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第674回。さよならちんちんウェルカムまんまん、読みました!
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今回の記事は
ファッションビ〇チ明乃ちゃん
の作者でもお馴染み、(背筋も)美し過ぎる漫画家・鈴木倫先生の最新作で上川依子さん原作の
さよならちんちんウェルカムまんまん
(OLになりたくて性適合手術しました)
実業之日本社
のご紹介となります。内容に関する記述も御座いますので未読の方はご注意ください。
リイドカフェさんで連載されていたファッションビ〇チ明乃ちゃんでも顕著な、どこまでも明るくハイテンションな下ネタと、物凄いお下品なギャグでも妙にいやらしくなくカラっとしたタッチは今回も健在。上川さんの逞しさと明るさを鈴木倫先生だからこそギャグにできた渾身の一作。
内容は原作者であり主人公の上川さんが男性としての体から心身共に女性となり、その後のケアまで触れたドキュメンタリー。OLとして働きながらも体は未だ男性であり、その違和感や社会的に男性として扱われることにも抵抗を感じていた日々が続く。
普通の会社員さんとして働きつつも、こうした大きな悩みを抱えている人が居る。
いま表に出てくる話は、どうしても大袈裟になりがちで。
それは啓蒙やアピールも兼ねている場合があるからで、市井の人に目を向けたケースはあまりないのではないかなと思います。
そして勤め先の会社(カンパチー)の解体を機にタイに行って性適合手術(SRS)を受けることを決意する。手にタイ産の果物を持って高らかに掲げながら。
表紙の隅っこに書いてあるからまさかと思ったら思いっきり濁点を隠すだけという形で書いてある。昔見た陰惨なフランス映画で、観葉植物の葉っぱやベッドサイドテーブルなどの家具、しまいにはそれぞれの役者の体で巧みに陰部を隠しているシーンを思い出す。もしくはオースティンパワーズ。
先ずは先輩方を(ラブホに)招集して相談に乗ってもらうことに。
ひとくちにSRSと言っても様々な種類があり、費用や術後のケア、形状まで異なっているという。
3人の先輩方はそれぞれの方法でミル貝を水揚げし、アワビを得たのだ。これだけ書いていると海女さんの漫画みたいだけど、ホントにミル貝やアワビを使った見事な表現の連続で…鈴木倫先生の本質、いや技量の程が存分に伺える。
実は私も二十歳ぐらいの頃にニューハーフの人とお付き合いをしていた時期があって。
その人はミル貝も全部ついていて(タマタマだけは取る手術をするつもりがあった)女性ホルモンの注射をしていた。彼女はやはり女性として自意識を持っていつつも、少なくとも私には悩んでいるところはあまり見せなかった。むしろミル貝を持っているということをネタにして色んな話を聞かせてくれた。女性ホルモンを打っているので胸は膨らんでいるけれど付いているので銭湯では男湯に入る。がしかし周囲の注目を集めてしまいしまいには係員が駆け付けてみんなして遠巻きに見られている。仕方がないからタオルをめくってチラっと見せたらみんな波が引くように散っていった、とか。
ちなみにすっごい美人だったけど私より遥かに立派でデカかった。びっくりしたねー。そして女性はいつもこんな大変な思いをしてくれているのか、と文字通り痛感もした。
あれから相手に対しての感謝の度合いが変わった気がする。
その他にも性転換手術を受けたよ、と言ってた人とも手合わせして頂いたこともあったけど、あの時の人は膣ナシ方式だったように思われる。性転換、と簡単に言っていたけど性適合手術とはまた違うのだろうか。単純に性別を変えるだけではなく、それまでの色々な積み重ねの末に決断することだという当たり前のことに、この作品を読むことで今更ながら気が付いた。
よりぴちゃん、こと上川さんはついにタイに渡る。
SRSの保険適用、手術の費用、必要な物、持っていくと良い物、アテンドと呼ばれる何かとケアしてくれる業者さんのことなども詳しくわかりやすく描かれている。タイと日本では性に関する考えから社会常識、福祉、何もかも違うわけで。
だからこそタイでは一般的であり、設備も整っているのかも知れない。日本だって老人向けのリハビリ整形外科はやたらあるし綺麗でデカいもんな。
体育の日をタイ行く日にしたよりぴちゃんが現地で手術を受け、ダイレーションと呼ばれる拡張についてスパルタ教育を受け、そして現地でも国際品評会。
各国それぞれの事情がありつつも、みんなタイにやってきて手術を受けた。
家族や周囲の理解を得られない人もいて、そういえば私がお付き合いしていた人は割と家族の理解はあったそうで。最終的には郷里の実家に帰っていったんだっけな。岡山だったか兵庫だったか、元気かな。
よりぴちゃんはこうして女性となって帰国し、様々な手続きに追われることになる。
この辺りのお役所の対応なんかも、もっとスムーズになるといいと思うけど…他のもっと身近な手続きでも時間かかっちゃってるし難しいわな。
特に目を引いたのは性自認と性的指向の違いについて。
