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第704回。プロレスにおけるコミカルと悪ふざけの違いについて

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私の好きなプロレス団体、プロレスリングWAVEさんが新展開を迎えている。
正直、これまでも好きになった他の団体がそれぞれ集合離散や電撃離脱や引退撤回、早々復帰、電流爆破に団体倒産と色んなことがあって、もうちょっとやそっとじゃ驚いたり悲しんだりもしなくなってしまって久しい。
だけどやっぱり、ずっと好きで微力ながら応援している団体の節目には注目しているし、気になっていた。
所属選手の退団、引退、OSAKA女子プロレスの解散、そして新しい入団選手と、寂しいことも頼もしいこともいっぱいだ。

GAMIさんがいう、「引退」もしくは「廃業」以外は円満な退社は無い、というのは何も「プロレスが好きなのではなくプロレスのキナ臭い話題をネタに独りよがりの評論家ぶってる自分が好きな奴」が言うガチとかシュートの事情(笑)などではなく、普通に考えが合わないからじゃあ別々に頑張りましょうというだけのことだと思うし、それが大人として当たり前。頑張ってればいつかまたクロスすることもあるかもしれないし、夏すみれ選手だってあんな登場の仕方で里帰りを果たしたり本当に広い視野で考えればやり方は色々ある。本人同士、関係者、ファン、色んな人の気持ちは別として、色んなやり方がある、ということだけは確かじゃないですか、と。
だから何の感情もないし、引き止めることもしないよ、と。
桜花由美選手こと新社長の方針としてフリー選手を上げないというのがあるけど、例えばどこかの団体に所属するのであれば外敵として戻って来ることもあり得るわけで。そしたらそれはそれでやっぱり面白いじゃん。今起こっていることに対して素直に楽しめないのは団体や選手の責任だけじゃないと思う。
さっきも書いたけど長いこと一つのジャンルを見てれば本当に色んなことが起こるんですれっからしの心になるのも無理はないけど、WAVEさんはそういう時、いつも何かやってくれたし、乗り越えてきてくれた。賛否両論なんあって当たり前だし、これからまた違った体制にもなるのであまりGAMIさんのことばかり書くのももしかしたら不本意かも知れませんね。急に日和って敬語になったりする。

けどもう一つ、むしろこっちが本題の、GAMIさんがブログで言っていたコミカルプロレスのこと。
「勝負を見せるプロレスラーと、プロレスの動きをするだけの人の違い」は、
やっぱり
一度徹底的に基本を叩きこまれて鍛えた人間が悪ふざけと言われようが何でも本気でやる、能ある鷹は爪を隠すということと、そうではない能ナシのプロレスごっこの違い
だと思う。
あの時代に鍛えられて、現在でもプロレスに対して「頑固」なGAMIさんだったからこそ逆にコミカルプロレスを名乗れたし、受け入れられた。それはいつでも本気だったからで、戦いという解釈を極限まで拡大したものがコミカルプロレスだったと言える。それが戦いから逸脱してしまったら、もうそれはプロレスをネタにした何か、なのではないだろうか
是非はともかく、WAVEさんの中ではそこに歴然とした差があった。

