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第610回。キッドさんは少林寺拳法が好き。
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皆さんこんばんは!
ダイナマイト・キッドです。
少林寺拳法って知ってますか?
柔道や空手に比べるとイマイチ知名度が低い気がするのですが、探してみると結構アチコチに道院があったりして日本や世界に広がっています。
拳法というものの仏門の修行として行われていた鍛錬をモデルにしているため、あまり武術や格闘技としての側面は強く打ち出されてはいません。
先ず守り、それから攻撃するという専守防衛の理念があります。
そういうわけでキッドさんは子供のころ大変な乱暴者で、すぐ怒って暴れてしまうので少林寺拳法を勧められて習いに行くことになりました。小学校2年生の頃でした。
隣町の道院で知り合いが先生をやっていたのでそこまで通うのですが、少林寺拳法の修行(練習とは言わずこう呼びました)があるのが日曜日の夜で。
当時はダウンタウンのごっつええ感じが最盛期。見たかったー…。
ゴレンジャイとか板尾係長とか大好きでしたもの。
見れなくなってから、学校にオジャパメンの歌詞書き出して持って来る奴とかいて、見れなくて寂しかったなあ。ビデオ撮っといてもらいたくても、ビデオを持っている祖父が野球を見つつ別のチャンネルの番組を見たがるとそっちを撮っちゃうんで見れなくって。
なんとも子供じみた理由で最初は嫌だったし、私としては空手がやりたかったのだけれど…母親の
「お前なんかに空手やらせたらロクなことにならん」
の一言で少林寺拳法に。
今思えばそれは正しかったなー。
少林寺拳法はそういうわけで、空手や柔道にはちょっと向いてない…というか、そっちは大変そうだから、少林寺拳法(コッチ)なら優しそうだしいいかな、という。
私が怒って暴れる側だとしたら、そんときに被害を被る側の子供が多かったです。
黒帯を持っている中学生や高校生のお兄さんは流石にそんなことなかったけど、当時まわりにいて白帯や緑帯だった同い年ぐらいの子はみんな気弱だったりして組み手をやっていても噛み合わなくて余計にイライラして喧嘩になったりもした。
そういう時に、同級生の仙田くんのお兄さんがすでに黒帯を持っていたんだけど優しく厳しく諭してくれたし、道院長の鈴木先生も根気強く叱ってくれたし、私もアッタマ来てワーワー言うことで結果的には発散させてもらっていたと思う。
あまり書くようなことでもないんだけど、当時は私の家庭がちょいとゴタついてたり、件の自分の性格のせいで友達をなくしたりで不安定な時期だった。
だから鈴木先生に
「ここで汗を流してスッキリしたらいい」
と言ってもらっても
「ここで幾らスッキリしても家に帰ればまた同じじゃないか!」
と、書いてて恥ずかしいぐらい歯向かっていた。紹介してくれた稲垣先生の顔もなにもあったもんじゃない。まあ子供のころだからこそワカランチンであったのだが、それでも見捨てずに付き合ってくれたのだから本当に今でも感謝している次第です。
稲垣先生はその後、整体師さんになったので今でも治療をして頂いているんだけど、そのときによく鈴木先生や他の先生の近況をお聞きすることもあって。
私が小学校高学年になり初段から弐段の練習をするときにずーっとマンツーマンで指導して下さったのが岩瀬先生だった。
文字通り岩みたいな巨大でカッタイ拳と赤鬼みたいな赤銅色の体、彫りが深くて迫力のある顔で長身瘦躯の、ストリートファイターに出てくる豪鬼が板金屋さんをやっているような人だった。
本業、というか職業が板金屋さんで少林寺拳法は趣味なのだが、これがおっそろしいほど強かった。
同学年や下手したら中学生ぐらいが相手でも平気で挑みかかって喧嘩して、時には泣かせちゃうこともあった。すっかり天狗になっていた私だったがここで散々思い知ったのは
「世の中はバケモノみたいな人ばかりだ…!」
という如何ともしがたい事実だった。
だって有名な格闘家とかじゃないのに、普通の整体師さんや板金屋さんなのにこんな強い人がいるなんて信じられなかった。仙田くんのお兄さんぐらいの歳の人だとちょっと違ってて、リアルに強くてかなわないんだけど…やっぱり大人のおじさんが強いとなると、そういう人はみんなK-1とかプロレスに出るものだとばかり思っていた私にはショックだったし、幾ら喧嘩なんかしたって勝てっこない。どこの誰に喧嘩を売って、ソイツが物凄く強い奴だったらどうしよう…とビビったことで私はすぐに暴れなくなった…と思う。一つのショック療法だったのかもな。