ハッキリとした区別があるというよりは曖昧な場合もある。
だけどやっぱり人それぞれ違いがあるわけで。
想いを遂げられるかは別として、社会常識として性別や性的指向を理由にした差別がなくなるといいなと思うし、私自身も少ないながらも色々な経験をさせて頂いて思うのは
自分にとって、その人が可愛ければカンケーないじゃん
ということ。この国では法律で定められた成人年齢があるので、それさえクリアしていればあとは少なくとも性別に関してはどちらでも構わないと思う。
ギャップがあることや、背徳感だとか、楽しみ方は色々あるだろうしそれを声に出すか出さないかはともかく。
自分が「この人素敵だな」と思えて、その人と一緒に居られるのならそれでいいと思うし、そうであってほしいと思う。
どんなに性差別やセクハラなどの問題が山積みになっても、また解決されても、モテるモテないは別問題だから私にとってどこまで自分にカンケーある話かというのは…考えると寂しくなっちゃうのでやめておくけど、あくまでこの作品も自分の内側の性の話であって、その性がまた外に向くときは別の問題が沢山ある。
もっとも、よりぴちゃんは出国までにはヨロシクやっていたようだけれど…。
こうした話はタレントさんとかだと良くも悪くも波及力もあるし大きく扱われる。
逆に一般の人のドキュメンタリーだと話が重たく、暗くなりがちだ。
明るい話もあれば、そうではない部分もあるだろう。どちらもそこに嘘は無いと思う。
だけどこの作品は、タイトルからしてすんごいけど内容はもっと凄い。
何しろ性適合手術ということで今までと自分というもののあり方が変わる、そんな人の話だから。
それを親友であり漫画家の鈴木倫先生がキャッチして、見事に明るく笑える骨太な作品となって送り出された。
ミル貝や泣きアワビちゃんはともかく、コンプラの四文字であんなギリギリのイケないカットまで載せちゃうなんて、オッス!オラ驚(おでれ)えたぞ!
性というものを社会生活から切り離すことは出来ないし、もっと単純な答えとちょっとした思いやりで済むことを男女の無駄に風呂敷だけ大きな問題に広げちゃう人も少なくない。
草の根レベルだけど、こうして日々逞しく暮らしている人が居るということを知るだけでもきっと有意義なことだと思うし、この
さよならちんちんウェルカムまんまん
は、上川依子さんと鈴木倫先生のタッグによる名勝負だったと言える。ところどころにブッ込まれる爆笑エピソードと、それが見事に描かれている。事の重大さとギャグのギャップを存分に楽しんだ後は、自分も明日からまた面白おかしく生きよう、とちょっと思えた気がする。
そんな作品でした。ありがとうございました。
ファッションビ〇チ明乃ちゃん
の作者でもお馴染み、(背筋も)美し過ぎる漫画家・鈴木倫先生の最新作で上川依子さん原作の
さよならちんちんウェルカムまんまん
(OLになりたくて性適合手術しました)
実業之日本社
のご紹介となります。内容に関する記述も御座いますので未読の方はご注意ください。
リイドカフェさんで連載されていたファッションビ〇チ明乃ちゃんでも顕著な、どこまでも明るくハイテンションな下ネタと、物凄いお下品なギャグでも妙にいやらしくなくカラっとしたタッチは今回も健在。上川さんの逞しさと明るさを鈴木倫先生だからこそギャグにできた渾身の一作。
内容は原作者であり主人公の上川さんが男性としての体から心身共に女性となり、その後のケアまで触れたドキュメンタリー。OLとして働きながらも体は未だ男性であり、その違和感や社会的に男性として扱われることにも抵抗を感じていた日々が続く。
普通の会社員さんとして働きつつも、こうした大きな悩みを抱えている人が居る。
いま表に出てくる話は、どうしても大袈裟になりがちで。
それは啓蒙やアピールも兼ねている場合があるからで、市井の人に目を向けたケースはあまりないのではないかなと思います。
そして勤め先の会社(カンパチー)の解体を機にタイに行って性適合手術(SRS)を受けることを決意する。手にタイ産の果物を持って高らかに掲げながら。
表紙の隅っこに書いてあるからまさかと思ったら思いっきり濁点を隠すだけという形で書いてある。昔見た陰惨なフランス映画で、観葉植物の葉っぱやベッドサイドテーブルなどの家具、しまいにはそれぞれの役者の体で巧みに陰部を隠しているシーンを思い出す。もしくはオースティンパワーズ。
先ずは先輩方を(ラブホに)招集して相談に乗ってもらうことに。
ひとくちにSRSと言っても様々な種類があり、費用や術後のケア、形状まで異なっているという。
3人の先輩方はそれぞれの方法でミル貝を水揚げし、アワビを得たのだ。これだけ書いていると海女さんの漫画みたいだけど、ホントにミル貝やアワビを使った見事な表現の連続で…鈴木倫先生の本質、いや技量の程が存分に伺える。
実は私も二十歳ぐらいの頃にニューハーフの人とお付き合いをしていた時期があって。
