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第678回。近所のトンカツ料理屋さんで。
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我が家の近所に、むかーしトンカツ料理屋さんがあった。
よくある三階建ての横に長いアパートの一階部分がテナントになってる建物の、左側の二つ分をブチ抜いてお店になっていた。結構立派なもんだ。
お向かいには、これまたむかーしからあるパチンコ屋さんだったので主なお客さんはそこから来る人たちだったと思われる。
だけど、そのパチンコ屋さんが暫く休業していた時期があって。スロット専門店にリニューアルするまでの間は随分と暇をしたようだ。
ここのトンカツが、実は大変に美味しかった。近所とはいえ最近あまり通っていないのでまだあるのかは正直わからない。
ただ、ここのお店には大変に困ったことも一つあって。
お店は普通なんだ。カウンターとテーブルと座敷があって、小綺麗で、よくある街の定食屋さんそのまんまの構えになっている。引き戸をガラガラと開けて入るとすぐ右手にレジ。
んで奥に厨房があってカウンター席。そのほかはテーブル席が並んでて、座敷もちょっとだけある。
厨房には御主人らしき、六平直政さんをもうちょっとライトめにしたようなオジサンがいて、言葉少なにトンカツを揚げている。この人の腕前が大変にいい。
問題はその奥様だ。
マッハ文朱さんをもうちょっとちんまりさせて年取ったような、明るい色のパーマ頭にメガネの愛想のいいひとなのだが、ヒレカツ丼を頼んでもトンカツ定食が来てしまう。
その日、昼前にもかかわらずパチンコ屋さんが改装中のせいか、なんなのか、お客さんは私一人だった。そして!私は!!確かに!!!
ヒレカツ丼の大盛り
を頼んだのだ!
見る人のいないテレビが小さく騒がしく鳴っている。私は飲食店のとりあえずついてるテレビが嫌いだ。我慢してケータイを見たり置いてあるマンガを読んだりしていたら
おまちどおさまー♪
と上機嫌の奥様がやってきたので机の上に目をやると
皿の上に揚げたてのトンカツとキャベツ、ミニトマト
お椀に入ったお味噌汁
お新香
ご飯
どっからどう見てもトンカツ定食!
マッハ文朱こと奥様も「はーいトンカツ定食でぇーす」と言ってそれを置いていってしまった。
え、あ、えっと…?
しかし、ここまで折角作ってもらってしまったし…値段もちょっとトンカツ定食のが安い。
マッハが間違えたのだろうか。
出てくるのは早かったし、厨房でもめてる様子もない。つまり気付いていないのか…?
仕方がないのでそのまま食べた。そしたらビックリするぐらい美味しかった。
それだけに、返す返すもヒレカツ丼が食べたかった。
で、そういうことがあってからも一年ぐらい行かない間にお向かいのパチンコ屋さんがスロット専門店になってリニューアルオープン。少しは忙しくなったであろうそのお店に再び行ってみることにした。
今度はカウンターに三人組のおじさん、テーブル席におじいさんくらいの人が座っていた。
私はお店の隅っこの、テレビの見えない角度の席に座ってメニューを一通り見て今度こそ
ヒレカツ丼の大盛り
を食べようと、その旨をマッハ文朱をより老けさせた感じの奥様に申し立てた。
マッハは厨房に戻って行って、そのままそれぞれのテーブルに料理が運ばれているようだった。
ヒレカツ丼というからには、卵でとじてあるのだろうか。
それともソースカツ丼みたいにご飯の上にごろっと乗っかっているのだろうか。
なんでもいいがソースカツ丼って言うほど食べたくも美味しくもないのは、あのご飯の上の大量の生キャベツのせいだと思うのは私だけだろうか。あれは皿の上のトンカツだからこそ必要なのであって、ホカホカの白いご飯に冷たい生キャベツを乗せるのは双方の良さを殺し、なおかつカツの魅力まで半減させるということにしかならないのではないか。
それぞれご飯とソースカツはイイものなんだから、必要なのはスムーズなジョイントであって無用なクッションではない。
プロレスの試合でレスラーが二人いたら、あと必要なのはレフェリーであって弁護士じゃねえだろっていう。ちょっと違うか。まあいいや。
そんなことを考えていたら、マッハがこっちに向かってお膳を運んで来る。
視界の端でちょっと見えちゃったんだよぅ。
トンカツ定食。
あーアレは他の人の注文かなーと思ったけどコッチ方面に座ってるの私だけなんだよぅ。
んでマッハが言うんだよぅ。
「はーいトンカツ定食でぇーす」
食ったさ。美味しかったさ。
でも流石に二度も、感覚が開いているとはいえヒレカツ丼をトンカツ定食に変換されるのはなあ…。と思って以来長いこと足が遠のいております。今度また行ってヒレカツ丼を頼んでみようか。
三度目の正直になるか、二度あることは三度ある、になるか。
後者だと思うなあ。後者の方が収まりもいいなあ。
でも、あの武骨なおじさんのヒレカツ丼も食べてみたいんだよぅ、おじさんに直接
「すみませーん!ヒレカツ丼ひとつ!」
って聞こえるように頼んでみようかな…。
なんかさ、注文と違う時って言いづらくない?
明らかに違ってるんだよこの場合も。それでも言いにくい…!
