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プロレスラー養成学校の日常 リンゴジュース編
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プロレスラー養成学校の日常 リンゴジュース編
2005年6月の暑い陽射しの中。Mexico.
僕は同期で当時24歳だった廣川さんと一緒にバスに乗って買い物に来ていた。メガマート。日本で言えば田舎のイオンよりもうちょっとデカいぐらいのショッピングモール。そこの駐車場にバス停とロータリーがあって、ベンチに屋根が付いていた
夏季のメキシコは朝8時からカンカン照りで、ちょっと動くと汗だくになってしまうくらい暑い。が、高度2千メートルに位置するナウカルパンの街は湿度が低くて、日陰に入ると実に過ごしやすかった。寮にはエアコンが無かったが全然問題ない。昼間でも平気だった
逆に朝や夜はグッと冷え込むので窓を開けたまま寝てしまうと乾燥と冷えで喉や鼻を傷めてしまうこともあった
そんなメヒコの気候と、泡の出る冷えた飲み物は相性バッチリ。私は未成年なので当然として、廣川さんも成人していたが寮では禁酒だったため二人してよく炭酸入りのリンゴジュースを飲んでいた。カラダづくりの観点から、あまり砂糖の多い炭酸飲料を飲むことは控えていたのだが……まあ、何しろコレが美味いんだ
両手にダンベル並みの重量の食料品や雑貨をぶら下げて、広大な敷地をエッチラオッチラ歩いてバス停に辿り着くと汗だっくだく
でも、日陰に座るとヒヤっとして、ちょっと排気ガス臭いけど心地よい風が吹く
そこで買い物袋からManzana Liftを2缶取り出して廣川さんと分けっこする。二人そろってベンチに腰掛け、パシッ!とプルタブを引く。一気に半分ぐらい飲み干して、プハーっと見上げた空の青いこと
ビルの屋上にかかった看板でLuis Miguel がニカッ!と眩しいスマイルを見せている
あの景色と一緒に飲み干した濃いリンゴ味が今でも忘れられない
何しろ寮には20人ぐらいのプロレスラーとプロレスラー見習いが居る。食事の量は相当なものだ。結構色んなものを作って食べることが出来たのは、当時の料理長が今プロレスリング・ノアで活躍中の大原はじめ選手で、大原さんはプロレス入りする前に調理師の資格を取得してから入門したことから栄養や予算の事など炊事についてを任されていたから。普通の塩、しょうゆ、味噌、ちり鍋などのチャンコ鍋に加えてハンバーグや鶏の唐揚げ、果てはカレーライスにコンソメ味チャンコ、ボルシチ風チャンコなんてのもあった
私の同期の廣川さんも料理が得意で、実家が焼肉屋さんなのでデビュー前からウルティモ・ドラゴン校長に「KB廣川(コリアンバーベキューヒロカワ)」というリングネーム?を頂戴するぐらい料理の腕前には定評があった
そこで、よく大原さんは廣川さんがチャンコ番の時に色んな実験チャンコを作ってみることにしたらしかった。私にも時々
「なあ佐野、コンソメチャンコってどうだろう?」
「コンソメにトマーテ(スペイン語でトマトのこと)を入れたらボルシチっぽくならないかなあ」
と聞いてくれたことがあった。そしてそれは全部美味しかった
廣川さんの料理の腕前に命を救われた話を前にしたと思うけど
(唐揚げデスマッチ!キッドさん危機一髪!?、参照)
あの頃ホントに美味しいものが食べられてたのは有難いことだったなと、つくづく思う…だってメキシコだぜ?フツーにしてたら言葉も生活習慣も主食も違うし、味付けの極端な国で、こんな風に不自由なく食事が摂れることの有難みよ……
だけど当時は中々タイヘンで、特にジュースというと果汁100%のをなるべく飲むようにしてたんで案外とコーラや他のジュースを飲む機会は、多くはなかった
屋台のタコス食う時にコカ・コーラやペプシを飲んだり、寮の外で飲むことはあったかな。寮の中では、自分たちで果物を絞ってジュースを作って飲んでいた。というか、ある日突然ウルティモ・ドラゴン校長が
「コレでみんな美味いジュース飲めよ!」
と、ドーン!とデッカいミキサー?ジューサー?を買って来た(どうも旅先のカフェで飲んだ100%オレンジジュースが美味かったので寮でも飲みたかった説、というのもあった)ので、近所のメルカード(市場のこと)にある八百屋さんで果物をキロ単位で買って来ちゃ絞って飲んでいた
ナランハ(オレンジ)が7キロ
マンサーナ(リンゴ)が7キロ
リモーン(レモン)が2キロ
あとニンジンが5キロ…ニンジンってスペイン語でなんて言うんだっけ!?えーと、えーと、と店先で売り物のニンジンを指さして困ってたら八百屋のお兄さんが
「ニンジン、ネ?」
とニホンゴで教えてくれたっけな。そこは代々、闘龍門の生徒が買い物に来るのでお店の方もニホンゴを覚えてくれてたらしい。アレは可笑しかったな。陽気でお人好しなメキシカンの一面がよく出ている出来事だった
が!その全部合わせるとそこらのダンベルより重たい果物を網に入れて担いで帰るのは私ら練習生の仕事だったので結構タイヘンだったな
けどやっぱり、果物自体の味が濃いのか美味しかった。冷蔵庫で冷やしておいて、朝もう気温が上がったくらいにグイっと飲むと爽やかでね
こないだ、炎天下に自販機でジュース買おうとしたら三ツ矢サイダーの
炭酸入り100%リンゴジュース
が売ってて。思わず買って飲んだ時に思い出したので書き出してみた
考えてみりゃアップルタイザーとかじゃんね。でも自販機で買って飲むっていうのが良かったね
そんなプロレスラー養成学校の日常
2005年6月の暑い陽射しの中。Mexico.