その人はミル貝も全部ついていて(タマタマだけは取る手術をするつもりがあった)女性ホルモンの注射をしていた。彼女はやはり女性として自意識を持っていつつも、少なくとも私には悩んでいるところはあまり見せなかった。むしろミル貝を持っているということをネタにして色んな話を聞かせてくれた。女性ホルモンを打っているので胸は膨らんでいるけれど付いているので銭湯では男湯に入る。がしかし周囲の注目を集めてしまいしまいには係員が駆け付けてみんなして遠巻きに見られている。仕方がないからタオルをめくってチラっと見せたらみんな波が引くように散っていった、とか。
ちなみにすっごい美人だったけど私より遥かに立派でデカかった。びっくりしたねー。そして女性はいつもこんな大変な思いをしてくれているのか、と文字通り痛感もした。
あれから相手に対しての感謝の度合いが変わった気がする。
その他にも性転換手術を受けたよ、と言ってた人とも手合わせして頂いたこともあったけど、あの時の人は膣ナシ方式だったように思われる。性転換、と簡単に言っていたけど性適合手術とはまた違うのだろうか。単純に性別を変えるだけではなく、それまでの色々な積み重ねの末に決断することだという当たり前のことに、この作品を読むことで今更ながら気が付いた。
よりぴちゃん、こと上川さんはついにタイに渡る。
SRSの保険適用、手術の費用、必要な物、持っていくと良い物、アテンドと呼ばれる何かとケアしてくれる業者さんのことなども詳しくわかりやすく描かれている。タイと日本では性に関する考えから社会常識、福祉、何もかも違うわけで。
だからこそタイでは一般的であり、設備も整っているのかも知れない。日本だって老人向けのリハビリ整形外科はやたらあるし綺麗でデカいもんな。
体育の日をタイ行く日にしたよりぴちゃんが現地で手術を受け、ダイレーションと呼ばれる拡張についてスパルタ教育を受け、そして現地でも国際品評会。
各国それぞれの事情がありつつも、みんなタイにやってきて手術を受けた。
家族や周囲の理解を得られない人もいて、そういえば私がお付き合いしていた人は割と家族の理解はあったそうで。最終的には郷里の実家に帰っていったんだっけな。岡山だったか兵庫だったか、元気かな。
よりぴちゃんはこうして女性となって帰国し、様々な手続きに追われることになる。
この辺りのお役所の対応なんかも、もっとスムーズになるといいと思うけど…他のもっと身近な手続きでも時間かかっちゃってるし難しいわな。
特に目を引いたのは性自認と性的指向の違いについて。
ハッキリとした区別があるというよりは曖昧な場合もある。
だけどやっぱり人それぞれ違いがあるわけで。
想いを遂げられるかは別として、社会常識として性別や性的指向を理由にした差別がなくなるといいなと思うし、私自身も少ないながらも色々な経験をさせて頂いて思うのは
自分にとって、その人が可愛ければカンケーないじゃん
ということ。この国では法律で定められた成人年齢があるので、それさえクリアしていればあとは少なくとも性別に関してはどちらでも構わないと思う。
ギャップがあることや、背徳感だとか、楽しみ方は色々あるだろうしそれを声に出すか出さないかはともかく。
自分が「この人素敵だな」と思えて、その人と一緒に居られるのならそれでいいと思うし、そうであってほしいと思う。
どんなに性差別やセクハラなどの問題が山積みになっても、また解決されても、モテるモテないは別問題だから私にとってどこまで自分にカンケーある話かというのは…考えると寂しくなっちゃうのでやめておくけど、あくまでこの作品も自分の内側の性の話であって、その性がまた外に向くときは別の問題が沢山ある。
もっとも、よりぴちゃんは出国までにはヨロシクやっていたようだけれど…。
こうした話はタレントさんとかだと良くも悪くも波及力もあるし大きく扱われる。
逆に一般の人のドキュメンタリーだと話が重たく、暗くなりがちだ。
明るい話もあれば、そうではない部分もあるだろう。どちらもそこに嘘は無いと思う。
だけどこの作品は、タイトルからしてすんごいけど内容はもっと凄い。
何しろ性適合手術ということで今までと自分というもののあり方が変わる、そんな人の話だから。
それを親友であり漫画家の鈴木倫先生がキャッチして、見事に明るく笑える骨太な作品となって送り出された。
ミル貝や泣きアワビちゃんはともかく、コンプラの四文字であんなギリギリのイケないカットまで載せちゃうなんて、オッス!オラ驚(おでれ)えたぞ!
性というものを社会生活から切り離すことは出来ないし、もっと単純な答えとちょっとした思いやりで済むことを男女の無駄に風呂敷だけ大きな問題に広げちゃう人も少なくない。
草の根レベルだけど、こうして日々逞しく暮らしている人が居るということを知るだけでもきっと有意義なことだと思うし、この
さよならちんちんウェルカムまんまん
は、上川依子さんと鈴木倫先生のタッグによる名勝負だったと言える。ところどころにブッ込まれる爆笑エピソードと、それが見事に描かれている。事の重大さとギャグのギャップを存分に楽しんだ後は、自分も明日からまた面白おかしく生きよう、とちょっと思えた気がする。
そんな作品でした。ありがとうございました。
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