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第741回。松山座観戦記 第一試合 江利川祐選手 VS 寧々∞D.a.i選手
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第一試合
男子シングルマッチ20分1本勝負
江利川祐(えりかわ ひろし)選手
VS
寧々∞D.a.i選手
ウルティモ・ドラゴン校長いわく
第一試合は本当に大事なんだぞ!
とのこと。
私がそう教わったわけではなく、大先輩スカイデJr選手のブログからの引用です。そして江利川選手は、そんなスカイデJr選手と同期。私にとっては遠い先輩にあたる選手なのですが、怪我によりなんと99年の入門から2014年のデビューまで10年以上も不屈の闘志を燃やし続けた凄い人。遅咲きも遅咲きだけど気迫のこもったファイトが魅力。
かたや寧々∞D.a.i(ねねむげんだい、と読む)選手は自衛官から男性ストリッパーとして活躍しながらプロレスラーとしても活動中。ピンクが似合う別嬪さんで、毎回必ず女性と間違えるお客さんがいる。
喋るとカラカラとした明るいお兄さんって感じで、見た目とのギャップ満載のハスキーボイスも素敵だけど、そんな可憐な外見と裏腹に鋭い打撃とスピーディーな空中殺法が持ち味。
その日の試合の流れ、お客さんの気持ち、会場の雰囲気も握る興行の基礎となる第一試合。
今回のラインナップを座長はご自身のブログで
この座組の中でバチっとイメージが決まった試合
と評しておりました。
確かにパッと見ても武骨で泥臭い江利川選手と、きらきらして可愛い・カッコイイと黄色い声援を集める寧々選手では真逆の印象を抱くし、戦いぶりに関してもイメージがし易い。
それだけ試合にすんなり集中出来て、また見ていてもどちらを応援するか選びやすい。
俺は江利川!私は寧々ちゃん!と声援も分かれていたので、とてもわかりやすい図式になりました。
試合はやはり江利川選手がガンガン行くが、スピード感あふれる打撃と細かなテクニックで寧々選手が徐々にペースを掴んでゆく。
ダウンした江利川選手を踏みつけながら
「お前よく見たらオッサンやな!」
と口撃も。この歯に衣着せぬ物言いも魅力の一つで、まさにレスラーにとって喋りも立派な武器であると言えよう。相手をよく見る余裕の表れでもある。
やがてボディスラムで江利川選手を叩き付け、寧々選手の十八番であるムーンサルトプレスが決まって勝負あり。
江利川選手もバックドロップを繰り出すなど健闘するも、やはりインパクトといい試合の組み立てといい寧々選手に一日の長があったように思えました。少なくとも余裕を見せる、ということは出来たわけでしたし。
そこが、武骨で不器用な江利川選手らしいといえばそれもそうなのではあるのですが。その底力を発揮する前に勝負をつけられてしまった、逃げ切られてしまったという感じでした。
江利川選手が10年かかっても諦めなかったプロレス。
私が3か月も持たずに諦めてしまったプロレス。
客席最前列とリングの中にはそのぐらいの差があって。
かつて私や生徒を集めてウルティモ・ドラゴン校長は言った。
「みんなもプロレス、やりたいよな。俺、プロレスやってるときが一番幸せなんだよ」
好きな事をやって生きていけることが物凄く幸せで、その為の努力は物凄く大変で。
まして校長は医療ミスにより腕が不自由になってしまっても諦めなかった。世界のウルティモ・ドラゴンであってもそんな試練を乗り越えて今の幸せを掴んだのだ。
プロレスに限らず、本当にやりたいことをまっすぐやって生きていくことは至難の業だし、あの頃ずっと色んな理由をつけて迂回して来た問題に今更ブチ当たっている自分を省みると情けないったらない。
だけどそんな思いや負い目も、田舎の映画会みたくリングの上に映してしまえばカタルシスになる。
そしてそんな青春の遅れてきた主人公が、江利川選手だと思うのだ。不屈の闘志、諦めずに生きる、その最もシンプルで愚直なまでの生き様がリングの上で躍動する。
そこにお客さんは自分を重ねたり、また生きるパワーをもらって家路につくのだと思う。
反対に寧々選手は、非日常的でどこか遠い世界から来たような出で立ちをしている。それとは裏腹な身近に感じるキャラクターも相まって、アニメやゲームのキャラクターみたいな印象だ。プロレスという世界に現実と非日常の両面からアプローチをする第一試合。松山勘十郎座長のセンスが爆発したマッチメイクだったと思います。座長の思惑がどこにあったのかはご本人のみぞ知るところなのですが。
少なくとも私は、このカードに込められた見えざる手の指先が指し示したテーマが
夢
にあったと思います。
将来の夢も、明け方の悪夢も、みな同じ夢。
自分のかつての夢を捻じ曲げて、悪夢のような日々に埋もれて未来を、青春を浪費していないかい?
前を向いて戦い続ければ、きっと道は開ける。
きっと座長ご自身がそうであったように。
現実に江利川選手が、自分の目の前でリングに立ち、立派に戦っているように。
夢を見るということは、それ相応の代償と戦いが付き物だ。
勝負に勝っても負けても、悔いのない戦いをしなくちゃいけないな。
そんな思いを新たにする第一試合でした。
ありがとうございました。
男子シングルマッチ20分1本勝負
江利川祐(えりかわ ひろし)選手
VS
寧々∞D.a.i選手
ウルティモ・ドラゴン校長いわく
第一試合は本当に大事なんだぞ!
