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第397回。柔道部って素敵。
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キッドさんは中学校の時、柔道部だった。
柔道部と言うのはモテない。
モテないから柔道部に入るのか。柔道部に入るからモテないのか。
たぶん両方だ。
男前の柔道家も居るけれど、やっぱりそれはヒトカドの男であるからで、そこにたどり着くには青春を灰色にしなくてはならない。
キッドさんは灰色だけども好き好んで灰色だったわけじゃなく、脳みその中はむしろピンク一色だった。
モテない男は硬派になるしかない。
これは椎名誠さんの名言だけれども、結局文学にしろ格闘技にしろ同じことなのだ。
女の子に相手されないから、その分暇で仕方がない。
だから腕立て伏せをしたり、男同士で取っ組み合いをしたり、また紙とペンを取り出して読まれもしない物語を描くような時間があるのだ。
いまネットで文学なんかやってる連中もそう。
モテないから書く。
それも自分(テメェ)の理想を書く。だから猶更モテない。
私はモテないことは悪だと言わないが、モテようともしないヤツはクソだと思う。男として。
出来ないんじゃない、やらないんだ、って論法だろ?
私のモットーは出来ねえ奴に文句はねえ。けどやらねえ奴に用はねえ。
これである。
私はモテないなりに泥被って、のたうち回ってきた。
だから、モテたい気持ちで抱いていた理想の恋愛と、その現実の両方を書くことが出来ると思ってる。キラキラした文章も、おカタい文学ごっこも、どっちも飾り物だし何も訴えてくるものがない。
SFやホラーではないのだ。普遍的なテーマに沿って書くならば、やはりそれなりの蓄積が必要だと私は思う。
ウルトラマンだって仮面ライダーだって、バイクや殺陣まで作り物でヘボかったら面白くねえだろ?
ファンタジーと実在の境目があいまいに出来るくらいの腕前と、実在の世界の濃さ。
この二つが伴わないものは総じてイケ好かないと私は思う。
さて、そんなわけで盛大にモテないがゆえに暇で暇で腕立て伏せも読まれない小説もどっちもこなしていたキッドさん(10万14ちゃい)であるが。
それなりに楽しく過ごしていた。練習はきつかったけど仲間も居たし、よその中学校の連中と仲良くなって、合同練習の後には一緒に駅まで帰ったりしていた。
この本郷中学の連中というのが我々に負けず劣らずおバカ集団で、一番のエースのソノダ君は東海大会まで進むほどの猛者だったが性格は朴訥で普段は大人しい奴だった。
それ以外は実力もオツムの方も我々とどっこいだった本郷中学の諸君。
大将で眼鏡にデブだったオノくん、ひょろながで剽軽者だったオビくん、体は小さいけど気のいいカナメくんなどなど。
合同練習中でもバテてくると、乱捕り稽古でアイコンタクト。組み合うや否や隅っこに移動してちょっと一休みしていたこともある。適当に技かけるフリしたりしてね。
そら強くはならんが、楽しかったな。
練習後のお楽しみは買い食いである。
パン屋さんでサンドイッチを買う奴、コンビニでジュース買う奴と色々だったが、喫茶店でクリームソーダ飲んでた猛者も居たな。
合同練習は市の武道館で行うため、本郷中学のみんなは豊橋鉄道渥美線で新豊橋駅まで来て、そっから路面電車で最寄りの電停まで来ていた。
この電車賃数百円を飲んじゃっていたのだ。
歩いて駅まで行けば路面電車の運賃150円が浮く。ひどい時は渥美線の分も使っちゃう奴が居た。どうやって帰ったのだろう。
そんなわけで、当時は武道館を出て信号を渡るとローソンがあったので、そこでみんなしてワイワイ買い食いをしつつ帰るのが毎回の楽しみだったんだ。
ある日、いつものようにローソンに行こうとしたら一人だけ
「オレ、今日はいい」
と俯いているのでワケを聞くと、なんと買い食いが(当然電車賃の使い込みもセットで)バレてしまい、現金ではなく便利でお得な市内電車回数乗車券を2枚持たされて来たのだという。
これには全員大爆笑。
いいよ、ジュースぐらい。とその日の朝ちょうどばあちゃんに小遣いをもらってた私がコーラを差し出し、彼は無事みんなと帰れましたとさ。
その後も通りかかった本屋さんに置いてあった無料の通販カタログの女性用下着のページを破いてみんなで興奮したり、ミニスカートの女の子のパンツが見えてガッツポーズしてたらその子がすんごい顔でみんなして5分ぐらい黙り込んだり、まあ退屈しませんでした。
本郷中学と我が中学はそんな風に相互に行き来があったので、大会や合同練習になると楽しみがあってよかったな。
本郷中まで出げいこに行ったときもあったけど、あとで聞いたら顧問のアマダ先生がいつもより張り切って筋トレのメニューを倍ぐらいにしていたらしく、こっちもあっちもヘトヘトになったりしていた。
卒業したあとはついぞ連絡もしなかったけど、カナメくんはのちに同じ草野球チームに入ったり、その妹と私が同じ高校になったんでちょっとだけ話したりしたなあ。
みんな元気かな。
もうあのローソンも喫茶店もなくなっちゃったけど、前を通ると思い出すよ。
ニッセンか何かのカタログを意気揚々と持ってきたオノ君の、あの輝くような笑顔。
その笑顔に免じて、アイコラ写真をプリントアウトして練習前にみんなに見せびらかしてきたことは黙っておいてあげよう。
あっ!!!!