実際私が見たプロレスラーは、みんなカッコよかったし勝負していた。たとえコミカルな動きだろうとお決まりのムーブだろうと変身した姿だろうとそれがマジだったし、旧姓・広田さくら選手の記者会見での発言が全てではないだろうか。
いつも通り全力です!
と、胸を張って言えるからこそプロレスラー。
前にも書いたけど旧姓・広田さくら選手だって長与イズムを叩きこまれ、コミカルを封印しても驚異的な粘りと技術の引き出しで激戦を闘い抜けるだけの実力の持ち主。まさに能ある鷹、むしろ能があり過ぎて爪が隠れちゃうレベルの選手だと言える。
同じことは私の先輩であり大衆プロレス松山座・座長として活躍する松山勘十郎さんにも言える。昔から驚異的なスタミナの持ち主でスクワットなんかいくらやっても平気な顔をしていたし、トレーニングでは自ら率先して手本を示してくれて、出来ない私にずーっと付き合ってくれた。僅かな期間ではあったけどプロレスラーの凄さを痛感した出来事のひとつだった。
今でも勘十郎さんは試合中ずっと誰より大きな声を出して喋り続け、対戦相手にツッコミを入れ、ふざけているようで誰とでも試合をして見せるしご本人のプロレス観も実は非常に「頑固」だ。世界プロレス協会さんで試合をした時は、プロレスのリングに上がっているものの物凄く体の大きなだけの女性、との試合を成立させ、終わってみれば松山勘十郎劇場の一丁あがりだった。あの女性がリングでしたことは僅かで、そもそも出来ることもごく限られていただろう。戦いを見せるという意味の、プロレスリングとしての技術があったかも怪しい。素人目にそう思うような相手でも、一人で動き回り、受け身を取りまくり、怒鳴り、叫び、圧し潰されながらも、そこには強烈な
松山勘十郎
という名を観客に刻む一人の男がいた。
そしてその日の第弐試合に出場していたヤマダマンポンド選手も良かった。実は私の先輩で勘十郎さんの後輩でもある(この日、売店で勘十郎さんからお聞きして発覚した)ヤマダマンポンド選手は大柄だけど機敏な動きを見せる豪快なテクニシャンと言った感じの選手だった。対戦相手の神田カレーマスク選手もおかしな名前だけど動きは頗る良かった。
普通に見ていれば楽しめたこの試合に乱入して来た奴がいただけなかった。これまで見た中で最低最悪だった。プロレスのリングに上がっているだけの肉塊が革ジャンを着てがなっている。一緒に来てくれたこの日が初観戦の友達はドン引きで苦笑い。私も正直、ここまで酷いのには当たったことがない。生で見た中では指折りのダメさ加減だった。
つまりココだ。
今はどうか知らないけど、当時私が見たコイツには試合をブチ壊して自分の世界に引きずり込むだけの技量もカリスマもなかったが、涙のカリスマの真似ごとをしようとしていた。お客さんもよくご存じのプロレスっぽいこと、プロレスにありがちなこと、というネタをやってドン滑りというわけだ。
これが、コミカルプロレスとそれ以外の違いだ。ホンモノのプロレスラーが見せるからこそ面白い、そこに笑いや驚きが産まれるのがコミカルプロレスの醍醐味であって、プロレスラーに仕立て上げた人物や、自称プロレスラーが同じ事をやってもダメなのだ。
その線引きが厳しかったからこそ、コミカルプロレスという言葉が産まれ、概念となることが出来た。

私は今も以前もWAVEさんが好きだし、かつてWAVEさんに上がってた選手も変わらず応援したい、引退した人にも幸せになってほしい。渋谷シュウさんはお元気だろうか。
コミカルでもシリアスでもWAVEさんにはWAVEさんの信念があったと思うし、そこが好きだから。
その新しい門出、団体の未来、15周年、20周年とずっと応援していたいし、新体制の試合も見に行きたい。

私は田舎住まいでお金もないし仕事は忙しいしですっかりあんよが重たくなっている。プロレスラーも目指しただけでなるための努力を投げ出している。だから、プロレスというものについて偉そうなことを言う権利なんてないというのは自分が一番わかっている。
だけど、だからこそ、私はプロレスラー同士、格闘技者同士がともに尊敬の念をもって切磋琢磨し仲のいい人同士がいることもわかるし、選手の凄さ、努力のすばらしさも少しはわかるつもりだ。
知りもしない、知ろうともしない、自分の都合のいいように悪口を言う連中になんかこっちが心配したり怒ったりしなくても、選手や団体は負けっこないとも思う。でも、やっぱ悔しいじゃん。
こういう時に強い人ほど相手にしない、能ある鷹は爪を隠す、とは、まさにこのことだな。
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