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第544回。オガツカヅオ先生の魔法はつづく。
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いや、続いて欲しい。
続けてください!
おおかみ書房さん、劇画狼さんおススメ漫画をなるべく読みながら生きていたいキッドさん。
ぶっちゃけると今日(2018年8月2日)BOOTHのほうもわずかばかりですが課金をさせて頂きました。ぜひ道中のお弁当とお飲み物の代金に…!
そして今回の
オガツカヅオ先生の短編集「魔法はつづく」
です。例によって内容についての記述が沢山あります。
未読の方は是非、本作をご覧ください。
絶対何も知らないで読んだ方が面白いです。
私がそうだったので。
ツイッターでの情報から推察した程度なら、全然簡単にひっくり返ります。
読み終わった後で思い出して、そういえばあのデブもこのマンガの話してたな、と改めてお越しいただければ幸いです。
届いてすぐ、パラっとめくった最初の
はじめましてロビンソン
で完全に持っていかれます。
確かに短編集であるから一つ一つは短くても、一つ一つの作品の濃さ、密度が半端じゃない。
そしてそれが最初っから爆発する。
圧縮されて圧縮されて充満した気合が一気にスパークする快感に近い読後感。
何周も回ったハッピーエンド。
形に、常識にとらわれず、時間をかけてでも人生をかけてでも掴みたかった幸せのために生きる。
ロビンソンというのはあのスピッツの楽曲のロビンソン。
いま私は32歳。私ぐらいの歳のひとはサビぐらいは少なくとも思い出せそうなぐらい有名な曲。
これがガツン!と効く。久しぶりにちゃんと通して聞きたくなる。まんまと聞いたもん私。
病気、心、体、クラゲ。
いいキャラしてるんだよなあ女医さんが。また。
テンポよく進む世界に入り込みやすいのは、その景色がありふれたもので、そうしたささやかな情景の描き方も凄く上手いからなのかもしれない。リアルな日常、あるあるを描こうとするとかえってわざとらしく、鼻につくものになることもある。けれど、この作品に流れている日常の景色はどれも凄く自然で、だからこそ起こる不思議で理不尽な出来事が浮き上がって見える。
その日常に浮かんでは透ける不思議と理不尽を、読者は受け止めるほかない。
続いての作品は
かえるのうた
である。ちょっと変わった家族の物語かな、と思ったところから始まって、最後はこれもグっとくる終わり方を見せる。夢のなかで夢だと気づいたときのような違和感。
浮かぶ瞬間。
ああ、これは…!と思って読者も、彼女も泣きだしそうになる。顔がゆがむ。くしゃくしゃになる。
そして結末を迎えて決壊する。
たぶん、私だったら私が想像した結末で済めば泣くことはなかった。
でも、こんな終わり方ってないよ!と思ったらホントにウルっと来た。
ああ、よかった。良かったなあ。
心の底からそう思った。
トランプも七並べもカラオケも全部意味がある。
意味などない、何気ない光景のようで全部繋がる。
これもか!そうか、そう来るのか!!
さっきの、はじめましてロビンソンを読んでからなのでどんでん返しがあることには驚かない。
だけど、その返し方があまりに鮮やかで、やっぱりため息が出てしまう。
テーブルの下は暗闇のステージ。歌うんだ、歌うんだ。
みんなが集まって来る。
そして夢から覚める前に一瞬だけ覚醒するように、急に入る土砂降りの雨とバス。
場面が変わってみんなが集まっている。でもよく見ると、会話に全く参加していない、参加出来ていないんだ。それが最後のコップのかえるに繋がったとき、私も彼女も泣いていたのだ。
作品はまだまだつづく。この濃さで続く。
猫のように、も素晴らしかった。わんぱく少年と看護師さんと不思議な力を持ったおばあちゃんとネコ。
動かない、動けない、何も見えないはずのおばあちゃんの不思議な力と、それを信じた少年の運命。
猫の目に自分の姿をじっと見せた少年の心のうちは。
さらに次の「こくりまくり」はホラー好きにはたまらないヒロイン
キメゴメさん
が登場する。表紙も、その次のページも、さらにこの本の締めくくりも。
この作品のことだったんだ。
無理心中、告白、繰り返す恋慕。
こんなに美しい恋の話があるだろうか。
こんなに切ない恋の話があるだろうか。
そしてキメゴメさんは前に進んでゆく。悩んでいるひと、悲しむ女の子に
魔法をかけてやる。
そう言って指をさす。
気が付けばオガツカヅオ先生の魔法のとりこになっている自分がいて、どんどん貪り読んでしまっていた。どれもこれも幸せで、悲しくて、美しくて、どっか身近で、でも遠くの街の話みたいで。
そう、これはどこか遠くの街で起こっていた小さな魔法のお話を集めたものなのかもしれない。
ゾンビのお世話も、生霊も、全部そこらへんの、自分が見てないだけで近くにある場所で起こっているのかもしれない。
自宅の近所だって、隣の家だって、見てないまま過ごして、そのまま離れたり取り壊されたりして形を変えてゆく。その川の流れのように過ぎてゆく人生のほんの一瞬だけ、特別に魔法をかけてもらえるのなら、ちょっと不思議な出来事を覗いてゆけるなら。
その魔法がずっと続いてくれるのなら。
明日もフツーに生きていくことぐらい、どうにかやっていけそうな気がするんだ。
続けてください!
