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第439回。ある日バンドを組みました。

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キッドさんこう見えてバンド組んでましてね。
正確には、バンドやりたかった友達に急に呼ばれて
お前ベースやれ
と言われたんで、ベース好きだしやってみたら面白かった。
という程度なんだけども。

何の知識も勉強もないまま、言われるがままに
一番太い弦の上から四番目のとこ押さえろ、そうそう…こういうリズムで…あーもう!へたくそ!
とまあ、そんな教わり方をしたので、1弦の4フレ、みたいな言い方すら最初は出来ず。
というか暫くのあいだ、太い方と細い方で1弦と4弦が曖昧だった。どっちがどっちだっけ…?ってなってたけど言うとまたバカにされるので黙っていた。あとでコッソリ教則本を読んだり、楽器屋さんで安く売ってた初心者用セットのアイバニーズでひたすら練習してた。

アイバニーズもメサブギもアンペグもサッパリだったけど、やってみると覚えるもので。
アンペグというアンプとヘッドのあるスタジオで練習するのが好きだった。
が、当時の経済状況は最悪で。
彼女のアパートに転がり込んで、バイトを掛け持ちしつつバントマン。

典型的なやつじゃん。
我ながら恥ずかしくなるレベル。
彼女のほうは彼女のほうでマトモに働けるような状況ではなく、支援を受けながら何かの施設に通っていた。

で、だ。
そんなこんなで多少ベースギターに触るようになると、ベーシストという人達の良さがまた一段と感じられるようになった。

何しろ小学校低学年からイエローモンキーの廣瀬洋一さんが好きで、その廣瀬さんが影響を受けたっていうんでKISSを聞き始め、ジーン・シモンズも好きになり…ハデな人が好きなんだなあこうして考えると。
KISSは今は無き殺人医師ことスティーブ・ウィリアムスというプロレスラーが入場曲に使っていたのでその辺からの興味もあった。
プロレスと名曲は切り離せない関係にあるのだ。

そんなわけで私の不動の一位は廣瀬洋一さんだ。
ジーン・シモンズもいい。やっぱウロウロしてるだけで銭が取れるってすげえと思うもん。

バンドをやり出すとライヴにも行きたくなる。
元々うちの母親はクレイジーケンバンドの前身からケンさんのファンで、そのマネージャーさんでコピバンをやっていたクレイジー松さんと仲が良かった。なのでガキのくせに地下のライブハウスなんかに出入りしていた時期もあった。でも、客層が結構オトナだったので勝手が違った。

荒れてたなあMxPxとかNew Found Gloryのライヴ。
マイク・フェレーラとイアン・グルーシュカは今でも大好きだ。
イアンはマーク・ハントみたいな体型でとても親近感を持ったのも大きい。
My Friends Over Youとかコピーしたなあ。

超が付くほど不器用で、何しろ指なんか太けりゃいいと思ってた身としては非常に困難ではあったが、私を誘ってくれたギター担当の男はといえば格闘技の実績でも私をはるかに上回る男であった(正道会館の県大会で優勝するくらい強かった)ので言い訳は出来ない。
あとはNirvanaとか、Green Dayとかだったなあ。
ハッキリ言えばカンタンだったから。

バンドの嗜好がエモに向かうにつれ、パンク系のコピーは減っていった。
元々オリジナルがやりたくてギター担当の彼が曲を作って、それに私が詞を付けていた。
なので実はロクにコピーもやっていない。この世の中にアイツの頭の中にしか存在しない曲をひたすらやっていたことになる。
それでも現場に出れば一人前で、まあヘッタクソながら健気にライブハウスに出没して少ないお客さんの前で演奏していたものだった。

スタジオには週2回入って合同練習をしていた。
私と、ギターと、あとドラムのオヨベさん。通称・師匠。
私たちよりも年上だったが気が優しく大人しい人だったので、格闘技経験者の二人で強く出れば丸め込んでしまえたのだが、何しろよく言えばマイペース、悪く言っても少々独特の完成を持つ人だったので、この3人での思い出は数多い。

そのうちに師匠が抜けて、今もEDMでダブステップを作曲したり、プログラマーもこなす曽田君が加入して、さらにギター担当丸山君(やっと名前が出た)の知人で、別のバンドを一緒にやってたフジシロさんとマキノさんが加わって5人になった。
スタジオ練習は充実したものになったけれど、結局ライブは一度もやらずに自然消滅してしまった。

私はあちこちのライブに顔を出して渡りをつけて、お誘いがあれば出演するつもりで営業活動もしていたのだけれど…春先の駅前広場でやる無料ライブに出ませんか?と誘われたのでその話を持ち掛けたのだけれど、そこから思わぬ方向に話が転がって活動休止。
遅きに失したって感じだったねえ。

3年近くやっていて、デモ音源を作ったり、動画を撮ったりもした(今も手元にある)し、名古屋のフリーペーパーに載せてもらったこともあった(何のことは無い、向こうから声をかけてくれたのだけれど出るのは有料で音源と写真撮影と記事の作成で幾らか払っただけのことだった)。
あの時の音源を持っている人がいたら貴重です。

もうベースも持ってないし、未練があるとヤだから殆ど音楽からは遠ざかってしまった。
でも、たまにベース弾きたいなと思うことはある。
ので、ジャンク品でひとつ買ってみた。そしたらコレが弾きにくいのなんの。
アイバニーズのあとにミュージックマンのスターリングも買ってた(こっちは高級品)んだけど、あれが如何に良いものだったかを思い知ったね。

そのミュージックマンは、今は友人のバンドのベースの子が大切に使ってくれている。
一度ライブを見に行ったこともある。…今だから白状するけど、その日の客層も演目も私の求めているものではなかったので、もうあのベースは初めから他人のものだったと思うことにした。
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