上 下
478 / 1,301

第457回。5150

しおりを挟む
バンドを始めて何が困るかってとにかくお金がかかることだった。
スタジオ練習、機材、ちょっとしたものでもバカにならない。
練習は週に2回だったけど、自分ひとりでも練習したかったからホントに通い詰めていた。

機材のこととか、楽器ごとの音色のこととか、ぜーんぜんわからないけど、聞いた感じ・使ってみた感じを信じることにして色々買ってみた。
モンスターケーブルっていうぶっといシールドを買ってみた。
それまではもうちょいほっそいのを使ってたけど、それとは全然違う!…気がした。
試しに元のに戻してみると、やっぱり違う!…気がする。
んでまあ、そのまま元には戻せなくなるんで、今後シールドを買い足したりかい直すときは7千円がとこかかることになるのだ。ぜーんぶこの調子で、よくカメラや家電などお金のかかる趣味のことを

と呼ぶのが、私にもよくわかる。

なんといってもバンドをやっているのならライブに出たい。
このときに3人組のバンドを組んだのは、ギターの丸山君がお兄さんとそのお友達と組んでいたバンドを経て自分でもバンドを始めて、地元の納涼祭りで毎年開催される無料ライブステージに出てみたい、と思ったことが始まりだった。だから、初めからそのライブありきで結成したし、練習してみたら楽しかったのでそのまま活動していくことにしたのだ。
ちなみに無料ライブ本番当日は雷雨で、私らの出番の頃には通り過ぎてった雷雲が遠くの夜空でピカピカ光ってるのが地面の水たまりに反射してて、そこにセルベッサで酔っぱらったブラジル人のアミーゴたちが見守ってくれている…というカオスな状況で行われたのであった。

さて。継続も決まったし、さあやるぞ!と思ったはいいが、どうすればいいかわからない。
私は楽器は下手だが横のつながりを広げていくのが好きだったし人前に出て何かすることにもあまり照れ屋抵抗が無いタイプのデブなので、まずはミクシィで知り合った地元のバンドのライブを見に行ってみた。
ぶっちゃけピンキリで、すげえな!こんなカッコイイ人が地元にいるんだ!ってのと、まあそうでもないのと色々だった。
自分らは、まだスタートラインにも立っていないのでコレ以下だ。

なんでもいいが、こういうイベントは小さければ小さいほど取っつきにくいし入りにくいのは私だけだろうか。人前に出ることも横のつながりも好きだけど基本的に根暗のデブこと私から見ていると、盛り上がっているイベントごとほど、新しくそこに入るのにちょっと勇気がいる。
アレかなー、小学校のころ色んな理由で同じ学年に友達がホントに一人も居なくなって、遅れて学校に行って教室に入るときの、あの感覚。あれを思い出すのか、近いものがあるのか。
行けば楽しいんだけど、行く直前が一番行きたくなさのピークになるっていうの、あるあるだよな?

で、行ってCDやタオルなんか買ったりして物販でお話して、仲良くなってもらって、そうこうしているうちに自分らもライブに出れることになった。
チケットノルマなるシステムもこの時に知るのだが、何しろお客さんなんかいないバンドなので全額負担である。出るのにお金がかかる、というだけの話。
理屈としてはわかるしライブハウスからしたらそれでも苦しいのだろうけど、お金のない新人バンドには何しろこのチケットノルマという名の「出演料金」がキツかった。
バイトを掛け持ちしてやりくりしてたけど、まあ何しろ堪え性がないもんですぐにピンチになって、家に遭ったレコードやフィギュアなどを散々売り払ってお金を工面していた。

その日のスタジオ練習のお金を払うのにそんな風にしてたもんだから、部屋の中はスッカラカン。
ゲームも売ったなあ。
そうやってコレクションしたものを雑に処分しちゃうと、あとのものも芋づる式に興味が失せるんでそのジャンルをあきらめるときはそうする、って所ジョージさんが言ってた。のを伊集院さんがラジオで言ってた。まさにその通りで、あの頃売り払ったウルトラマンやゴジラのジオラマは、もう今になっても欲しいと思わない。売っちゃうときの、あの感覚を思い出すだけでもなんだかツライ。
いつか買い直そう!と思ってたけど、こないだ前を通ったら売った店の方がなくなっていた。
あの店の親父、態度悪かったなあ…ざまみろ!と思うのと、悔しいのとで…。

こないださ!
メカゴジラ、初代の、あの超合金板(鉄板みたいなもんか)をボルトで止めたスチームパンク風ゴジラが、沖縄の地底に作られた秘密基地に立ってるジオラマがあったんだよ。
超ほしいじゃん!でも、買っても、また、なあ…ってなって買わなくなった。

他にも色々あったんだよ。フィギュアからジオラマから。ちょっと大きいのに手を出したりもしてたから、まあ、強引にとはいえ引き際を迎えられたのは良かったのかも知れない。

バンドをやってるとお金がかかる、というお話でした。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

カクヨムでアカウント抹消されました。

たかつき
エッセイ・ノンフィクション
カクヨムでアカウント抹消された話。

パンツを拾わされた男の子の災難?

ミクリ21
恋愛
パンツを拾わされた男の子の話。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

男性向け(女声)シチュエーションボイス台本

しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。 関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください ご自由にお使いください。 イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました

処理中です...