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自意識動物園で踊ろうよ

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簡単おやつ(そういうお名前の方なのだ)さんの漫画を買いまして。
濁音時代、とタイトルがついた、その日々の記憶や感情を元にした作品がとてもよくて。フォロワーさんの作品を大袈裟に褒めるのは好きじゃないのですが、これは
何処をどう褒めても大袈裟になる
そのぐらい、トーキョーの片隅で起こったミクロン単位の日々と出来事のお話でした。

自堕落で、周囲に溶け込めなかった頃。ダメを共有して、ダメを餌にして自我を保つ。自分よりダメな奴が居る、自分と同じぐらいダメな奴が居るって、安心するというか、ダメでもいいし、ダメなのがいい、と思えてとても居心地がいい。そういう時期が誰しもあって。
舞台はそういう生活を送る、一人の女子美大生のアパートメント

だいたいダメ人間集合体というのは恋愛や友情なんてのもなく、ダメな奴がダメなまま冬越しのテントウムシ見たいに集まるからギリギリ成り立つのであって。そこに異性や色恋が絡むとロクなことにならないのに、異性とは色恋したい絡みたいと思う自分(この場合は私だ)が居て。まあ異性じゃなくても絡んでくれた人が居たけど(これも私。デカかった)

主人公はネットでよく見る男性に、何となく惹かれて行った。その切っ掛けや決定打が何だったのか、たぶん自分でもわからないというか、ズルズルと向かっていった先のセックスがあって。だけど、その自堕落で自虐をひけらかす男は、多分もっと何も考えてないか、ハナからそれ目当てぐらいのことで。
何も目新しいことは起こらないし、目覚ましいドラマもない、目が覚めたら終わりの明け方の夢みたいな生活が、徐々に終わりを迎えて行く。だってダメなんだもん、もっとダメな奴と一緒に居たら、そりゃ、もたないよね……というだけのハナシ。

彼女は自分のしてきたことが何なのかわからないまま
オフパコ
の四文字で塗りつぶされた儚い日常を抱えて泣いたり悔やんだりしている

だけど結局、クズでニートでダメな奴でも、嫌いになっても好きでいる。

クズニートのダメ男が、自分で自分をクズニートのダメ男だと言っている。それだけの事だったのかも知れない。
だけどそのクズニートのダメ男が、一時的に彼女の心を揺り動かして、行動を起こさせた。そしてこの作品のおしまいまで、それを支配してしまっている。

何者でもない人たちの、何物でもない日常や些細な出来事が、世の中に充満している。そのほんの一粒の日々がコレで、私はこういう作品がとても好きだし、とても良かったと思う。
絞り出すように描かれ、写され、届けられた、シンプル過ぎて心配になりそうな作品でもある
簡単おやつさんから、思ってたのと違ってたらすみません、と言われて、いったい私は、彼女の作品に何を期待して、どんな作品だと思って待っていたんだろう?と思ったけれど
正直に言えば、期待するとか何か目当てがあるとかじゃなく……この人が描くなら見てみたい、内容も自分が避けたい種類のものじゃなかった。ただそれだけのことだった気がする。

色恋も情熱も感情も快楽も別離も後悔も写真も動画も
全部、簡単な四文字にしてしまえる
身も蓋もないことがとてもよくて、元も子もないことがとても救いで
だって元も子もないんだもん、失くしたって居なくなられたって、元から何もないんじゃん。そのぐらい呆気ない物語をイチイチ抱えて生きてたら、身が持たないよ。

身が持たないから、文字を、漫画を、絵を、音を、映像を、写真を使って吐き出しているんじゃなかろうか。少なくとも私はそうだ。

小心者で自分の恥が何より怖い私には、ああいうダメクズニートを自称し自嘲しながらヘラヘラ出来る奴が、羨ましくは無いけど気に食わないし多分キライだ。何故かと言えば自分には出来ないことをやって、結果たまにはイイ思いをしてやがるからだ。
だけどそういう奴にしたって、何を考えてどうして生きてるのかなんて誰にも分らないし、そこに惹かれる人や、その男にも友達がいるかもしれないし

この作品の物語はとても小さなものだけど、この物語が転がっている町はとても広くて、狭い部屋の中で蠢くそれぞれの物語が落とし込まれた、いい漫画だったと思います

ご本人へリプライでお伝えしたことでは全然書き足りずに、こうして思うまま書いてみましたが、何が言いたくて、どんな感想を、どう書きたかったのか
書いてるうちにわからなくなってしまった
ただ私は、自分の好みとして
何者でもない人たちの何物でもない物語
がとても好きで、愛おしく思う

この作品の主人公と作者は同一ではないだろうし、全部ホントじゃないにしても。それを物語として描き出し、作品として世に出たのだから
その中に込められた記憶や感情、五感の名残りは嘘や無駄にならなかったし、私は、これを描いた簡単おやつさんの次の作品も見てみたいと思うし、何年かけてもまた何か描いてほしいなと思います

自意識動物園って、いいフレーズだなと思ったのでタイトルに使わせてもらっちゃいました
すみません

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