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第402回。食い物の好みが変わったねって話
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あのー、最近は落語を聞きながら仕事しててね。
いやトラック乗ってるから次に降りるまで時間があるときなんかいいんですよ。
でね、落語聞いてて思うのは、前なら背中がかゆくなっちゃったような話でも聞いてられるようになったね。
どうにも好みってものは変わってくるもので。
プロレスも変わらず好きでいるつもりだけど、どうしても関心の的が変わってくる。
というか、純粋にプロレスという現象そのものが好きになってきているというか。
前まではルチャリブレの歴史であるとか、あの事件の裏側は、とか、ガイジンレスラーの生い立ちや経歴だとか多岐にわたってたのが、今はもう全部いっしょくた。
楽しみは楽しみってね。
で、日々の楽しみと言えば食事。
食事の好みも変わったねえ。
元々変わった好みの子供ではあったけど。
お祭りで屋台なんか出るとね、鮎の塩焼きの屋台へ行って一人で鮎買って腹からかぶりついたりしてた。
屋台のおっちゃんおばちゃんは喜んでくれてねえ。
「坊や、鮎好きなの?まあー嬉しいねえ、最近の子供は食べてくれないからねえ」
なんて言って1匹オマケしてくれたりしてね、両手に鮎持って食いつきながら歩いてるの。
サザエさんの歌に出てくるドラ猫じゃあるまいし、お魚くわえてって。
昔からお肉も好きだけど魚も好きだった。刺身にお寿司に漬け煮魚と好きなんだけど、焼き魚だけは苦手で。綺麗に食べられないってこともあったけど、鮭の塩焼きなんかどこでも出てくるくせに猛烈に塩辛くて冷たくて美味しくもないやつがあった。一番食べないのがアジの開き。
アジなんてのはなめろうにしたってお寿司でもタタキでもいいんだよ。それを獲ってきてさばいて日干しにした上に火あぶりに遭って食われちまうなんざ残酷極まりない。お前自分だったらどうするか考えてご覧。海のなかをスイスイ泳いでるところをグワーっと掻っ攫われて、そのまま腹かっさばかれて内臓出されて体開いて天日干しで…って。そりゃアジにしたって気の毒だわな。
でもってお肉ばっかり食べてたのが、最近は魚ばっかりになってね。
マグロのすき身を買ってきてわさび醬油を垂らしまして、それを千切りキャベツのうえに乗せて食うと美味いんだよ。また近所のスーパー、サンヨネさんは元魚屋さんだから魚にはうるさい。すき身とはいえ上等なマグロの骨に近い肉だから美味しいんだこれが。
サラダチキンもいいけど、最近ちょっと飽きちゃって。
ままかり乗せたりスモークサーモン乗せたり、千切りキャベツを食うのに適したオカズを探している最中です。でローストビーフとかより、意外と魚が合うってわかってさ。
ひところは晩飯っていうと刻んだタマネギと鶏のもも肉を炒めたものが多くって。
それ以外にも肉ばっかり食ってたんだけど…最近は魚が増えたねえ。
焼き魚、それもサバとかカレイとかじゃなく開きが食いたいなんて言い出すとは自分でも思わなかった。
それでもやっぱお肉の方が好きなのかなって思うのは、休日に自分で料理しようと思うとやっぱ肉が多いんで。
うちはじいちゃんが浜名湖沿岸で育ったんで魚なんか獲りゃ食えるってひとで魚をさばくのも上手だったんだ。器用な人でね、ワンタンだとかギョーザも自分でアンを作って皮買ってきて包むんだ。手際よくね。
私なんかギョーザなんてのは食う専門で。自分で作れって言われてもあんまり下手なんでアンを包んでる最中に殺されたりしてこれが本当の暗(アン)殺なんて言ったりするんだけどもね。
