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第703回。冷たいブラックコーヒー
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毎日寒いねえー(コレ書いたときは真冬だったんだから仕方ないだろ!)
というわけで真夏に飲んだブラックコーヒーの話でもしようか。
キッドさんは長年喫茶店を経営している親戚がいて、祖父母も母もコーヒーが好き(母は紅茶も好き)なので小さいころからコーヒーが身近にありました。家でも毎日コーヒーを淹れているし、どこか出かけた帰りには必ず喫茶店に寄ってくし、なーんもやること無いととりあえず喫茶店に行く。そんな暮らしをしていました。喫茶店自体もそこら中にあるし、うちの祖母はそのすべての喫茶店にコーヒーチケットを買って置いてあった。要するに前売りの回数券で、1杯300円として3000円で11枚綴ってあるんで1杯分お得っていう。しかもモーニングサービスで午前中ならトーストとサラダとゆで卵とか付くんで下手するとタダでパンとコーヒーと小さいサラダとゆで卵がもらえるっていう。
まあそんな風にコーヒーが生活に馴染んでいるんで、私キッドも子供のころからコーヒーが好き。最初は結構甘いやつが好きで、ジョージアのカフェオレかエメラルドマウンテンブレンドをよく飲んでた。色んなメーカーのを次々に飲んでみたこともあった。それは一度に飲みすぎて気持ち悪くなった。
けどダイドードリンコとUCCのが一番うまかった。
でね、中学生ぐらいんときに横浜の、みなとみらいにあったショッピングモールの一角で飲んだキャラメルマキアートが美味くってそればっかり飲んでた。ちょうど田舎の自販機に並んでる缶入りのコーヒーでもそんなのが出始めてた頃だった。それがまあ今じゃスターバックスだのドトールコーヒーだのなんだのが出来てキャラメルマキアートどころかウンタラカンタラフラペチーノだのムッソリーニだかウエスタンラリアートだか…なんだかわからないものが色々出てきて。
そんな最中に私キッドは一転してブラック派に。
どうにもブラックコーヒーだけは飲めなかったのが急に好きになったんだよ。それがホントに急でさ。
真夏の昼。港の運送会社の応接室で私と、同じ派遣会社で現場に入るお兄さんたちとで元請けの偉い人と顔合わせをしていた。外はうだるような暑さで、研修がてら内航船に入って監督に挨拶をし、作業の見学を済ませたあとで事務所に通されたので古い建物特有のタバコとコーヒーの匂いが染み付いたギンギンの冷気が心地よかった。そこで分厚いテーブルの上に置かれたアイスコーヒーにガムシロップやミルクがついていなかった。元請け会社の船積み担当の偉い人は眼鏡をかけた優しそうな人だったのではあるけど流石に言い出せず、かといって喉はカラカラ。仕方が無いと思ってひと口飲んだらこれが美味いのなんの。
一瞬でグラス1杯を飲み干してしまい、お兄様方や担当の偉い人にもひと笑い頂いたうえにおかわりもくれたのでそれも美味しく頂いた。
今思えばちょっといいコーヒーだったりしたのかもしれないし、何よりシチュエーションが良かったわな。暑いどころじゃない、箱型の灼熱地獄セットが海に浮かんでるような自動車専用の内航船。そんなとこに真夏にノコノコ入っていったら面食らうに決まっている。ずっと外で熱された鉄の塊ことスズキ・ラパンやスイフトがギッシリ並ぶのと、その自動車を走らせてくる排気ガス、さらに洋上でたっぷり熱された船体(これも立体駐車場みたいなもんでほぼ鉄板)が組み合わさると洒落じゃなく40度を軽く超えるときもあるのだ。また現場から事務所まで歩くのも、照り付ける太陽でひろーい港湾道路の遥か向こうの巨大クレーンが陽炎でちょっとユラユラしているぐらいのところを延々とトボトボ行くんだもん。ヘルメットに長袖長ズボンで。当時、港にあった建物はどれも古臭くて。あぶない刑事に出てきそうな年代に洒落てる様式として建てられたんだろうなあ。角ばっててコンクリートでくらぼったい感じのイメージ。コゲ茶色のタイルとか暗い色のレンガみたいなの使っててさ。昭和!バブル!!男の現場!!!みたいな。
なんかそんなところに、でっかーいクレーン車とかダンプとかトレーラーとかタンクローリーとかが轟々いって通り過ぎるのを見ながら歩いてると、縮尺がおかしくなりそうで。風力発電のプロペラ運んでるの見たことあるけど、アレなんかホントにデカいもんな。上でヒュンヒュン回ってるぶんにはそんな大きくも見えないけどさ。でっかーーーいトレーラーでゆーっくり運ぶんだよ。あのプロペラ一本だけ。
以来、コーヒーはブラックの冷たいのが一番好きになりました。飲んでて一番ウマイのが冷たいブラックだな。あったかいのも良いにおいがして、ゆっくり出来るときはそっちでもいい。
ふーふー言いながら冷ましつつ香りを楽しんで、いい頃合いになったらスッと飲む。やっぱり味と香りは別の楽しみがそれぞれあって、それが一緒になったときにちょっと嬉しいというか、味わい深いというのはこのことって感じになるんじゃないかねえ。
…藤岡弘さんみてえなこと言い出したぞ、このブタゲルゲ。
