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第503回。ここは「なかよし番外地」
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すみません今回もネタバレを含みます。
未読の方でご興味の御座います方は何卒ご注意くださいませ。
さて。
中川ホメオパシー先生の最新作!
なかよし番外地
が届きました!
普段ならソッコーで貪り読み、思いの丈をぶちまけたいところなのだけれど…。
生憎の試験勉強やら体調不良で少し自主的にお預けしておりました。
んが!
手に取ってみて、そのサラっとした半透明の表紙カバーに、裏側の小粋なセリフが透けた装丁の魅力には抗いがたく。
パラっとめくったが最後、気が付いたら読み終わってました。
でも、なんかね、これは一気に読むのが勿体ないぐらい、優しくてあったかくて、ちょっと危うくて。
儚くて、終わりの匂いがずっとする。
見た目は怖い組長風の兄貴と、その舎弟風の辰(タツ)が主人公。
というか、全編通してこの二人しかほぼ出てこない。
でもそれでいい、この二人の幸せで、美しくて、どこか危なっかしいバランスの上に成り立ってそうな生活を見守るしか出来ないことこそが、この作品の魅力なのだから。
もうほんとにね、これはラブとか(耳)たぶとか恋愛とか情念とかじゃなく、もちろん絆とかリア充なんて薄っぺらな言葉でもなく。
なかよし
以外の何物でもないんだよ。
ついつい無防備で無邪気な辰を前に、危ないコトを考えちゃいそうになる兄貴の、それでも一本筋の通った愛情。
真っすぐに、ひたすら兄貴を慕う辰の純情っぷり。
劇中にも、こんな日々がいつまでも続いて欲しい、というセリフが出てくるけど、それは読んでいるコッチのセリフでもあって。
この二人がいつまでも「なかよし」で暮らしてゆけるなら、こっちもそれなりの覚悟があるぞ!と言いたくなる。
構成は二人の一年間を追う形になっていて、お正月から「なかよし」全開。
お餅といっしょに膨れちゃう辰、お餅つきで尻もちをついちゃう兄貴。
私が大好きな、フゥーフゥー!する辰。
節分では仲良く鬼になり、バレンタインではちょっぴり意地悪をする兄貴。
三月、春の海で命の尊さ、自然の恐ろしさを思い寄り添う二人。
ギャグ満載、そこかしこに散りばめられたネタに一つ一つクスっとしたりゲラゲラ笑ったりしている中で、このページだけは自分も暖かな春先の静かな海にいるような気持ちになる。
中川ホメオパシー先生ご両名の優しさ、思いやりがつまった部分だと思います。
その次のページからまた手加減無用の全力ギャグが炸裂するところも含めて。
兄貴はクールなようで、箱の中身はなんだろな、と歌ったり、番号札の機械をひっくり返したり、架空(エア)ネコを飼ってみせ、辰が抱っこしたらもう一匹いたり(ここも大好きです)お餅つきでは豪快に尻もちをつき、けんけんぱでは見事な着地を披露するなど実はアクティブで大活躍。
んでずっとスーツで表情もあまり変えないんだけど、たまに見せるスマイルが迫力満点。
なかよし、と銘打った男二人の物語だけあって、ちょっと危ういところも描かれている。
テリー・ギリアムのローズ・イン・タイドランドで、主人公のジェライザ・ローズが脳外科手術のあとのある男(ディケンズ君)と何度か
オイオイあれヤっちゃうんじゃねえの…!?
と思わせるのに似ている。
だけど劇中では、接近したり壁ドンしたり辰のプリプリのお尻を見て兄貴が桃をかじったり、一番進展してもほっぺにちゅーだけ。
このじれったさも、また良いんだと思います。
愛情、あたたかな思慕の念といったものを今一度考えさせられる作品でありながら、随所に漂う終末のにおい。それが最後の最後に急に一瞬だけ具現化する。
12月が本編ラストになっているのも、このためか!と思わせる。
絶体絶命の兄貴を助けたのは赤い服のアイツ…。
だけどちょっと待って。
ずっと二人だけの世界だったものが、急に部外者が助けに来るものだろうか。
それも何の前触れもなく。
兄貴、良かったね!で終わらせてもいいのだが、さっきのギリアム映画みたいな見方をすると…
あれは兄貴が最後に見た幻なのではないだろうか、と考えてしまう。そうなると、もうこの作品が全部涙でかすんで読めなくなっちゃうぐらい切ないんだけどもね。
THE YELLOW MONKEYのThis is For Youみたいなマンガだと思ってたら、シルクスカーフに帽子のアニキ、だった…なんてことになったら悲しすぎる。
何も無理にバッドエンドの捻じ曲げハッピー妄想エンドにするこた無いんだけど…。
劇中、何度も(アスパラとか)そう言われてると、なんかそんな風にも思えてしまって。
それだけ兄貴と辰のことを、読んでいるこっちも愛しく、どこか儚げに感じてしまってたまらないんです。
顔にティッシュかハンカチを乗せた遊びは、それとはまた違うと思うけど…(笑)
ただ間違いなく、イエモンで言えばSuck of Lifeじゃないんですよね。
あのバンドの曲で例えるには、あのバンドの曲はたいがい不純なので不向きかもしれないのだけれど…。
キュンキュンするのに見た目が怖い!