こうして思い出してみるに、子供のころからヘンなものが好きだった。
さきイカとかホタテの貝柱とか。
昔じいちゃんの会社の慰安旅行に連れてってもらったことがあった。
行きのマイクロバスの中で他のオッチャン方に大層可愛がられたんだけど、そのうちのお一人が
「森さん(じいちゃん)とこのボウヤ、イカ食うか?」
と、さきイカを勧めてくれた。すかさずじいちゃん
「おーいダメだよぅ。その子にイカなんか食わせたらみんな食っちゃうよ!」
と言うくらいイカが好きだった。
結局そのバスのなかで散々オヤツを頂いて。それもおっさんが酒飲むのに食うようなもんだけど、私はそれが好きなんでもって、おお坊やよく食うなあ!とか、これも好きか、そうかそうか!なんてな具合で。
自分で持ってきたオヤツを食う暇がついぞ無かった。
今はアレルギーとかあるし、知らない人から食べ物・飲み物をもらいづらい世の中だよな。また物騒でもあるし。私なんか二十歳過ぎても、そこら辺で出会う人にオヤツ貰ったり水を飲ませてもらったりしてたけどねえ。
そうそう。子供のころからヘンだったと言えば煮するめ。
甘辛いタレで煮込んだスルメイカの屋台があった。お祭りなんかのときだけね。
アユの塩焼き、煮スルメイカなんてのは子供に不人気な屋台の3位と2位で。
1位は絶対1等が当たらない射的やくじ引きだってんですがね。
でスルメを買うってえと、屋台のおじちゃんおばちゃんが
坊やが食べるの?いいわねえありがとねえ
なんて感激してもらえてさ。イカ買って食うだけであんな褒められることなんて中々ないよ。
で結局、煮スルメ、小が一つ100円、大は150円だったかな…今もしあれば値上げしてる可能性もあるわな。
でも当時の150円も結構な安さでさ。
それなのに子供が買ってくれたからって嬉しいから持ってけってんで袋を開けたら4つ入ってる。
1つ分の値段で4つも貰ったら赤字になりませんか?と聞くと、
イカが墨を吐きますんで、字も帳簿もすぐに黒くなります。
なんてね。
いやトラック乗ってるから次に降りるまで時間があるときなんかいいんですよ。
でね、落語聞いてて思うのは、前なら背中がかゆくなっちゃったような話でも聞いてられるようになったね。
どうにも好みってものは変わってくるもので。
プロレスも変わらず好きでいるつもりだけど、どうしても関心の的が変わってくる。
というか、純粋にプロレスという現象そのものが好きになってきているというか。
前まではルチャリブレの歴史であるとか、あの事件の裏側は、とか、ガイジンレスラーの生い立ちや経歴だとか多岐にわたってたのが、今はもう全部いっしょくた。
楽しみは楽しみってね。
で、日々の楽しみと言えば食事。
食事の好みも変わったねえ。
元々変わった好みの子供ではあったけど。
お祭りで屋台なんか出るとね、鮎の塩焼きの屋台へ行って一人で鮎買って腹からかぶりついたりしてた。
屋台のおっちゃんおばちゃんは喜んでくれてねえ。
「坊や、鮎好きなの?まあー嬉しいねえ、最近の子供は食べてくれないからねえ」
なんて言って1匹オマケしてくれたりしてね、両手に鮎持って食いつきながら歩いてるの。
サザエさんの歌に出てくるドラ猫じゃあるまいし、お魚くわえてって。
昔からお肉も好きだけど魚も好きだった。刺身にお寿司に漬け煮魚と好きなんだけど、焼き魚だけは苦手で。綺麗に食べられないってこともあったけど、鮭の塩焼きなんかどこでも出てくるくせに猛烈に塩辛くて冷たくて美味しくもないやつがあった。一番食べないのがアジの開き。
アジなんてのはなめろうにしたってお寿司でもタタキでもいいんだよ。それを獲ってきてさばいて日干しにした上に火あぶりに遭って食われちまうなんざ残酷極まりない。お前自分だったらどうするか考えてご覧。海のなかをスイスイ泳いでるところをグワーっと掻っ攫われて、そのまま腹かっさばかれて内臓出されて体開いて天日干しで…って。そりゃアジにしたって気の毒だわな。