おおかみ書房さん、劇画狼さんおススメ漫画をなるべく読みながら生きていたいキッドさん。
ぶっちゃけると今日(2018年8月2日)BOOTHのほうもわずかばかりですが課金をさせて頂きました。ぜひ道中のお弁当とお飲み物の代金に…!
そして今回の
オガツカヅオ先生の短編集「魔法はつづく」
です。例によって内容についての記述が沢山あります。
未読の方は是非、本作をご覧ください。
絶対何も知らないで読んだ方が面白いです。
私がそうだったので。
ツイッターでの情報から推察した程度なら、全然簡単にひっくり返ります。
読み終わった後で思い出して、そういえばあのデブもこのマンガの話してたな、と改めてお越しいただければ幸いです。
届いてすぐ、パラっとめくった最初の
はじめましてロビンソン
で完全に持っていかれます。
確かに短編集であるから一つ一つは短くても、一つ一つの作品の濃さ、密度が半端じゃない。
そしてそれが最初っから爆発する。
圧縮されて圧縮されて充満した気合が一気にスパークする快感に近い読後感。
何周も回ったハッピーエンド。
形に、常識にとらわれず、時間をかけてでも人生をかけてでも掴みたかった幸せのために生きる。
ロビンソンというのはあのスピッツの楽曲のロビンソン。
いま私は32歳。私ぐらいの歳のひとはサビぐらいは少なくとも思い出せそうなぐらい有名な曲。
これがガツン!と効く。久しぶりにちゃんと通して聞きたくなる。まんまと聞いたもん私。
病気、心、体、クラゲ。
いいキャラしてるんだよなあ女医さんが。また。
テンポよく進む世界に入り込みやすいのは、その景色がありふれたもので、そうしたささやかな情景の描き方も凄く上手いからなのかもしれない。リアルな日常、あるあるを描こうとするとかえってわざとらしく、鼻につくものになることもある。けれど、この作品に流れている日常の景色はどれも凄く自然で、だからこそ起こる不思議で理不尽な出来事が浮き上がって見える。
その日常に浮かんでは透ける不思議と理不尽を、読者は受け止めるほかない。
続いての作品は
かえるのうた
である。ちょっと変わった家族の物語かな、と思ったところから始まって、最後はこれもグっとくる終わり方を見せる。夢のなかで夢だと気づいたときのような違和感。
浮かぶ瞬間。
ああ、これは…!と思って読者も、彼女も泣きだしそうになる。顔がゆがむ。くしゃくしゃになる。
そして結末を迎えて決壊する。
たぶん、私だったら私が想像した結末で済めば泣くことはなかった。
でも、こんな終わり方ってないよ!と思ったらホントにウルっと来た。
ああ、よかった。良かったなあ。
心の底からそう思った。
トランプも七並べもカラオケも全部意味がある。
意味などない、何気ない光景のようで全部繋がる。
これもか!そうか、そう来るのか!!
さっきの、はじめましてロビンソンを読んでからなのでどんでん返しがあることには驚かない。
だけど、その返し方があまりに鮮やかで、やっぱりため息が出てしまう。
テーブルの下は暗闇のステージ。歌うんだ、歌うんだ。
みんなが集まって来る。
そして夢から覚める前に一瞬だけ覚醒するように、急に入る土砂降りの雨とバス。
場面が変わってみんなが集まっている。でもよく見ると、会話に全く参加していない、参加出来ていないんだ。それが最後のコップのかえるに繋がったとき、私も彼女も泣いていたのだ。
作品はまだまだつづく。この濃さで続く。
猫のように、も素晴らしかった。わんぱく少年と看護師さんと不思議な力を持ったおばあちゃんとネコ。
動かない、動けない、何も見えないはずのおばあちゃんの不思議な力と、それを信じた少年の運命。
猫の目に自分の姿をじっと見せた少年の心のうちは。
さらに次の「こくりまくり」はホラー好きにはたまらないヒロイン
キメゴメさん
が登場する。表紙も、その次のページも、さらにこの本の締めくくりも。
この作品のことだったんだ。
無理心中、告白、繰り返す恋慕。
こんなに美しい恋の話があるだろうか。
こんなに切ない恋の話があるだろうか。
そしてキメゴメさんは前に進んでゆく。悩んでいるひと、悲しむ女の子に
魔法をかけてやる。
そう言って指をさす。
気が付けばオガツカヅオ先生の魔法のとりこになっている自分がいて、どんどん貪り読んでしまっていた。どれもこれも幸せで、悲しくて、美しくて、どっか身近で、でも遠くの街の話みたいで。
そう、これはどこか遠くの街で起こっていた小さな魔法のお話を集めたものなのかもしれない。
ゾンビのお世話も、生霊も、全部そこらへんの、自分が見てないだけで近くにある場所で起こっているのかもしれない。
自宅の近所だって、隣の家だって、見てないまま過ごして、そのまま離れたり取り壊されたりして形を変えてゆく。その川の流れのように過ぎてゆく人生のほんの一瞬だけ、特別に魔法をかけてもらえるのなら、ちょっと不思議な出来事を覗いてゆけるなら。
その魔法がずっと続いてくれるのなら。
明日もフツーに生きていくことぐらい、どうにかやっていけそうな気がするんだ。
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