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第524回。ばあちゃんの冷やし中華ごまだれ味
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おばあちゃんというのは気の長いイメージだ。
だがそれは我が家の豪傑バアさんことノリコさんには当てはまらない。
まあ世の中には今、キレる年寄りとかもいるのでそれと一緒にされたくはないのだけれど。
なんつーか、カクシャクとしていたんだノリコさんは。
そんな豪傑バアさんだが、やっぱりどっかおばあちゃんという年齢、概念になったのだなと思うことに
同じ食べ物を延々リピートで提供できる、自分も毎日食える
というのがあった。
キッドさんが学校にあまり行かなくなり、完全に家から出ない日も多々あった小学6年の夏。
めでたく(皮肉じゃなく本当に私は実の父親がキライだし、アレが出てったことは家庭内暴力で殺されかかった身には本当に僥倖というほかなかった)母子家庭となり、母は朝早くから工場で働きっつめになった。そこで我が家の豪傑バアさん、ノリコさんの出番である。
夏のあいだ、毎朝朝飯を作り、昼飯も作り、晩飯を食いに行くために渋るおじいちゃんを説得してくれて(どうせ言い出したら聞かない、とあきらめていることを逆手に取っているともいう)一緒にブロンコビリーや回転寿司に連れてってくれた。
んで、そんなたまの贅沢をのぞけば、おばあちゃんというのはこっちがストップというまで同じものを毎日毎日作ってくれる。
毎日毎日毎日毎日、ほぼ昼飯はゴマダレ味の冷やし中華だった。
きっかけは、私が久しぶりに風呂とトイレとつまみ食い(おっ、なんか語呂が良いぞ)以外で部屋から出てきてバアさんに
「冷やし中華が食いたい」
とのたまったことが切っ掛けだった。それは確かだ。
それにガキなんてのも、毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日、好きなものならずっと食ってられるだろ。私がそういうガキだった。
音楽も映画もまんがも食べ物も、気に入るといつの間にか飽きるまで同じものを繰り返す。
ずっと冷やし中華、しかもゴマダレばっかり。
あの頃はゴマダレ一直線だった。今は醤油ダレ?の方が好き。ついでに言えば酢のきっついやつがいい。
行きつけの中華屋さんの冷やし中華、メニューでは冷麺になってるけど、あれ美味しいんだよな。
あんな感じ…ってもわからんか。
とにかく。今となってはゴマダレより醤油ダレのが好きになった私。
というか、あれなんなんだ。
醤油ダレ、でいいのか?それともほかにきちんと呼び方があるのだろうか。
で冷やし中華。
ヒヤチューって略す人がたまに居た。ダサいなと思っていた。
なんでゴマダレを食わなくなったんだろうなーと思ってたけど、絶対コレじゃん。
一生分、ゴマダレの冷やし中華を食った気がする。
大袈裟ではなく8月いっぱいほど冷やし中華だった。
別のものを食べてたのは母が休みだった日の昼めしか、ブロンコビリーのチラシが入ってたんで連れてってもらった日ぐらいのもんだろう。
うちのジイさんはジイさんで大人しくてあまりベラベラは喋らない物静かな人で、食も細かった。だからブロンコビリーに行っても
「わしゃあコレがいちばん好き」
と言ってコーンスープを美味そうにすすってた。セットの、いやメニューのメインでもあるステーキはどうしたのかというと、向かいに座っているよく食うガキの鉄板のうえに丸ごと移動。
私の皿である。
ホントにそのぐらい食べない人だった。でもコーンスープはおかわりしてた。
バアさんはといえば、ステーキ400グラムをペロっと平らげて孫にサラダバーでポテトサラダと春雨を持って来いと命じるぐらい元気だった。どうしてこの二人は夫婦になったんだか今もって不思議だし両方死んじゃったからもう聞けない。
で冷やし中華。
私が朝遅く、なんだったら昼前、下手すると昼過ぎに起きてくると、もう台所にラップのかかった冷やし中華が置いてあった。バアさんというのは早起きだ。つまりこれは朝飯だった可能性もある。
するってえと、朝昼晩と冷やし中華だったかもしれないのか。
もうそうなると落語に出てくる蛇眼草のうわばみみたいに蛇眼草を食べたら、私は溶けちゃって消えて、私の形にあの独特の黄色い麺が座ってたんじゃないか。
でしかも毎回ゴマダレだからね。そりゃ飽きるっつうの。
正直いえば夏休みも終わり、そのまま冬休みに京浜東北線根岸線よろしく直通運行しようとしていた時期にはもう完全に食傷していた。けど、毎日毎日毎日毎日ずっと買ってきては作ってくれるおばあちゃんには、中々言い出せないって。
んで結局ホントにそのまま暫くまだ食べてた。
でもなー、ある日なんかの切っ掛けで漸く
暫く冷やし中華は控えてほしい
ことが伝わって。
買い置きしちゃった冷やし中華ゴマダレ味を次の日の昼に食って。