でもってお肉ばっかり食べてたのが、最近は魚ばっかりになってね。
マグロのすき身を買ってきてわさび醬油を垂らしまして、それを千切りキャベツのうえに乗せて食うと美味いんだよ。また近所のスーパー、サンヨネさんは元魚屋さんだから魚にはうるさい。すき身とはいえ上等なマグロの骨に近い肉だから美味しいんだこれが。
サラダチキンもいいけど、最近ちょっと飽きちゃって。
ままかり乗せたりスモークサーモン乗せたり、千切りキャベツを食うのに適したオカズを探している最中です。でローストビーフとかより、意外と魚が合うってわかってさ。
ひところは晩飯っていうと刻んだタマネギと鶏のもも肉を炒めたものが多くって。
それ以外にも肉ばっかり食ってたんだけど…最近は魚が増えたねえ。
焼き魚、それもサバとかカレイとかじゃなく開きが食いたいなんて言い出すとは自分でも思わなかった。
それでもやっぱお肉の方が好きなのかなって思うのは、休日に自分で料理しようと思うとやっぱ肉が多いんで。
うちはじいちゃんが浜名湖沿岸で育ったんで魚なんか獲りゃ食えるってひとで魚をさばくのも上手だったんだ。器用な人でね、ワンタンだとかギョーザも自分でアンを作って皮買ってきて包むんだ。手際よくね。
私なんかギョーザなんてのは食う専門で。自分で作れって言われてもあんまり下手なんでアンを包んでる最中に殺されたりしてこれが本当の暗(アン)殺なんて言ったりするんだけどもね。
こうして思い出してみるに、子供のころからヘンなものが好きだった。
さきイカとかホタテの貝柱とか。
昔じいちゃんの会社の慰安旅行に連れてってもらったことがあった。
行きのマイクロバスの中で他のオッチャン方に大層可愛がられたんだけど、そのうちのお一人が
「森さん(じいちゃん)とこのボウヤ、イカ食うか?」
と、さきイカを勧めてくれた。すかさずじいちゃん
「おーいダメだよぅ。その子にイカなんか食わせたらみんな食っちゃうよ!」
と言うくらいイカが好きだった。
結局そのバスのなかで散々オヤツを頂いて。それもおっさんが酒飲むのに食うようなもんだけど、私はそれが好きなんでもって、おお坊やよく食うなあ!とか、これも好きか、そうかそうか!なんてな具合で。
自分で持ってきたオヤツを食う暇がついぞ無かった。
今はアレルギーとかあるし、知らない人から食べ物・飲み物をもらいづらい世の中だよな。また物騒でもあるし。私なんか二十歳過ぎても、そこら辺で出会う人にオヤツ貰ったり水を飲ませてもらったりしてたけどねえ。
そうそう。子供のころからヘンだったと言えば煮するめ。
甘辛いタレで煮込んだスルメイカの屋台があった。お祭りなんかのときだけね。
アユの塩焼き、煮スルメイカなんてのは子供に不人気な屋台の3位と2位で。
1位は絶対1等が当たらない射的やくじ引きだってんですがね。
でスルメを買うってえと、屋台のおじちゃんおばちゃんが
坊やが食べるの?いいわねえありがとねえ
なんて感激してもらえてさ。イカ買って食うだけであんな褒められることなんて中々ないよ。
で結局、煮スルメ、小が一つ100円、大は150円だったかな…今もしあれば値上げしてる可能性もあるわな。
でも当時の150円も結構な安さでさ。
それなのに子供が買ってくれたからって嬉しいから持ってけってんで袋を開けたら4つ入ってる。
1つ分の値段で4つも貰ったら赤字になりませんか?と聞くと、
イカが墨を吐きますんで、字も帳簿もすぐに黒くなります。
なんてね。
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