そんな強くて普通のおじさんたちは、みんな優しくて私が技や動作を理解して体得するまで辛抱強く教えてくれた。怒鳴ったり体罰を受けたことも一度もない。やってみせ、やらせてみせて、あとは噛んで含めるように教則本や他の先生と一緒に実演を交えて教えてくれたものだった。
中学生になって初段を取ると部活や塾に行くんで少林寺拳法は辞めちゃう子が多いんだけど私は弐段を取ろうと続けることにしたんで、それもあってみんなして可愛がってくれたんだと思う。
んが、その可愛がり方が、まあなんだ。百戦錬磨のライオンがインパラにじゃれてるようなもんだから…。
結果的にマンツーマンでの修行になったおかげで、岩瀬先生の巨大な掌に少林寺拳法の関節技をかけたり、飛んで来る拳を受けたり払ったり、丸太を振り回してるような蹴りも受けたり払ったりして私は多少強くなった。
ここまで散々、岩瀬先生の強さと優しさについて語ってきたけれど(ちなみに稲垣先生も相当強いぞ)この修行で何が一番きつかったか。
それは金的蹴りの練習だった。
相手の蹴りを拳で足の甲を打つことで防ぎながら殺し、お返しにこっちも相手の内股に蹴りを入れて
スパコーン!
とぶら下がったところを蹴り上げるこの動きを、まず先生の金的蹴りをこっちが拳で殺してから先生に蹴りを入れる…と書くと簡単そうだろ?
さっきから書いてるけどな、蹴って来るのは赤鬼みたいな四段か五段を持ってるとんでもなく強い先生なんだ。
当然、この多少太ったガキのナマクラ拳なんかで防ぎきれる金的蹴りなわけがなく。
毎回、悶絶していた。
最近、稲垣先生のところへ治療に行って近況を聞くと、岩瀬先生も流石に寄る年波にはかなわないとこぼすようになったというが…多分、今でも真正面から挑みかかったところで私じゃ勝ち目は無いと思う。
そのぐらい強い人が、それよりもっと優しかったから、私は今でも格闘技や少林寺拳法が好きで居られるし、何よりそのことに感謝したい。
それでは、またあした。
合掌礼。
ダイナマイト・キッドです。
少林寺拳法って知ってますか?
柔道や空手に比べるとイマイチ知名度が低い気がするのですが、探してみると結構アチコチに道院があったりして日本や世界に広がっています。
拳法というものの仏門の修行として行われていた鍛錬をモデルにしているため、あまり武術や格闘技としての側面は強く打ち出されてはいません。
先ず守り、それから攻撃するという専守防衛の理念があります。
そういうわけでキッドさんは子供のころ大変な乱暴者で、すぐ怒って暴れてしまうので少林寺拳法を勧められて習いに行くことになりました。小学校2年生の頃でした。
隣町の道院で知り合いが先生をやっていたのでそこまで通うのですが、少林寺拳法の修行(練習とは言わずこう呼びました)があるのが日曜日の夜で。
当時はダウンタウンのごっつええ感じが最盛期。見たかったー…。
ゴレンジャイとか板尾係長とか大好きでしたもの。
見れなくなってから、学校にオジャパメンの歌詞書き出して持って来る奴とかいて、見れなくて寂しかったなあ。ビデオ撮っといてもらいたくても、ビデオを持っている祖父が野球を見つつ別のチャンネルの番組を見たがるとそっちを撮っちゃうんで見れなくって。
なんとも子供じみた理由で最初は嫌だったし、私としては空手がやりたかったのだけれど…母親の
「お前なんかに空手やらせたらロクなことにならん」
の一言で少林寺拳法に。
今思えばそれは正しかったなー。
少林寺拳法はそういうわけで、空手や柔道にはちょっと向いてない…というか、そっちは大変そうだから、少林寺拳法(コッチ)なら優しそうだしいいかな、という。
私が怒って暴れる側だとしたら、そんときに被害を被る側の子供が多かったです。
黒帯を持っている中学生や高校生のお兄さんは流石にそんなことなかったけど、当時まわりにいて白帯や緑帯だった同い年ぐらいの子はみんな気弱だったりして組み手をやっていても噛み合わなくて余計にイライラして喧嘩になったりもした。
