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第747回。松山座観戦記 めいんいべんと

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第七試合めいんいべんと
男子六人タッグマッチ60分1本勝負
松山勘十郎座長
松山ポンポン選手
MIKAMI選手
VS
怨霊選手
CHANGO選手
松山団九郎選手

爆笑と狂乱、退廃と混沌とをコンクリートミキサーにかけてブチまけた大衆プロレス松山座2月公演もいよいよメインイベント。
6人中3人が私の先輩というこの6人タッグマッチ。
松山団九郎選手、元は大阪で活動する若手選手の伊禮タケシ選手に、新潟の民話に伝わる団九郎狸という狐狸妖怪が憑りついた姿。元々のパワーと見事なスープレックスが見物で、ポテンシャルは松山座でも随一。伊禮選手の試合も何度か見たけれど、豪快かつ爽快、見てスカッとする選手です。
怨霊選手はインディーマットの生きる伝説…生きてるんだか死んでいるんだかわかりにくいけど、そのビジュアルと独特のキャラクターと抜群の技のキレで一躍大ブレイクし今日(こんにち)に至るまで第一線で活躍している。試合中は一切言葉を発しないうえ表情もかなり読み取りにくいのだが、実はリボンをつけたり飛んで来たおひねりをキャッチしてガッツポーズをするなど意外と可愛いところもある。

そしてCHANGO選手。ずっと松山座や他の団体が主催する名古屋近郊の大会でも試合は組まれていたけど僕が見に行けなかったり、試合後に会場を出てしまわれていたりで中々ご挨拶が出来ていなかった。実に10年ぶりぐらいの再会でした。
あの頃は物静かで朴訥な人だな、といった感じで、だけど闘龍門をやめようとする僕を怒鳴ったり頭ごなしに否定したり、もちろんやめちまえなんて言うこともなく、淡々と自分の思いを含めて話してくれた。ノミ市に連れて行ってくれたときに、そのバスの車内や、市場の雑然とした通路を歩きながら。あの日の青すぎる空と排気ガスの匂いがする道路を今でも僕は覚えています。
あと、そのとき買って食ったばかりのチュロスのお店が違法営業だったのか警察の見回りが来るが早いか真っ先にシャッターを閉めてたのも。
練習にしても日頃の生活にしても、いつも優しい人だった。
それがリングに上がって来るのを見てビックリ、スプレー缶を噴射し、ゲラゲラ笑い、そのリングネーム(CHANGO=チャンゴとはスペイン語でサルの意)の通り試合を引っ掻き回す。
身軽で憎たらしくてすばしっこい、会場をヒートさせるイヤなヤツだ。でも技のキレは抜群でフワっと飛んだりズバっとキックが入ったりする。自分が万が一選手になっていたら絶対戦いたくないタイプの相手だ。そうやって翻弄しておいて試合が過熱してくると仕留めに来る。
ちなみに試合後の売店でやっとご挨拶をさせて頂いたときには、あの頃ののんびりした話し方に戻っていた。同じく先輩のアミーゴ鈴木さんの時もそうだったけど、プロレスラー恐るべし…!リングに上がるとこうも変わるのか。

とにかくこのパワー、テクニック、そして知能犯とバランスの取れたトリオに対して、華やかなトリオが当たる。

MIKAMI選手は前回の出場前に怪我をしてしまい、今回が満を持しての登場。
DDT時代の、あのラダーをめぐる一連の戦いは伝説になっている。
ちなみに前回も怪我をおして来場し、ファンサービスに努めていたというから一流の選手は凄い…!
しかして今回の試合ぶりは、恐るべき跳躍力を活かしたハイフライムーブの数々をたっぷり見せてくれたばかりか、フィニッシュもMIKAMI選手の450°スプラッシュだった。これはもう言葉で説明するのが難しいのだが、コーナー最上段から高速で回転しダウンしている相手にボディスプラッシュをお見舞いするという超高難易度の技。これが生で見れただけでも有難い。

松山ポンポン選手。名前は可愛いけど見た目も結構ハデな動ける巨漢選手。
元はヤマダマンポンド選手といって、そこからのポンポン…と思われる。
2016年頃の王子ベースメントモンスターにて勘十郎さんの応援に行った際に第弐試合に出場していたのがヤマダマンポンドさんだった。物販にご挨拶に行ったら勘十郎さんが
「そういえば、久しぶりにヤマダマンポンドに会ったよ~」
と言っていたので、まさか僕の先輩ですか…?と聞いてみたらその通り。
ちょうど勘十郎さん(13期生)と僕(2005年前期)の間に入門していたとのこと。
世間は狭い。
そこから最初は松山座にもヤマダマンポンドとして出場、そこで松山座の毒とご自身の毒が融合。松山ポンポンが誕生したというわけ。
今回の試合でも存在感を存分に発揮、団九郎選手との取っ組み合いは見ごたえがあったし、試合終盤には怨霊選手のパウダー攻撃が誤爆したのを見逃さず、金属製の特製プレート(陰陽盤といいます)で一撃食らわすなど(あとで踏んで凹みを直しているところをお客さんに撮られていた)活躍していた。

そして我が先輩、松山勘十郎座長である。このお方が居るから今も私はプロレスが好きで居られる。
今回の公演も座長のこだわり、センス、そしてプロレス愛が凝縮されていた。そしてそれは生野区民センターのリゲッタIKUNOホールを飲み込んで爆発した。
試合はCHANGOさんとの応援合戦からスピーディーなルチャリブレと展開する。腕を極め丸め込み、素早く立ち上がってまた走る。
CHANGOさんも応戦しロープを使った腕攻めなどを見せる。
あの時、道場のリングで見ていた練習が長い年月を経てプロレスの試合として昇華する。この瞬間のひとつひとつを目に焼き付けていたい。思わず身を乗り出して食い入るように見る。面白おかしいだけじゃない、ホンモノの(だって神戸を経てメキシコで一流の先生に習ってるもん)ルチャ・リブレの神髄、その片鱗を垣間見せる。僕は心底この人たちが先輩で誇らしい。

怨霊選手とMIKAMI選手はともにリングインするだけで会場が湧き上がる。ご存知の方はもう堪らない。初めての人もここまでの周囲の反応と、本人同士の立ち振る舞いから只事ではないのを察してざわめき始める。素早い攻防の末場外にいった怨霊選手が、MIKAMI選手に飛ばせまいとお客さんを人質にとる。インディープロレスならではの光景だ。というか、実に90’sインディーって感じがする。町のプロレス。それがインディー。
そのインディーマットでのし上がってきた二人のマッチアップは、それだけでチケット代の元が取れるぐらいの価値がある。
空中殺法と言えば松山勘十郎座長の矢のようなトペ・スイシーダも炸裂した。
年々大きくなっていく勘十郎さんだが、このトペ・スイシーダのキレ味とスピード、美しさは絶品で衰えることがない。今回は頑張って写真を撮ったので
飛ぶぞ!
走る!
シュワッチ!(飛んだ)
の連続写真がキレイに取れた。

試合は前述の通りMIKAMI選手の勝利に終わったわけだが、今回も最高の充実感、満足感、高揚感に浸れる素晴らしい公演だった。
プロレスが好きで良かった。プロレスを応援して良かった、と心から思える。
今回は仕事のこともあって早々に会場を後にしなくてはならず残念だったけれど(バタバタしててポンポン選手にご挨拶しそびれてしまった…いつもいいねありがとうございます!)また次の5月公演も楽しみに、生きていこうと思います。
ありがとうございました。
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