という、これだけのことを思いつくのがまず凄いです。
ちょっとしたこと、コロンブスの卵。
なかよし番外地では、今日も幸せな日々が続いていることを願って。
な、な、何もない世界で。
未読の方でご興味の御座います方は何卒ご注意くださいませ。
さて。
中川ホメオパシー先生の最新作!
なかよし番外地
が届きました!
普段ならソッコーで貪り読み、思いの丈をぶちまけたいところなのだけれど…。
生憎の試験勉強やら体調不良で少し自主的にお預けしておりました。
んが!
手に取ってみて、そのサラっとした半透明の表紙カバーに、裏側の小粋なセリフが透けた装丁の魅力には抗いがたく。
パラっとめくったが最後、気が付いたら読み終わってました。
でも、なんかね、これは一気に読むのが勿体ないぐらい、優しくてあったかくて、ちょっと危うくて。
儚くて、終わりの匂いがずっとする。
見た目は怖い組長風の兄貴と、その舎弟風の辰(タツ)が主人公。
というか、全編通してこの二人しかほぼ出てこない。
でもそれでいい、この二人の幸せで、美しくて、どこか危なっかしいバランスの上に成り立ってそうな生活を見守るしか出来ないことこそが、この作品の魅力なのだから。
もうほんとにね、これはラブとか(耳)たぶとか恋愛とか情念とかじゃなく、もちろん絆とかリア充なんて薄っぺらな言葉でもなく。
なかよし
以外の何物でもないんだよ。
ついつい無防備で無邪気な辰を前に、危ないコトを考えちゃいそうになる兄貴の、それでも一本筋の通った愛情。
真っすぐに、ひたすら兄貴を慕う辰の純情っぷり。
劇中にも、こんな日々がいつまでも続いて欲しい、というセリフが出てくるけど、それは読んでいるコッチのセリフでもあって。
この二人がいつまでも「なかよし」で暮らしてゆけるなら、こっちもそれなりの覚悟があるぞ!と言いたくなる。
構成は二人の一年間を追う形になっていて、お正月から「なかよし」全開。
お餅といっしょに膨れちゃう辰、お餅つきで尻もちをついちゃう兄貴。
私が大好きな、フゥーフゥー!する辰。
節分では仲良く鬼になり、バレンタインではちょっぴり意地悪をする兄貴。
三月、春の海で命の尊さ、自然の恐ろしさを思い寄り添う二人。
ギャグ満載、そこかしこに散りばめられたネタに一つ一つクスっとしたりゲラゲラ笑ったりしている中で、このページだけは自分も暖かな春先の静かな海にいるような気持ちになる。
中川ホメオパシー先生ご両名の優しさ、思いやりがつまった部分だと思います。
その次のページからまた手加減無用の全力ギャグが炸裂するところも含めて。
兄貴はクールなようで、箱の中身はなんだろな、と歌ったり、番号札の機械をひっくり返したり、架空(エア)ネコを飼ってみせ、辰が抱っこしたらもう一匹いたり(ここも大好きです)お餅つきでは豪快に尻もちをつき、けんけんぱでは見事な着地を披露するなど実はアクティブで大活躍。
んでずっとスーツで表情もあまり変えないんだけど、たまに見せるスマイルが迫力満点。
なかよし、と銘打った男二人の物語だけあって、ちょっと危ういところも描かれている。
テリー・ギリアムのローズ・イン・タイドランドで、主人公のジェライザ・ローズが脳外科手術のあとのある男(ディケンズ君)と何度か
オイオイあれヤっちゃうんじゃねえの…!?
と思わせるのに似ている。
だけど劇中では、接近したり壁ドンしたり辰のプリプリのお尻を見て兄貴が桃をかじったり、一番進展してもほっぺにちゅーだけ。
このじれったさも、また良いんだと思います。
愛情、あたたかな思慕の念といったものを今一度考えさせられる作品でありながら、随所に漂う終末のにおい。それが最後の最後に急に一瞬だけ具現化する。
12月が本編ラストになっているのも、このためか!と思わせる。
絶体絶命の兄貴を助けたのは赤い服のアイツ…。
だけどちょっと待って。
ずっと二人だけの世界だったものが、急に部外者が助けに来るものだろうか。
それも何の前触れもなく。
兄貴、良かったね!で終わらせてもいいのだが、さっきのギリアム映画みたいな見方をすると…
あれは兄貴が最後に見た幻なのではないだろうか、と考えてしまう。そうなると、もうこの作品が全部涙でかすんで読めなくなっちゃうぐらい切ないんだけどもね。
THE YELLOW MONKEYのThis is For Youみたいなマンガだと思ってたら、シルクスカーフに帽子のアニキ、だった…なんてことになったら悲しすぎる。
何も無理にバッドエンドの捻じ曲げハッピー妄想エンドにするこた無いんだけど…。
劇中、何度も(アスパラとか)そう言われてると、なんかそんな風にも思えてしまって。
それだけ兄貴と辰のことを、読んでいるこっちも愛しく、どこか儚げに感じてしまってたまらないんです。
顔にティッシュかハンカチを乗せた遊びは、それとはまた違うと思うけど…(笑)
ただ間違いなく、イエモンで言えばSuck of Lifeじゃないんですよね。
あのバンドの曲で例えるには、あのバンドの曲はたいがい不純なので不向きかもしれないのだけれど…。
キュンキュンするのに見た目が怖い!
という、これだけのことを思いつくのがまず凄いです。
ちょっとしたこと、コロンブスの卵。
なかよし番外地では、今日も幸せな日々が続いていることを願って。
な、な、何もない世界で。
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