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実話怪談「びっくりばあちゃん」

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もう三十年以上前の話ですが、今でも忘れられない出来事を書きます。

 当時、私は家からすぐ近くのお寺にある幼稚園に通っていました。周囲にも大小さまざまなお寺や墓地、さらに昔ながらの商店街もある町の一角にあった、小さいながらもとても明るく楽しい幼稚園でした。
 普段は夕方になると母親がお迎えに来てくれるのですが、パートで勤め始めてからは時々おばあちゃんが徒歩で迎えに来てくれることがあって。
 幼稚園が終わって園庭で遊んでいると時折、
「おーい和哉」
 とおばあちゃんが呼んでくれる。当時、幼稚園のすぐそばにスーパーのダイエーもあって、帰りに寄り道して地下のフードコートでタコ焼きやアイスクリームも買ってくれました。私はおばあちゃん子だったので、これは嬉しいサプライズでした。
 
 年長組さんに上がった頃のこと。
 お迎え待ちの時間にテラスに座っていたシンペイ君を私と間違えて
「おーい和哉」
 と声をかけ、ヒョイと顔を覗き込んだ私のおばあちゃん。驚いたシンペイ君も、私も、おばあちゃんや先生も、友達みんなも笑っていました。
 その日以来、シンペイ君は私のおばあちゃんを
「びっくりばあちゃん」
 と呼ぶようになりました。そして私のおばあちゃんには「びっくりばあちゃん」という愛称が付きました。
 幼稚園におばあちゃんが迎えに来ると、ノブオ君やヒデシ君やマサヨシ君から
「和哉、びっくりばあちゃんが来たよ!」
 といった感じで呼ばれるようになりました。
 
 ある日のお迎え待ちの時間、例によってノブオ君が
「和哉、びっくりばあちゃんが来たよ!」
 と教えてくれました。私は喜び勇んで園庭を探し回りましたが、おばあちゃんの姿がありません。そして、その日は間もなくいつものように母が迎えに来ました。
 それからも時折、ヒデシ君やマサヨシ君が
「和哉、びっくりばあちゃん来たよ!」
 と言ってくれるのですが、何処にもおばあちゃんの姿はありません。他のお迎えに来てくれた人を見て間違えたか、びっくりばあちゃんという響きが面白くて、からかっているのかなと思っていました。

 ある日の、シンペイ君の一言を聞くまでは。

「和哉……知らないおばあさんが探してるよ」
 シンペイ君は私と見間違えられた時におばあちゃんに会っているので、びっくりばあちゃんの顔を知っていたのです。……しかし、その時シンペイ君の元にやってきたのは、
 もっと汚くて、よぼよぼの、白髪が顔の前まで垂れ下がっている、鼻の大きな見たこともないおばあさんで
「和哉を知らないかい?」
 としわがれた声でシンペイ君に尋ねてきたそうです。
 
 決して広い園庭ではありませんでしたが、私自身は遂にその知らない(不気味な)おばあさんを見ることなく卒園を迎えました。一体そのよぼよぼのおばあさんの正体と、私を探す目的は何だったのか。

 そしてもし、そのおばあさんが私を見つけていたら……今でもぞっとします。
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