僕は同期で当時24歳だった廣川さんと一緒にバスに乗って買い物に来ていた。メガマート。日本で言えば田舎のイオンよりもうちょっとデカいぐらいのショッピングモール。そこの駐車場にバス停とロータリーがあって、ベンチに屋根が付いていた
夏季のメキシコは朝8時からカンカン照りで、ちょっと動くと汗だくになってしまうくらい暑い。が、高度2千メートルに位置するナウカルパンの街は湿度が低くて、日陰に入ると実に過ごしやすかった。寮にはエアコンが無かったが全然問題ない。昼間でも平気だった
逆に朝や夜はグッと冷え込むので窓を開けたまま寝てしまうと乾燥と冷えで喉や鼻を傷めてしまうこともあった
そんなメヒコの気候と、泡の出る冷えた飲み物は相性バッチリ。私は未成年なので当然として、廣川さんも成人していたが寮では禁酒だったため二人してよく炭酸入りのリンゴジュースを飲んでいた。カラダづくりの観点から、あまり砂糖の多い炭酸飲料を飲むことは控えていたのだが……まあ、何しろコレが美味いんだ
両手にダンベル並みの重量の食料品や雑貨をぶら下げて、広大な敷地をエッチラオッチラ歩いてバス停に辿り着くと汗だっくだく
でも、日陰に座るとヒヤっとして、ちょっと排気ガス臭いけど心地よい風が吹く
そこで買い物袋からManzana Liftを2缶取り出して廣川さんと分けっこする。二人そろってベンチに腰掛け、パシッ!とプルタブを引く。一気に半分ぐらい飲み干して、プハーっと見上げた空の青いこと
ビルの屋上にかかった看板でLuis Miguel がニカッ!と眩しいスマイルを見せている
あの景色と一緒に飲み干した濃いリンゴ味が今でも忘れられない
何しろ寮には20人ぐらいのプロレスラーとプロレスラー見習いが居る。食事の量は相当なものだ。結構色んなものを作って食べることが出来たのは、当時の料理長が今プロレスリング・ノアで活躍中の大原はじめ選手で、大原さんはプロレス入りする前に調理師の資格を取得してから入門したことから栄養や予算の事など炊事についてを任されていたから。普通の塩、しょうゆ、味噌、ちり鍋などのチャンコ鍋に加えてハンバーグや鶏の唐揚げ、果てはカレーライスにコンソメ味チャンコ、ボルシチ風チャンコなんてのもあった
私の同期の廣川さんも料理が得意で、実家が焼肉屋さんなのでデビュー前からウルティモ・ドラゴン校長に「KB廣川(コリアンバーベキューヒロカワ)」というリングネーム?を頂戴するぐらい料理の腕前には定評があった
そこで、よく大原さんは廣川さんがチャンコ番の時に色んな実験チャンコを作ってみることにしたらしかった。私にも時々
「なあ佐野、コンソメチャンコってどうだろう?」
「コンソメにトマーテ(スペイン語でトマトのこと)を入れたらボルシチっぽくならないかなあ」
と聞いてくれたことがあった。そしてそれは全部美味しかった
廣川さんの料理の腕前に命を救われた話を前にしたと思うけど
(唐揚げデスマッチ!キッドさん危機一髪!?、参照)
あの頃ホントに美味しいものが食べられてたのは有難いことだったなと、つくづく思う…だってメキシコだぜ?フツーにしてたら言葉も生活習慣も主食も違うし、味付けの極端な国で、こんな風に不自由なく食事が摂れることの有難みよ……
だけど当時は中々タイヘンで、特にジュースというと果汁100%のをなるべく飲むようにしてたんで案外とコーラや他のジュースを飲む機会は、多くはなかった
屋台のタコス食う時にコカ・コーラやペプシを飲んだり、寮の外で飲むことはあったかな。寮の中では、自分たちで果物を絞ってジュースを作って飲んでいた。というか、ある日突然ウルティモ・ドラゴン校長が
「コレでみんな美味いジュース飲めよ!」
と、ドーン!とデッカいミキサー?ジューサー?を買って来た(どうも旅先のカフェで飲んだ100%オレンジジュースが美味かったので寮でも飲みたかった説、というのもあった)ので、近所のメルカード(市場のこと)にある八百屋さんで果物をキロ単位で買って来ちゃ絞って飲んでいた
ナランハ(オレンジ)が7キロ
マンサーナ(リンゴ)が7キロ
リモーン(レモン)が2キロ
あとニンジンが5キロ…ニンジンってスペイン語でなんて言うんだっけ!?えーと、えーと、と店先で売り物のニンジンを指さして困ってたら八百屋のお兄さんが
「ニンジン、ネ?」
とニホンゴで教えてくれたっけな。そこは代々、闘龍門の生徒が買い物に来るのでお店の方もニホンゴを覚えてくれてたらしい。アレは可笑しかったな。陽気でお人好しなメキシカンの一面がよく出ている出来事だった
が!その全部合わせるとそこらのダンベルより重たい果物を網に入れて担いで帰るのは私ら練習生の仕事だったので結構タイヘンだったな
けどやっぱり、果物自体の味が濃いのか美味しかった。冷蔵庫で冷やしておいて、朝もう気温が上がったくらいにグイっと飲むと爽やかでね
こないだ、炎天下に自販機でジュース買おうとしたら三ツ矢サイダーの
炭酸入り100%リンゴジュース
が売ってて。思わず買って飲んだ時に思い出したので書き出してみた
考えてみりゃアップルタイザーとかじゃんね。でも自販機で買って飲むっていうのが良かったね
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