また別の私の大好きなお店で、普通のチャーハンのことを五目チャーハンと呼んでいることに気付かずに
「あれ?頼んだの普通のチャーハンじゃなかったでしたっけ」
って言っちゃって変な空気になったのを、今コレ書いてて思い出して、思い出し申し訳ナッシングに苛まれているので今日はこの辺で。
よくある三階建ての横に長いアパートの一階部分がテナントになってる建物の、左側の二つ分をブチ抜いてお店になっていた。結構立派なもんだ。
お向かいには、これまたむかーしからあるパチンコ屋さんだったので主なお客さんはそこから来る人たちだったと思われる。
だけど、そのパチンコ屋さんが暫く休業していた時期があって。スロット専門店にリニューアルするまでの間は随分と暇をしたようだ。
ここのトンカツが、実は大変に美味しかった。近所とはいえ最近あまり通っていないのでまだあるのかは正直わからない。
ただ、ここのお店には大変に困ったことも一つあって。
お店は普通なんだ。カウンターとテーブルと座敷があって、小綺麗で、よくある街の定食屋さんそのまんまの構えになっている。引き戸をガラガラと開けて入るとすぐ右手にレジ。
んで奥に厨房があってカウンター席。そのほかはテーブル席が並んでて、座敷もちょっとだけある。
厨房には御主人らしき、六平直政さんをもうちょっとライトめにしたようなオジサンがいて、言葉少なにトンカツを揚げている。この人の腕前が大変にいい。
問題はその奥様だ。
マッハ文朱さんをもうちょっとちんまりさせて年取ったような、明るい色のパーマ頭にメガネの愛想のいいひとなのだが、ヒレカツ丼を頼んでもトンカツ定食が来てしまう。
その日、昼前にもかかわらずパチンコ屋さんが改装中のせいか、なんなのか、お客さんは私一人だった。そして!私は!!確かに!!!
ヒレカツ丼の大盛り
を頼んだのだ!
見る人のいないテレビが小さく騒がしく鳴っている。私は飲食店のとりあえずついてるテレビが嫌いだ。我慢してケータイを見たり置いてあるマンガを読んだりしていたら
おまちどおさまー♪
と上機嫌の奥様がやってきたので机の上に目をやると
皿の上に揚げたてのトンカツとキャベツ、ミニトマト
お椀に入ったお味噌汁
お新香
ご飯
どっからどう見てもトンカツ定食!
マッハ文朱こと奥様も「はーいトンカツ定食でぇーす」と言ってそれを置いていってしまった。
え、あ、えっと…?
しかし、ここまで折角作ってもらってしまったし…値段もちょっとトンカツ定食のが安い。
マッハが間違えたのだろうか。
出てくるのは早かったし、厨房でもめてる様子もない。つまり気付いていないのか…?
仕方がないのでそのまま食べた。そしたらビックリするぐらい美味しかった。
それだけに、返す返すもヒレカツ丼が食べたかった。
で、そういうことがあってからも一年ぐらい行かない間にお向かいのパチンコ屋さんがスロット専門店になってリニューアルオープン。少しは忙しくなったであろうそのお店に再び行ってみることにした。
今度はカウンターに三人組のおじさん、テーブル席におじいさんくらいの人が座っていた。
私はお店の隅っこの、テレビの見えない角度の席に座ってメニューを一通り見て今度こそ
ヒレカツ丼の大盛り
を食べようと、その旨をマッハ文朱をより老けさせた感じの奥様に申し立てた。
マッハは厨房に戻って行って、そのままそれぞれのテーブルに料理が運ばれているようだった。
ヒレカツ丼というからには、卵でとじてあるのだろうか。
それともソースカツ丼みたいにご飯の上にごろっと乗っかっているのだろうか。
なんでもいいがソースカツ丼って言うほど食べたくも美味しくもないのは、あのご飯の上の大量の生キャベツのせいだと思うのは私だけだろうか。あれは皿の上のトンカツだからこそ必要なのであって、ホカホカの白いご飯に冷たい生キャベツを乗せるのは双方の良さを殺し、なおかつカツの魅力まで半減させるということにしかならないのではないか。
それぞれご飯とソースカツはイイものなんだから、必要なのはスムーズなジョイントであって無用なクッションではない。
プロレスの試合でレスラーが二人いたら、あと必要なのはレフェリーであって弁護士じゃねえだろっていう。ちょっと違うか。まあいいや。
そんなことを考えていたら、マッハがこっちに向かってお膳を運んで来る。
視界の端でちょっと見えちゃったんだよぅ。
トンカツ定食。
あーアレは他の人の注文かなーと思ったけどコッチ方面に座ってるの私だけなんだよぅ。
んでマッハが言うんだよぅ。
「はーいトンカツ定食でぇーす」
食ったさ。美味しかったさ。
でも流石に二度も、感覚が開いているとはいえヒレカツ丼をトンカツ定食に変換されるのはなあ…。と思って以来長いこと足が遠のいております。今度また行ってヒレカツ丼を頼んでみようか。
三度目の正直になるか、二度あることは三度ある、になるか。
後者だと思うなあ。後者の方が収まりもいいなあ。
でも、あの武骨なおじさんのヒレカツ丼も食べてみたいんだよぅ、おじさんに直接
「すみませーん!ヒレカツ丼ひとつ!」
って聞こえるように頼んでみようかな…。
なんかさ、注文と違う時って言いづらくない?
明らかに違ってるんだよこの場合も。それでも言いにくい…!
また別の私の大好きなお店で、普通のチャーハンのことを五目チャーハンと呼んでいることに気付かずに
「あれ?頼んだの普通のチャーハンじゃなかったでしたっけ」
って言っちゃって変な空気になったのを、今コレ書いてて思い出して、思い出し申し訳ナッシングに苛まれているので今日はこの辺で。
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