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第637回。キッドさんはデヴィッド・リンチが好き。

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皆さんこんばんは!!
ダイナマイト・キッドです。深夜エッセイ・キッドさんといっしょ。も600回を超えてまして。んで1年以上は毎日書いてるもんで。
まあ書くことにも重複が出て来たりもするわけですよ。
で度々触れていることに関して言えば、これはもう相当この人が好きなんだな、と思って頂ければ…。元々たいして内容のあることを書いているわけでもないし。

でリンチ。
デヴィッド・リンチの名前を初めて聞いたのは伊集院さんのラジオだった。
伊集院さんがデヴィッド・リンチのファンで、たまに喋りの中で
デヴィッド・リンチの映画みたいな…
デヴィッド・リンチに作らせたい…
とか、そういう言葉が出てたので調べてみると、聞いたことがあるけど見たこと無いタイトルの映画が幾つかあって。それがマルホランド・ドライブとインランド・エンパイア。多分テレビで試写会のお知らせとか、公開のコマーシャルが流れてたのかなんなのか。番組によっちゃ新作映画紹介コーナーとかもあるし。それで、ああコレか、と見てみたら大変ハマりました。

何と言えばいいのか、何に例えればいいのかわからないけど、私には面白い。
こう、あっ何か嫌なことが起こりそうだな…。と思ったり、気持ち悪い、薄気味悪い、なんだかわからないけどゾワゾワする。そんな感じ。
お話は二転三転し、明確な答えや結末があるわけでもない。
ああ、そういうお話だったんだ、と思うしかない。
後はこっちで散々考えるなり、何度も見直すなり。
マルホランド・ドライブは何回か見て自分なりに話のつじつまが合う答えを出しました。
ちょいとご紹介しますと(ご存知の方はごめんなさいね)女優を夢見てハリウッドにやってきたダイアン。空港から親切な老夫婦に出会い、車内で夢を語り、下宿先の綺麗な豪邸に到着する。
早速オーディションを受け、古風な恋愛映画の主演女優の座を掴み一躍大ブレイク。期待の新人として人気急上昇…。

んで同時進行では謎の男たちに拉致され殺されかかった美しい女性カミーラが命からがら夜道を逃げ(この時にカミーラを乗せた車が走っているのが実際にあるマルホランド・ドライブという道路)ダイアンの家で保護される。カミーラは事件のショックで記憶を失ってしまうが、ダイアンの手厚い保護を受けるうちにやがて二人は恋人同士になる。
が、二人の関係、いや物語そのものがいつしかねじれ、夢と現実、過去と未来の軸が幾つも交錯する不可思議なストーリーが展開されることになる。
アパートの死体。
二人の夢と現実。
ダイアンの妄想。
またストーリーが進むと二人の立場や名前にも変化が起こる。

そしてコレはリンチの映画ではよくあることで、物語の要所要所で急におかしな映像が挟み込まれる。例えばダイアンを親切に送り届けてくれた老夫婦は、ダイアンと別れた途端に車内でゲラゲラ笑いながらダイアンを散々馬鹿にする。
ギャッハッハッハ!
アイツ、馬鹿じゃねえの!?
悪意のこもった爆笑がこだまする。

またハリウッドの芸能界における力関係やそこでの生活など急に荒唐無稽な、子供の考えている芸能界の仕組み、のようなシーンもある。
一見冴えない風貌だがスポーツカーに乗って映画監督をしている男が、家でマッチョな男にカミさんを寝取られて追い出され、お金も家もクルマも奪われた惨めな男だということになっているが…?

この映画。実際に公開された2001年にも半券を持っていれば1000円でリピート鑑賞することが出来るキャンペーンが実施されていたり、特設サイトに劇場公開時のエンディングで示されたパスワードを入力すると入れる秘密の部屋があってそこでヒントがもらえたりするなど難解さは抜群。
何度も見ているうちに、いつの間にか映画の結末や結論なんかよりも、リンチ特有の映像美、それもとびっきり体調が悪く高熱を出しているときに見る夢のような表現の方に心を奪われることになる。私はそうだった。もう別に答えも解釈もどうでもいい。デヴィッド・リンチが作った映像ならとりあえず見てみたい。そう思ったので次々にレンタル屋さんでDVDを借りてきた。
インランド・エンパイアなんか、マルホランド・ドライブを見てもまだ可愛いもんだと思うぐらい支離滅裂で、調べたらお話に何もあったもんじゃなく、リンチが何か思いついたらスタッフや俳優を呼んで
「あ、リンチだけど。おつかれー。あのさ、ちょっと撮りたいシーンが出来たんだけどねえ」
って撮ったものを繋ぎ合わせたんだそうな。なもんだから急に沢山のお姉さんたちがおっぱい丸出しでロコモーションに合わせて踊りだしたりするし、基本のストーリーとして呪われた映画のリメイク、その主演女優が今回の主人公で彼女の周りで起こり出す不可解な出来事っていうのがあるものの、案の定、映画の世界と現実の世界の境目が溶け合い曖昧になってしまったりする。どこまで現実なのか、それとも妄想なのか。
古い作品だとエレファントマンはまだストーリーがしっかりあって、若き日のアンソニー・ホプキンスも出てたりする。美しい心の持ち主であり醜悪な外見の青年の半生を描いた作品で非常に素晴らしい。こういう作品を撮るかと思えばデビュー作と言われるイレイザーヘッドなんかまあー酷い。
マルホランド・ドライブもインランド・エンパイアも洗練されているというか、やっぱり商業として成り立つギリギリアウトぐらいのところにあるんだけど、このイレイザーヘッドは、ホントにアタマ痛くなるぐらいわけがわからない。そして解釈や理解をしようとすればするほど、ゾっとする結論しか浮かんでこない。何度もギブアップしそうになったけどなんとか最後まで見た。
この作品あって、この監督あり、だな。
普通の映画に飽きたら是非。お好きな方にはたまらない。デヴィッド・リンチのはなし。
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