを王道的な背景から浮き上がらせるためのデコレーションでもあったのではないでしょうか。マトモに馬場さんと張り合っても仕方がない、もっと違うこと、もっと派手なこと、壮大なことをやりたい。そうして猪木さんはプロレスの枠を超えた仕掛けを打ち出していきます。馬場さんはプロレスの枠の中を分厚く充実させていきます。
両者ともにプロレスであることに違いはないのですから、どちらにせよファンに支持されて今日までその歴史が残されています。
私としては、今日までの両巨頭の歴史を一言で先ず言い表すのに便利な言葉、くらいのことでその違いや解釈についてさして思い入れはありません。
これぞストロングスタイル!どどーん!!
まさに王道プロレス!!ででーーん!!
みたいな大袈裟で無駄な熱ばかり持たせた表現があまり好きではないので、この辺りに過剰な思い入れを持っている人からすれば面白くないのでしょうが…どうも私はそうした過剰な意識を持たされることが苦手なもので…。
そういえば私の敬愛する理不尽大王こと冬木ボスの著書「理不尽大王の高笑い」においても、国際プロレスから全日本プロレス、その後に新日本プロレスにも出場した冬木さんが
「ストロングスタイルなんてベタベタなアメリカンプロレスだぞ」
とバッサリ言っていました。その当時はピンと来なかったのですが、要するにアントニオ猪木さんのやっていたことはフォーマットこそプロレスの枠を超えた部分があったけど中身は完全にバディ・ロジャースとかあの辺のやったことだぞと。
そしてそのバディ・ロジャースこそ、ジャイアント馬場さんが惚れ込んだ稀代のプロレスラーだったのです。両巨頭の出発点は同じ日本プロレス協会。
アメリカに渡り、同じスター選手を見て、同じ国で同じ時代にスターになった。
その二人を形容するフレーズが全く違ったイメージを持たされているにもかかわらず原点が同じだというこのメビウスの輪。これがあるからプロレスは面白い。
正直ここまでだらだら書いていますが身も蓋もないことを言えば王道プロレスもストロングスタイルも
どっちでもいい
し、
どっちも好き
だし、
どっちも変わらない
と私は思うのです。キャッチフレーズとデコレーションが違うだけで中身は同じだからです。牛丼と牛めし、軍艦巻きのネギトロと細巻きのネギトロみたいなもんです。美味しく食べられれば別に文句もないので…おそらく私が新日VS全日の枠外でプロレスを好きになったことも大きいと思いますが、もうすでにそんな時代でもなかったのでしょう。
あの頃はこの二つの概念を際立たせて競わせ、常に比較することでプロレスという文化が育まれてきた。今はそうした歴史を楽しむことも出来る。良い時代になったものですね。
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