柔道部と言うのはモテない。
モテないから柔道部に入るのか。柔道部に入るからモテないのか。
たぶん両方だ。
男前の柔道家も居るけれど、やっぱりそれはヒトカドの男であるからで、そこにたどり着くには青春を灰色にしなくてはならない。
キッドさんは灰色だけども好き好んで灰色だったわけじゃなく、脳みその中はむしろピンク一色だった。
モテない男は硬派になるしかない。
これは椎名誠さんの名言だけれども、結局文学にしろ格闘技にしろ同じことなのだ。
女の子に相手されないから、その分暇で仕方がない。
だから腕立て伏せをしたり、男同士で取っ組み合いをしたり、また紙とペンを取り出して読まれもしない物語を描くような時間があるのだ。
いまネットで文学なんかやってる連中もそう。
モテないから書く。
それも自分(テメェ)の理想を書く。だから猶更モテない。
私はモテないことは悪だと言わないが、モテようともしないヤツはクソだと思う。男として。
出来ないんじゃない、やらないんだ、って論法だろ?
私のモットーは出来ねえ奴に文句はねえ。けどやらねえ奴に用はねえ。
これである。
私はモテないなりに泥被って、のたうち回ってきた。
だから、モテたい気持ちで抱いていた理想の恋愛と、その現実の両方を書くことが出来ると思ってる。キラキラした文章も、おカタい文学ごっこも、どっちも飾り物だし何も訴えてくるものがない。
SFやホラーではないのだ。普遍的なテーマに沿って書くならば、やはりそれなりの蓄積が必要だと私は思う。
ウルトラマンだって仮面ライダーだって、バイクや殺陣まで作り物でヘボかったら面白くねえだろ?
ファンタジーと実在の境目があいまいに出来るくらいの腕前と、実在の世界の濃さ。
この二つが伴わないものは総じてイケ好かないと私は思う。
さて、そんなわけで盛大にモテないがゆえに暇で暇で腕立て伏せも読まれない小説もどっちもこなしていたキッドさん(10万14ちゃい)であるが。
それなりに楽しく過ごしていた。練習はきつかったけど仲間も居たし、よその中学校の連中と仲良くなって、合同練習の後には一緒に駅まで帰ったりしていた。
この本郷中学の連中というのが我々に負けず劣らずおバカ集団で、一番のエースのソノダ君は東海大会まで進むほどの猛者だったが性格は朴訥で普段は大人しい奴だった。
それ以外は実力もオツムの方も我々とどっこいだった本郷中学の諸君。
大将で眼鏡にデブだったオノくん、ひょろながで剽軽者だったオビくん、体は小さいけど気のいいカナメくんなどなど。
合同練習中でもバテてくると、乱捕り稽古でアイコンタクト。組み合うや否や隅っこに移動してちょっと一休みしていたこともある。適当に技かけるフリしたりしてね。
そら強くはならんが、楽しかったな。
練習後のお楽しみは買い食いである。
パン屋さんでサンドイッチを買う奴、コンビニでジュース買う奴と色々だったが、喫茶店でクリームソーダ飲んでた猛者も居たな。
合同練習は市の武道館で行うため、本郷中学のみんなは豊橋鉄道渥美線で新豊橋駅まで来て、そっから路面電車で最寄りの電停まで来ていた。
この電車賃数百円を飲んじゃっていたのだ。
歩いて駅まで行けば路面電車の運賃150円が浮く。ひどい時は渥美線の分も使っちゃう奴が居た。どうやって帰ったのだろう。
そんなわけで、当時は武道館を出て信号を渡るとローソンがあったので、そこでみんなしてワイワイ買い食いをしつつ帰るのが毎回の楽しみだったんだ。
ある日、いつものようにローソンに行こうとしたら一人だけ
「オレ、今日はいい」
と俯いているのでワケを聞くと、なんと買い食いが(当然電車賃の使い込みもセットで)バレてしまい、現金ではなく便利でお得な市内電車回数乗車券を2枚持たされて来たのだという。
これには全員大爆笑。
いいよ、ジュースぐらい。とその日の朝ちょうどばあちゃんに小遣いをもらってた私がコーラを差し出し、彼は無事みんなと帰れましたとさ。
その後も通りかかった本屋さんに置いてあった無料の通販カタログの女性用下着のページを破いてみんなで興奮したり、ミニスカートの女の子のパンツが見えてガッツポーズしてたらその子がすんごい顔でみんなして5分ぐらい黙り込んだり、まあ退屈しませんでした。
本郷中学と我が中学はそんな風に相互に行き来があったので、大会や合同練習になると楽しみがあってよかったな。
本郷中まで出げいこに行ったときもあったけど、あとで聞いたら顧問のアマダ先生がいつもより張り切って筋トレのメニューを倍ぐらいにしていたらしく、こっちもあっちもヘトヘトになったりしていた。
卒業したあとはついぞ連絡もしなかったけど、カナメくんはのちに同じ草野球チームに入ったり、その妹と私が同じ高校になったんでちょっとだけ話したりしたなあ。
みんな元気かな。
もうあのローソンも喫茶店もなくなっちゃったけど、前を通ると思い出すよ。
ニッセンか何かのカタログを意気揚々と持ってきたオノ君の、あの輝くような笑顔。
その笑顔に免じて、アイコラ写真をプリントアウトして練習前にみんなに見せびらかしてきたことは黙っておいてあげよう。
あっ!!!!
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