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第710回。リフォームしようよ。

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我が家の旧家屋を建て直すことになった。と言っても我が家というのは二部構成?になっていて、通りに面した部分が旧家屋。その奥に小さなお庭があって、私が産まれるちょっと前に建てたほうの家がある。カタカナのコの字型になっていて、この前面の_の部分が築60年ぐらいたってて危ないんで取り壊し&建て直しと相成ったというわけ。
旧家屋であり現在は一階部分が車庫、二階は物置になっている。その昔、祖父がオートバイ屋さんを経営していた名残で作業場と事務所があり、今はそれぞれの空間がそのまま車庫になっているのだ。
色々と思い出深いが、確かに何度か地震にも遭っているし木造だし、もう収拾がつかないぐらい色んなものが仕舞いこまれているので片付けるのも大変。これまでにも私の友達であるところのアサクラ君、アマノ君、ヤマちゃんらに手伝ってもらって古い布団や衣類、段ボールなどを片っ端から処分したり、私の持ってたマンガやビデオ、おもちゃもだいぶ捨てたり売ったりした。レコード類もかなり売り払ってしまった。ウルトラマンのソフビは今じゃ500円ぐらいでちんまりしたものになってしまったが、その前の800円ぐらいするちょっと大きめサイズのも30体はあった。が、殆ど残っていない。特に私が子供のころ大のお気に入りだった用心棒怪獣ブラックキングは他の荷物に潰されてしまい、ひしゃげてしまっていた。実際のブラックキングよりひどい目に遭っている。ごめんよ…。

物置になる前は、実は母と亡き伯父の部屋だったらしい。
伯父は私が産まれるちょっと前に、大学入学を待たずして交通事故で亡くなってしまった。どんな人だったのかとても興味があるし素敵な人だったらしいが、彼が存命だったら恐らく私は生まれていなかっただろう。そして母ももっと幸せな結婚生活を送っていたに違いない。返す返すも惜しい人を亡くした。その事実の権化が私だというのが何よりも証拠だ。
そんな伯父の遺品も色々と出てきた。昔はアコースティックギターやコンガが出てきたんで、よく弾いて遊んでいた。マーチンというとてもいいものだったらしい。今もこれは保存している。
それから長いキセル。こっちは曽祖父のものだったらしい。がんばれゴエモンが大人気だった小学生の頃、学校や遊びに持っていってはクマガイ君の頭をポコスカ殴っていた。ひいじいちゃんゴメン。そしてクマガイ君ゴメン。
私が本を読んだり音楽を聴いたりするようになったのも、物置にあった大量の母所有のコレクションのおかげだった。椎名誠も北杜夫も遠藤周作もなんでもあった。レコードはそれこそヘヴィメタから歌謡曲まで揃っていた。NO FUN AT ALLの隣に沢田研二とかあったし、NIRVANAの隣に森田童子とかいうある意味正解な組み合わせもあった。

それから私が小学校低学年のころまでは、おもちゃ部屋でもあった。部屋いっぱいに祖父が買いそろえてくれたプラレールを敷き詰め、そこに色とりどりの電車を走らせてはウットリしていた。
また夜間学校の先生あった祖父(機械いじり好きが高じてオートバイ屋を譲ってこっちに転職したらしい)が分厚い図鑑も幾つも買い与えてくれて、その中には鉄道やJR特急の図鑑もあった。
なのでまずプラレールの線路をゼネコンよろしく敷き詰め、部屋の片隅までみっちり延伸し、駅前に胸像を建て、さらに今度は並べた車両のスイッチを入れると電鉄会社の社長となり走らせる電車を吟味したり、出雲そば屋を買い占めて出雲駅を独占したり、キングボンビーに熔岩の雨を降らされたりしていた。

話がややこしくなったな。
とにかく部屋いちめんに広がったレールの上を疾走するプラレールを見つつ、手元の図鑑でその列車の名前や特徴など図鑑に載っているプロフィールを音読するというのが子供のころの私の日課だったのだ。
気持ち悪いガキだな…。
お蔭で電車の名前とかだいぶ覚えた。
ただし祖父が揃えてくれたプラレールを次々と踏み潰し、ゴジラよろしくぶっ壊していったのは外ならぬその妻、私の祖母だった。当時は雨の日だけこの部屋に洗濯物を吊っていたので、その時によく踏んでいた。

月日が流れて、その頃遊んでいた鉄道模型が幾つも出てきた。
エル特急(ヘッドマークがなく、あの国鉄モデルの特急車両ってだけ)やアーバンライナー、200系やまびこ、近鉄ビスタカー、小田急ロマンスカー、名鉄パノラマスーパー、特急きらめき、さらにはTGVまである。
私はあのベージュに赤のツートンカラーをした国鉄特急が大好きなので、このエル特急はだいじにしたいところである。

着物やなんかは買い取り業者が来てくれたけど、汚れやらなんやらが酷いんで殆ど引き取ってもらえなかったそうだ。まあ、なんだかんだ難癖付けて買い叩かれて行くよりも、なんかよかったかなという気もする。結局はこっちで捨てるなりなんなりしなくちゃならないけど。

そんなわけで、積もりに積もった年月を、祖父母の思い出の旧家屋ごと、子孫である我々が片付けている。大変だが、正しい行いだとも思う。自分で自分の後片付けまで出来る人は、なかなかいない。
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