いやしかし毎日あんまり寒いんで真夏に飲んだアイスコーヒーの話したけど、暑いんだか冷たいんだかわかんねえな。いいか。コーヒー飲んで寝よ。
というわけで真夏に飲んだブラックコーヒーの話でもしようか。
キッドさんは長年喫茶店を経営している親戚がいて、祖父母も母もコーヒーが好き(母は紅茶も好き)なので小さいころからコーヒーが身近にありました。家でも毎日コーヒーを淹れているし、どこか出かけた帰りには必ず喫茶店に寄ってくし、なーんもやること無いととりあえず喫茶店に行く。そんな暮らしをしていました。喫茶店自体もそこら中にあるし、うちの祖母はそのすべての喫茶店にコーヒーチケットを買って置いてあった。要するに前売りの回数券で、1杯300円として3000円で11枚綴ってあるんで1杯分お得っていう。しかもモーニングサービスで午前中ならトーストとサラダとゆで卵とか付くんで下手するとタダでパンとコーヒーと小さいサラダとゆで卵がもらえるっていう。
まあそんな風にコーヒーが生活に馴染んでいるんで、私キッドも子供のころからコーヒーが好き。最初は結構甘いやつが好きで、ジョージアのカフェオレかエメラルドマウンテンブレンドをよく飲んでた。色んなメーカーのを次々に飲んでみたこともあった。それは一度に飲みすぎて気持ち悪くなった。
けどダイドードリンコとUCCのが一番うまかった。
でね、中学生ぐらいんときに横浜の、みなとみらいにあったショッピングモールの一角で飲んだキャラメルマキアートが美味くってそればっかり飲んでた。ちょうど田舎の自販機に並んでる缶入りのコーヒーでもそんなのが出始めてた頃だった。それがまあ今じゃスターバックスだのドトールコーヒーだのなんだのが出来てキャラメルマキアートどころかウンタラカンタラフラペチーノだのムッソリーニだかウエスタンラリアートだか…なんだかわからないものが色々出てきて。
そんな最中に私キッドは一転してブラック派に。
どうにもブラックコーヒーだけは飲めなかったのが急に好きになったんだよ。それがホントに急でさ。
真夏の昼。港の運送会社の応接室で私と、同じ派遣会社で現場に入るお兄さんたちとで元請けの偉い人と顔合わせをしていた。外はうだるような暑さで、研修がてら内航船に入って監督に挨拶をし、作業の見学を済ませたあとで事務所に通されたので古い建物特有のタバコとコーヒーの匂いが染み付いたギンギンの冷気が心地よかった。そこで分厚いテーブルの上に置かれたアイスコーヒーにガムシロップやミルクがついていなかった。元請け会社の船積み担当の偉い人は眼鏡をかけた優しそうな人だったのではあるけど流石に言い出せず、かといって喉はカラカラ。仕方が無いと思ってひと口飲んだらこれが美味いのなんの。
一瞬でグラス1杯を飲み干してしまい、お兄様方や担当の偉い人にもひと笑い頂いたうえにおかわりもくれたのでそれも美味しく頂いた。
今思えばちょっといいコーヒーだったりしたのかもしれないし、何よりシチュエーションが良かったわな。暑いどころじゃない、箱型の灼熱地獄セットが海に浮かんでるような自動車専用の内航船。そんなとこに真夏にノコノコ入っていったら面食らうに決まっている。ずっと外で熱された鉄の塊ことスズキ・ラパンやスイフトがギッシリ並ぶのと、その自動車を走らせてくる排気ガス、さらに洋上でたっぷり熱された船体(これも立体駐車場みたいなもんでほぼ鉄板)が組み合わさると洒落じゃなく40度を軽く超えるときもあるのだ。また現場から事務所まで歩くのも、照り付ける太陽でひろーい港湾道路の遥か向こうの巨大クレーンが陽炎でちょっとユラユラしているぐらいのところを延々とトボトボ行くんだもん。ヘルメットに長袖長ズボンで。当時、港にあった建物はどれも古臭くて。あぶない刑事に出てきそうな年代に洒落てる様式として建てられたんだろうなあ。角ばっててコンクリートでくらぼったい感じのイメージ。コゲ茶色のタイルとか暗い色のレンガみたいなの使っててさ。昭和!バブル!!男の現場!!!みたいな。
なんかそんなところに、でっかーいクレーン車とかダンプとかトレーラーとかタンクローリーとかが轟々いって通り過ぎるのを見ながら歩いてると、縮尺がおかしくなりそうで。風力発電のプロペラ運んでるの見たことあるけど、アレなんかホントにデカいもんな。上でヒュンヒュン回ってるぶんにはそんな大きくも見えないけどさ。でっかーーーいトレーラーでゆーっくり運ぶんだよ。あのプロペラ一本だけ。
以来、コーヒーはブラックの冷たいのが一番好きになりました。飲んでて一番ウマイのが冷たいブラックだな。あったかいのも良いにおいがして、ゆっくり出来るときはそっちでもいい。
ふーふー言いながら冷ましつつ香りを楽しんで、いい頃合いになったらスッと飲む。やっぱり味と香りは別の楽しみがそれぞれあって、それが一緒になったときにちょっと嬉しいというか、味わい深いというのはこのことって感じになるんじゃないかねえ。
…藤岡弘さんみてえなこと言い出したぞ、このブタゲルゲ。
いやしかし毎日あんまり寒いんで真夏に飲んだアイスコーヒーの話したけど、暑いんだか冷たいんだかわかんねえな。いいか。コーヒー飲んで寝よ。
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