とのこと。
私がそう教わったわけではなく、大先輩スカイデJr選手のブログからの引用です。そして江利川選手は、そんなスカイデJr選手と同期。私にとっては遠い先輩にあたる選手なのですが、怪我によりなんと99年の入門から2014年のデビューまで10年以上も不屈の闘志を燃やし続けた凄い人。遅咲きも遅咲きだけど気迫のこもったファイトが魅力。
かたや寧々∞D.a.i(ねねむげんだい、と読む)選手は自衛官から男性ストリッパーとして活躍しながらプロレスラーとしても活動中。ピンクが似合う別嬪さんで、毎回必ず女性と間違えるお客さんがいる。
喋るとカラカラとした明るいお兄さんって感じで、見た目とのギャップ満載のハスキーボイスも素敵だけど、そんな可憐な外見と裏腹に鋭い打撃とスピーディーな空中殺法が持ち味。
その日の試合の流れ、お客さんの気持ち、会場の雰囲気も握る興行の基礎となる第一試合。
今回のラインナップを座長はご自身のブログで
この座組の中でバチっとイメージが決まった試合
と評しておりました。
確かにパッと見ても武骨で泥臭い江利川選手と、きらきらして可愛い・カッコイイと黄色い声援を集める寧々選手では真逆の印象を抱くし、戦いぶりに関してもイメージがし易い。
それだけ試合にすんなり集中出来て、また見ていてもどちらを応援するか選びやすい。
俺は江利川!私は寧々ちゃん!と声援も分かれていたので、とてもわかりやすい図式になりました。
試合はやはり江利川選手がガンガン行くが、スピード感あふれる打撃と細かなテクニックで寧々選手が徐々にペースを掴んでゆく。
ダウンした江利川選手を踏みつけながら
「お前よく見たらオッサンやな!」
と口撃も。この歯に衣着せぬ物言いも魅力の一つで、まさにレスラーにとって喋りも立派な武器であると言えよう。相手をよく見る余裕の表れでもある。
やがてボディスラムで江利川選手を叩き付け、寧々選手の十八番であるムーンサルトプレスが決まって勝負あり。
江利川選手もバックドロップを繰り出すなど健闘するも、やはりインパクトといい試合の組み立てといい寧々選手に一日の長があったように思えました。少なくとも余裕を見せる、ということは出来たわけでしたし。
そこが、武骨で不器用な江利川選手らしいといえばそれもそうなのではあるのですが。その底力を発揮する前に勝負をつけられてしまった、逃げ切られてしまったという感じでした。
江利川選手が10年かかっても諦めなかったプロレス。
私が3か月も持たずに諦めてしまったプロレス。
客席最前列とリングの中にはそのぐらいの差があって。
かつて私や生徒を集めてウルティモ・ドラゴン校長は言った。
「みんなもプロレス、やりたいよな。俺、プロレスやってるときが一番幸せなんだよ」
好きな事をやって生きていけることが物凄く幸せで、その為の努力は物凄く大変で。
まして校長は医療ミスにより腕が不自由になってしまっても諦めなかった。世界のウルティモ・ドラゴンであってもそんな試練を乗り越えて今の幸せを掴んだのだ。
プロレスに限らず、本当にやりたいことをまっすぐやって生きていくことは至難の業だし、あの頃ずっと色んな理由をつけて迂回して来た問題に今更ブチ当たっている自分を省みると情けないったらない。
だけどそんな思いや負い目も、田舎の映画会みたくリングの上に映してしまえばカタルシスになる。
そしてそんな青春の遅れてきた主人公が、江利川選手だと思うのだ。不屈の闘志、諦めずに生きる、その最もシンプルで愚直なまでの生き様がリングの上で躍動する。
そこにお客さんは自分を重ねたり、また生きるパワーをもらって家路につくのだと思う。
反対に寧々選手は、非日常的でどこか遠い世界から来たような出で立ちをしている。それとは裏腹な身近に感じるキャラクターも相まって、アニメやゲームのキャラクターみたいな印象だ。プロレスという世界に現実と非日常の両面からアプローチをする第一試合。松山勘十郎座長のセンスが爆発したマッチメイクだったと思います。座長の思惑がどこにあったのかはご本人のみぞ知るところなのですが。
少なくとも私は、このカードに込められた見えざる手の指先が指し示したテーマが
夢
にあったと思います。
将来の夢も、明け方の悪夢も、みな同じ夢。
自分のかつての夢を捻じ曲げて、悪夢のような日々に埋もれて未来を、青春を浪費していないかい?
前を向いて戦い続ければ、きっと道は開ける。
きっと座長ご自身がそうであったように。
現実に江利川選手が、自分の目の前でリングに立ち、立派に戦っているように。
夢を見るということは、それ相応の代償と戦いが付き物だ。
勝負に勝っても負けても、悔いのない戦いをしなくちゃいけないな。
そんな思いを新たにする第一試合でした。
ありがとうございました。
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