そういう時に、同級生の仙田くんのお兄さんがすでに黒帯を持っていたんだけど優しく厳しく諭してくれたし、道院長の鈴木先生も根気強く叱ってくれたし、私もアッタマ来てワーワー言うことで結果的には発散させてもらっていたと思う。
あまり書くようなことでもないんだけど、当時は私の家庭がちょいとゴタついてたり、件の自分の性格のせいで友達をなくしたりで不安定な時期だった。
だから鈴木先生に
「ここで汗を流してスッキリしたらいい」
と言ってもらっても
「ここで幾らスッキリしても家に帰ればまた同じじゃないか!」
と、書いてて恥ずかしいぐらい歯向かっていた。紹介してくれた稲垣先生の顔もなにもあったもんじゃない。まあ子供のころだからこそワカランチンであったのだが、それでも見捨てずに付き合ってくれたのだから本当に今でも感謝している次第です。
稲垣先生はその後、整体師さんになったので今でも治療をして頂いているんだけど、そのときによく鈴木先生や他の先生の近況をお聞きすることもあって。
私が小学校高学年になり初段から弐段の練習をするときにずーっとマンツーマンで指導して下さったのが岩瀬先生だった。
文字通り岩みたいな巨大でカッタイ拳と赤鬼みたいな赤銅色の体、彫りが深くて迫力のある顔で長身瘦躯の、ストリートファイターに出てくる豪鬼が板金屋さんをやっているような人だった。
本業、というか職業が板金屋さんで少林寺拳法は趣味なのだが、これがおっそろしいほど強かった。
同学年や下手したら中学生ぐらいが相手でも平気で挑みかかって喧嘩して、時には泣かせちゃうこともあった。すっかり天狗になっていた私だったがここで散々思い知ったのは
「世の中はバケモノみたいな人ばかりだ…!」
という如何ともしがたい事実だった。
だって有名な格闘家とかじゃないのに、普通の整体師さんや板金屋さんなのにこんな強い人がいるなんて信じられなかった。仙田くんのお兄さんぐらいの歳の人だとちょっと違ってて、リアルに強くてかなわないんだけど…やっぱり大人のおじさんが強いとなると、そういう人はみんなK-1とかプロレスに出るものだとばかり思っていた私にはショックだったし、幾ら喧嘩なんかしたって勝てっこない。どこの誰に喧嘩を売って、ソイツが物凄く強い奴だったらどうしよう…とビビったことで私はすぐに暴れなくなった…と思う。一つのショック療法だったのかもな。
そんな強くて普通のおじさんたちは、みんな優しくて私が技や動作を理解して体得するまで辛抱強く教えてくれた。怒鳴ったり体罰を受けたことも一度もない。やってみせ、やらせてみせて、あとは噛んで含めるように教則本や他の先生と一緒に実演を交えて教えてくれたものだった。
中学生になって初段を取ると部活や塾に行くんで少林寺拳法は辞めちゃう子が多いんだけど私は弐段を取ろうと続けることにしたんで、それもあってみんなして可愛がってくれたんだと思う。
んが、その可愛がり方が、まあなんだ。百戦錬磨のライオンがインパラにじゃれてるようなもんだから…。
結果的にマンツーマンでの修行になったおかげで、岩瀬先生の巨大な掌に少林寺拳法の関節技をかけたり、飛んで来る拳を受けたり払ったり、丸太を振り回してるような蹴りも受けたり払ったりして私は多少強くなった。
ここまで散々、岩瀬先生の強さと優しさについて語ってきたけれど(ちなみに稲垣先生も相当強いぞ)この修行で何が一番きつかったか。
それは金的蹴りの練習だった。
相手の蹴りを拳で足の甲を打つことで防ぎながら殺し、お返しにこっちも相手の内股に蹴りを入れて
スパコーン!
とぶら下がったところを蹴り上げるこの動きを、まず先生の金的蹴りをこっちが拳で殺してから先生に蹴りを入れる…と書くと簡単そうだろ?
さっきから書いてるけどな、蹴って来るのは赤鬼みたいな四段か五段を持ってるとんでもなく強い先生なんだ。
当然、この多少太ったガキのナマクラ拳なんかで防ぎきれる金的蹴りなわけがなく。
毎回、悶絶していた。
最近、稲垣先生のところへ治療に行って近況を聞くと、岩瀬先生も流石に寄る年波にはかなわないとこぼすようになったというが…多分、今でも真正面から挑みかかったところで私じゃ勝ち目は無いと思う。
そのぐらい強い人が、それよりもっと優しかったから、私は今でも格闘技や少林寺拳法が好きで居られるし、何よりそのことに感謝したい。
それでは、またあした。
合掌礼。
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