上 下
874 / 1,299

第800回。クマさんといっしょ。

しおりを挟む
2018年3月31日は久しぶりに友人のクマさんとラーメンを食べに行った。
近所にもあるけど、わざわざ安城の横綱ラーメンまで。途中のクルマん中でアレコレ話すのが楽しいのだ。
この日の議題は中学の同級生で部活のマスコット的存在だった白井君、通称大ちゃんの話。
大ちゃんがいたからみんなわりとまとまってたし、大ちゃん本人がなした功績よりも、彼がそこにいたことだけで随分と我々は助けられていたし楽しませてもらっていた。と思う。
そんな話。


大ちゃんというのは、色白でぽっちゃり型で大人しい男だった。
柔道部に入ったはいいがそんなに強くもなく、内気で物静か。
白くてプニプニしてるんでよく加藤君につつかれていた。割とぼんやりしてることも多く、どっちかっていうと文系の方が性に合ってそうだったな。
いい加減でだらしないところもあって、たまに練習やデカいとこだと一泊二日の合宿もバックレたりと話題にも事欠かない。
よく先生には怒られてたし、後輩にも負けちゃうし、佐野君にはプロレス技かけられるし、彼自身が中学校生活や部活動について今どう思っているかはわからないけど、同窓会の時期になると必ず私は電話を入れるし、彼は今スーパーマーケットで働いているので年末は忙しく毎年参加は出来ないまでもとりあえずちょっと話したりは出来ている。
気の優しい男だが女子ウケは頗る悪く、もっぱら男子生徒のマスコットだった。後輩からも大ちゃん!と呼ばれていたがナメられているからではなく親しみを持たれていたのだと私は思う…ナメられたり嫌われたりバカにされるようなことはしてないからだ。
彼は彼なりに真面目にやっていたし、たまにサボったり怒られたりするのなんかみんなお互い様だしな。

そんな大ちゃんの思い出話は尽きない。
みんなで色んなところに遊びに行くときは彼も必ず仲間に加わってたし、バカなこともあればちょっといい話もあるし、大会中にみんな(女子も含む)の財布を預かったリュックのなかに洗ってなくて足の裏が真っ黒になったソックスが一緒に入ってて、それを見た安藤さん(美人)が悲鳴をあげた話とかもある。
海水浴に行って砂に埋められそうになったのが着いた仁崎の海水浴場は砂じゃなく石だったので窮地を脱したり、その海水浴に行くのに当日になって行けないって電話してきて。
家まで行って連れに行こうとしたらなんと夏休みの宿題を全然やってなくて、父親から外出禁止を言い渡されていたり。

あんときはお母さんがマンツーマンで見張ってるとこで朝から宿題広げて唸ってたっけな。
みんなでお母さんにお願いして、その日だけ外出させてもらった。
なんとか支度をして家を出て、すぐ
テメー!
とみんなから袋叩きに遭った(もちろん遊びでだ)が、それでもみんな大ちゃんと遊びたかったんだ。

そんな大ちゃんについて、みんなが見ていた幻だったらどうしよう、って話になった。
集団幻覚とか都市伝説とか色々考えられる。
みんな自分の中の辛いことや思春期で成長期の不安、大人になるということの汚れ穢れみたいなものを自分以外の何かに投影するようになる。いわば依り代のようにしてみんなの意識の中でだけ育まれた
大ちゃん
という存在。概念。
それはやがて妄想が幻覚になり、幻覚が実体を持ったかのように振舞うようになる。
みんなの頭の中で生み出された
大ちゃんという存在
が文字通り独り歩きを始める。
そして奇妙な事件が人知れず起き、忘れられていった。

数十年後。部活の仲間が久しぶりに再会したのは顧問の先生の突然の訃報が切っ掛けだった。
葬儀の席で交わされる会話に混じるノイズのような記憶。
大ちゃん、って、いたよね?
恐る恐る切り出した安藤さんの美しく白い素肌の横顔は心なしか青ざめて震えているようだった…。

とまあ、そんなお話にしたら面白そうだよね、と。
顧問の先生まだまだ全然元気だし。
あと安藤さんをヒロインにしたのは私が河合さんと安藤さん、二人いた女子部員でどっちが好みかって話の時に安藤さん派だったから。
去年の同窓会で久しぶりに会ったけどまた美人になってたな。

でさ。みんなの中でだけ生きてた大ちゃんが、当時新婚で子供も生まれたばかりだった先生のどす黒い部分にも触れてしまい…子供たちは子供たちのどす黒い部分を大ちゃんという架空の存在を通すことで受け止めたり飲み込んでいった、また忘れることが出来たのに対して、大人のどす黒い部分というのは抱え続けなくてはならない、終わりのないマラソンのようなもので。
結局、中学を卒業してバラバラに進学した私たちはいつしか大ちゃんの事を忘れていった。大ちゃんに背負わせた色んな感情、不安、成長に伴うあれやこれも一緒に。だけど先生だけはそこにとどまって、日々の生活を送っている。
大ちゃんは、そんな先生の中にだけ残っていたんだ…。

大ちゃんは、生きていた…?
大ちゃんって、ホントに居た…?
大ちゃんって、ホントは居た…?

おぼろげな記憶を頼りにかつての故郷に向かう佐野(私だ)、熊谷、山田(同級生で大ちゃんと一番仲が良かった)、そして安藤が目にした真実とは…!?

何しろ登場人物の名前が全部そろってる上にキャラクターも出来上がってるからポンポン浮かぶ。でもそれは内輪の話が基になっているからで、これ全部ちゃんと書くとすげえ長さになるなあ…あと安藤さんって書いちゃうともう下手なこと書けないよなあ…せっかく18きn何でもないです。絞めないで(安藤さんは黒帯、キッドさんは白帯)

なんか面白いお話になりそうだな、と思ったけど、こんな話をしたってだけでどうメモしたらいいかわからなかったのでここにこんな風に残しておくことにする。
エッセイをメモ帳代わりにすな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

50歳の独り言

たくやす
エッセイ・ノンフィクション
自己啓発とか自分への言い聞かせ自分の感想思った事を書いてる。 専門家や医学的な事でなく経験と思った事を書いてみる。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

6年生になっても

ryo
大衆娯楽
おもらしが治らない女の子が集団生活に苦戦するお話です。

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

処理中です...