その日を最後に、たぶんゴマダレ味の冷やし中華を食べていない。
学校はとっくに始まってた。
だがそれは我が家の豪傑バアさんことノリコさんには当てはまらない。
まあ世の中には今、キレる年寄りとかもいるのでそれと一緒にされたくはないのだけれど。
なんつーか、カクシャクとしていたんだノリコさんは。
そんな豪傑バアさんだが、やっぱりどっかおばあちゃんという年齢、概念になったのだなと思うことに
同じ食べ物を延々リピートで提供できる、自分も毎日食える
というのがあった。
キッドさんが学校にあまり行かなくなり、完全に家から出ない日も多々あった小学6年の夏。
めでたく(皮肉じゃなく本当に私は実の父親がキライだし、アレが出てったことは家庭内暴力で殺されかかった身には本当に僥倖というほかなかった)母子家庭となり、母は朝早くから工場で働きっつめになった。そこで我が家の豪傑バアさん、ノリコさんの出番である。
夏のあいだ、毎朝朝飯を作り、昼飯も作り、晩飯を食いに行くために渋るおじいちゃんを説得してくれて(どうせ言い出したら聞かない、とあきらめていることを逆手に取っているともいう)一緒にブロンコビリーや回転寿司に連れてってくれた。
んで、そんなたまの贅沢をのぞけば、おばあちゃんというのはこっちがストップというまで同じものを毎日毎日作ってくれる。
毎日毎日毎日毎日、ほぼ昼飯はゴマダレ味の冷やし中華だった。
きっかけは、私が久しぶりに風呂とトイレとつまみ食い(おっ、なんか語呂が良いぞ)以外で部屋から出てきてバアさんに
「冷やし中華が食いたい」
とのたまったことが切っ掛けだった。それは確かだ。
それにガキなんてのも、毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日、好きなものならずっと食ってられるだろ。私がそういうガキだった。
音楽も映画もまんがも食べ物も、気に入るといつの間にか飽きるまで同じものを繰り返す。
ずっと冷やし中華、しかもゴマダレばっかり。
あの頃はゴマダレ一直線だった。今は醤油ダレ?の方が好き。ついでに言えば酢のきっついやつがいい。
行きつけの中華屋さんの冷やし中華、メニューでは冷麺になってるけど、あれ美味しいんだよな。
あんな感じ…ってもわからんか。
とにかく。今となってはゴマダレより醤油ダレのが好きになった私。
というか、あれなんなんだ。
醤油ダレ、でいいのか?それともほかにきちんと呼び方があるのだろうか。
で冷やし中華。
ヒヤチューって略す人がたまに居た。ダサいなと思っていた。
なんでゴマダレを食わなくなったんだろうなーと思ってたけど、絶対コレじゃん。
一生分、ゴマダレの冷やし中華を食った気がする。
大袈裟ではなく8月いっぱいほど冷やし中華だった。
別のものを食べてたのは母が休みだった日の昼めしか、ブロンコビリーのチラシが入ってたんで連れてってもらった日ぐらいのもんだろう。
うちのジイさんはジイさんで大人しくてあまりベラベラは喋らない物静かな人で、食も細かった。だからブロンコビリーに行っても
「わしゃあコレがいちばん好き」
と言ってコーンスープを美味そうにすすってた。セットの、いやメニューのメインでもあるステーキはどうしたのかというと、向かいに座っているよく食うガキの鉄板のうえに丸ごと移動。
私の皿である。
ホントにそのぐらい食べない人だった。でもコーンスープはおかわりしてた。
バアさんはといえば、ステーキ400グラムをペロっと平らげて孫にサラダバーでポテトサラダと春雨を持って来いと命じるぐらい元気だった。どうしてこの二人は夫婦になったんだか今もって不思議だし両方死んじゃったからもう聞けない。
で冷やし中華。
私が朝遅く、なんだったら昼前、下手すると昼過ぎに起きてくると、もう台所にラップのかかった冷やし中華が置いてあった。バアさんというのは早起きだ。つまりこれは朝飯だった可能性もある。
するってえと、朝昼晩と冷やし中華だったかもしれないのか。
もうそうなると落語に出てくる蛇眼草のうわばみみたいに蛇眼草を食べたら、私は溶けちゃって消えて、私の形にあの独特の黄色い麺が座ってたんじゃないか。
でしかも毎回ゴマダレだからね。そりゃ飽きるっつうの。
正直いえば夏休みも終わり、そのまま冬休みに京浜東北線根岸線よろしく直通運行しようとしていた時期にはもう完全に食傷していた。けど、毎日毎日毎日毎日ずっと買ってきては作ってくれるおばあちゃんには、中々言い出せないって。
んで結局ホントにそのまま暫くまだ食べてた。
でもなー、ある日なんかの切っ掛けで漸く
暫く冷やし中華は控えてほしい
ことが伝わって。
買い置きしちゃった冷やし中華ゴマダレ味を次の日の昼に食って。
その日を最後に、たぶんゴマダレ味の冷やし中華を食べていない。
学校はとっくに始まってた。
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